監視は誰のため?──SREの僕が『入門 監視』を読んで感じたこと
はじめに
私はSREとして、日々アラートの改善に取り組んでいます。取り組みを続ける中で、「ユーザー視点に立った運用の重要性」に気づき、従来の「OSメトリクスを中心とした監視」に対して疑問を抱くようになっていました。
そんな中で、多くのエンジニアから高く評価されている書籍『入門 監視』を読み、「監視とは何か」「アラートは何のためにあるのか」という本質的な問いを、改めて深く考えさせられました。
心に残ったところ
1. アラートの量を減らすために考えるべきこと
運用において「アラート疲れ」は深刻な課題だと感じています。アラートが多すぎると、その確認や対応に追われてしまい、プロダクトの改善やビジネスの成長に向けた開発に十分な時間を割けなくなってしまいます。
また、こうした状態が慢性化すると、本当に重要な通知が埋もれ、対応が遅れてしまうリスクも高まります。
本書では、アラートを設計・見直す際に以下のような問いを立てることの重要性が述べられていました。
このアラートは誰かがアクションを取る必要があるのか?
過去1ヶ月のアラート履歴を見て、どんなアラートが発生しているか?それに対してどんな対応をしてきたのか?影響の小さいアラート、無視されているアラートは、削除または閾値調整の対象ではないか?
アラート自体をなくすために、どんな自動化が可能か?
このプロセスを定期的に実施することで、「本当に対応が必要なアラート」だけが残り、効果的な監視体制を築くことができます。私自身も今後、定期的なアラートレビューを実施し、アクション不要なアラートの削減や、自動化による改善に取り組んでいきたいと感じました。
2. ユーザー視点での監視設計
もう一つ強く共感したのは、「監視はまずユーザー視点から始めるべきだ」という考え方です。
ユーザーは「Apacheノードが何台動いているか」なんて気にしない。
ユーザーが気にするのは「アプリケーションが正常に使えるか」だけだ。
その意味で、最も効果的な監視の1つが「HTTPステータスコード(特に5xx)」や「リクエストレイテンシー」の監視です。これらの指標は、「何が問題か」は教えてくれなくても、「ユーザーに影響があるかどうか」を確実に示してくれます。
また、ユーザー視点の監視を整えることで、CPU使用率やノードの稼働台数といった低レベルの内部メトリクスに一喜一憂する必要がなくなります。
「このメトリクスは、ユーザーへの影響をどう教えてくれるのだろうか?」
この問いを常に持ち続けることが、SREとして「価値ある監視」を構築する第一歩だと感じました。
おわりに
『入門監視』は、監視のツールや技術ではなく、「なぜ監視するのか」という目的に立ち返らせてくれる本でした。
今後も、アラートの整理・自動化、ユーザー視点に立ったモニタリング設計を通じて、より信頼性の高いシステム運用を目指していきたいと思います。
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