【読書回顧録 No.00001】「『ニコマコス倫理学』の道案内」

【読書回顧録 No.00001】
タイトル: 「『ニコマコス倫理学』の道案内」
著者 : 井川夕慈
読み方 : 通読
書籍種類: 一般書
読書回数: 1回
1.「『ニコマコス倫理学』の道案内」を読む理由
1-0.読書回顧録とは?
とりあえず、最初なので簡単に「読書回顧録」について説明しておく。
自分が読んだ本を自分なりに咀嚼するために、「読書回顧録」と題して書き残そうと思う。
ナンバーを五桁にしたのは、99999冊を目標にしよう、と思うからである。どこまで続くかは私の読書力、根気力、持続力次第である。
すでに読んでいる本も多数あるが、初心に還(かえ)り、読書回顧録として1(いち)から始めようと思う。「初心にかえる」は「初心に帰る」が一般的だと思うが、あえて、「還る」を使っている。
理由はただ1点。その方が味わい深いからである。
エヴァンゲリオンの映画で「魂のルフラン」という曲があるが、唄の中に「私に還りなさい」という歌詞がある。その「還る」という言葉には、魂の根源というか、命の循環に戻るというか、真理に近い印象がある。
なので、私のとっての「初心に還(かえ)る」は魂の根源に還る、命の循環に還るという意味合いを持たせたい、という個人的な意図である。
「読書回顧録」には書籍の読み方もつけてみた。
どの程度のエネルギーで読んでいるかがわかるようにというのが理由である。
1. 目を通す(レベル1)
2. 通読 (レベル2)
3. 熟読 (レベル3)
4. 精読 (レベル4)
5. 愛読 (レベル5)
と、書籍を読んだときの「理解の深さ」を基準に5段階にしていこうと思う。
今回は軽めのレベル2「通読」である。
1-1.この本との出会い
この本との出会いはYouTubeから。
『歴史を面白く学ぶコテンラジオ (COTEN RADIO)』の深井龍之介さんの出演していたYouTubeを見たからである。
そもそも、コテンラジオという番組は私の教え子にオススメしてもらったラジオ番組である。とにかく面白いと絶賛していた。
以前、ラジオは何本か聴かせていただいていて、オススメしていた意味はわかっていた。深井龍之介さんの話はわかりやすくて、面白い。
そんな印象を持っていたので、YouTubeのホーム画面にオススメ動画として掲載されていた上、コテンラジオの深井龍之介さんは存じ上げていたので、人生を変えた本というタイトルに非常に興味関心があった。
動画の冒頭に出てきたのが「ニコマコス倫理学」だった。
なんか面白そうなタイトルだな、と感じて図書館で検索して探したら、「『ニコマコス倫理学』の道案内」という本が出てきた。原書の「ニコマコス倫理学」を読んでも良かったのだが、深井龍之介さん曰く、内容的には哲学としては簡単な方とは言っていたものの、哲学書を読み慣れていない自分にとって原書はちょっと難しかな、と思い「『ニコマコス倫理学』の道案内」というタイトルに惹かれて、こちらを読むことにした次第である。
1-2.読んでみたいと思った理由
もちろん、YouTubeでの深井龍之介さんの説明がとても魅力的で、惹きつける内容だったことがいちばんの理由である。
また、最近、哲学的にモノゴトを考える習慣が増えてきたので、哲学というジャンルだったことも大きい。
なにより「二コマコス」っていう言葉の響きにやられた。
アリストテレスがらみの本だとは知っていたが、「二コマコス」がなんだかわからないまま図書館で借りてきた。何が書いてあるのかわからないことが余計に読む前からドキドキした。
人は、中身のわかっている欲しかったプレゼントよりも、中身のわからない欲しいか欲しくないかもわからないプレゼントの方がドキドキするように、「『ニコマコス倫理学』の道案内」を手に取った。
2.「『ニコマコス倫理学』の道案内」とは?
2-1.この本の概要(ネタバレあまりなし)
【目次】
- はじめに
- 「アリストテレスの食し方」心得
- メインツアー 本流のハイライト
- オプショナルツアー①
- オプショナルツアー②
- オプショナルツアー③
- そして「政治学」へ
となっている。
私の中での最近のテーマは、
- 人の幸福とはなにか?
- 人の徳とはなにか?
