Open1

自殺率と戦争の関係について

tasitentasiten

概要

戦争が起きると自殺が減るという動画を見て,面白かったのでゆるくまとめておく.

参考動画:なぜ戦争が始まると自殺は減るのか【人が自殺する理由を戦争から考えてみる】

4つの自殺

自殺論(エミール・デュルケーム,1897)によると,自殺には集団的本位自殺,自己本位的自殺,アノミー的自殺,宿命的自殺の四つがある.
・集団的本位自殺は戦争などによる社会的統合が強すぎるために起きる自殺
・自己本位的自殺は逆に社会的統合が弱すぎるために起きる自殺
・アノミー的自殺は社会規制が緩すぎて個人の欲望が膨張して,欲望を実現できない絶望から起きる自殺
・宿命的自殺は社会規制がきつすぎて起きる自殺

デュルケームは自己本位的自殺の根拠として,宗教信仰者や家族がいる人の方が自殺率が低いことや戦争時に自殺率が下がることを上げた.

戦争によって自殺が減る原因

デュルケームは自由な選択ができる状態の方が自殺率は上がるとしていて,役割を与えられたり組織に属して目標を達成しようとすると自殺率は下がる.戦争は人々にその役割を与えるものとなるため自殺という選択が減る.戦争が重要ではなく,戦争という社会的つながりが自殺率低下に重要なのである.

反論

デュルケームの主張に失業率の観点が抜けていると反論があった.失業率と自殺率には比例関係があることが知られている.
戦争による社会統合が自殺率を減らしているのではなく,戦争による失業率低下(戦争特需によるもの)が自殺率を減らしているのでは?という反論がある.
また第二次世界大戦中のアメリカを見ると,ほとんどの人が戦争を身近に感じず,社会統合は弱かったのではないかという意見がある.

反論の反論

まず第二次世界大戦中のアメリカの社会統合は弱さについては,実際には真珠湾攻撃などによってアメリカ人の統合意識は強かったり,避難所設立や工場を隠すなど一般市民への影響も大きかったので社会統合は弱くないとされている.
次に失業率低下の方が自殺率低下に大きく影響しているという事については,そもそもなぜ失業率低下が自殺率低下につながるかを知る必要がある.失業者はお金が原因で自殺するのではなく,社会とのつながりがなくなるため自殺する.それを踏まえると失業率を別々で考えるのではなく,戦争によって失業率が低下し,社会統合が強くなるため自殺率が低下すると考えるべきである.