まさにこの2つ。
この2つについて語った書籍というのが私の見立てである。
YouTubeの中で深井龍之介さんも言っていたことだ。
とにかく、その2つについてアリストテレスが深掘りしていったことをまとめたのが、「ニコマコス倫理学」らしい。
もちろん、原書を読んでいないので、らしいと書いている。
しかし、この著者は予想した以上に原書をなぞって書いてくれている、気がする。
難しい書籍は苦手なのだが、この本はなんとか読める。
理解もなんとなくできる。
なんとなく、と言ったのは、自分の理解が合っているのかどうかの答え合わせができないためである。
とにかく、今の私にとってはありがたいし、自分自身のテーマに近いし、自分の中での思考の選択肢が増えるのがなにより嬉しい。
まさしく、アリストテレスの思考プロセスというか、どういう順番で幸福を考えるのか。どういう順番で徳について考えるのか。何との関係性を用いて紐解いていくのか、などを考えて、深めて、つなげて、絞り込んでいく、思考内での作業を追いかけるのが楽しい。
そう、楽しいのだ!!
2-2.この本の詳細(ネタバレあり)
ここからはネタバレが入るので読んでない方で、内容を知りたくない人はここでこの文章を読むのをやめるのをオススメする。
※ ここからはネタバレを含みます
気になっていた「二コマコス」とは、アリストテレスの息子の名前であり、アリストテレスの親の名前でもある。「ニコマコス倫理学」は息子の二コマコスが父アリストテレスの文章を編纂したようである。
そして、その「ニコマコス倫理学」を読んで解説してくれたのが、「『ニコマコス倫理学』の道案内」である。
スタートから新しい言葉がでる。
「善」と「最高善」という言葉である。
最高善=究極の善
「善」を「善いこと」と解釈すると大きく揺らぐと言っている。
最高善=幸福
理由は書かれていないが、最高善=幸福とこの本には書かれている。
幸福は、3つの典型がある、とも言っている。
「享楽的な生活」幸福は快楽、と考える人の理想
「政治的な生活」幸福は名誉、と考える人の理想
「観想的な生活」幸福は思考、と考える人の理想
そして、「最高善」つまり「幸福」は、完全な徳(アレテー)に基づく魂(プシュケー)の活動が人間にとっての善となる、と言っている。
「観想的」という聞き慣れない言葉が出てきたので、ChatGPTに聞いてみる。
GPTは、「観想」は「観る」と「想う」という漢字から成り、単なる視覚ではなく、精神的・哲学的・宗教的な対象を深く見つめ、心で思い描くこと
また、観想的な活動は「心の旅」とも言っている。
「心の旅」という表現が私にはいちばんわかりやすい。
そして、本では、幸福な人は「真に善き人」であり、「完璧な正方形のような人」と書いてある。
この本の著者は「完璧な正方形のような人」という表現がわかりにくいと言っている。でも、私に取っては非常にわかりやすい言葉であった。
なぜなら、自分の中で「完璧な正方形のような人」という表現がすでに出来上がっていたから(ちょっと違うが)である。なぜ出来上がっていたかというと、以前に、自分自身の中で最高の人とはどんなものなのか、についてずっと考えている時期があった。なかなか最適解が見つからず、何ヶ月もかけて考え続けて、やっと一つの最適解(その時点での)が見つかった。
最高人(最高な人)の最適解とは、私の中では、美しい立方体の器を持っている人、という解であった。美しい立方体とは、幅、奥行き、深さが全て均等な、まさしく完璧な立方体であった。
ここでいう完璧な正方形と私の言う完璧な立方体は別物であるが、多分、アリストテレスの心の中のイメージは私と同じだったのではないかと思う。
つまり、美しくバランスのとれた人こそ、最高人であるということだ。
あとは、そこから先の話は私の中で腑に落ちることばかりだった。
おそらく、最高善とは、善を行う、幸福な最高人のことであろう、と私は解釈した。多分、この著者が伝えたいことと私の解釈は違うのもわかっている。しかし、私にとっては、著者の解釈を理解することよりも、アリストテレスの思考に寄り添う方が重要なので、著者は置いてけぼりにして、私はアリストテレスと対話できた気がする。もちろん、著者の説明があってこそである。
読書回顧録として、こんな形での記事はどうなのだろう、と自分でも気づいているが、あえて、こういう著者とは違った解釈で読書するというのも善いのではないか、と個人的には思う。
読書とは、結局、自分自身のためのものであり、自分自身で納得して読んでいるのなら、解釈や理解は個人の自由でいいと思う。
もし、この記事を読んでいただいた方にとって期待はずれな内容だったとしても、私にとっては最高の前進であった、と思えるので善しとする。
私にとって、寄り道のような本であったが、最高の寄り道であった!!
寄り道とは、「人生にとって最高の時間である!」
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