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シューアの補題

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導入

シューアの補題を自分なりに解釈してみた。
素人による個人的なメモ。

シューアの補題
G \subset M_nH \subset M_k を同じ位数をもつ二つの行列群とする(すなわち |G| = |H|)。
もし k \times n 行列 S が存在して、すべての元 g_i \in G, h_i \in H に対して

S g_i = h_i S

が成り立つならば、次のいずれかである:

  1. S が零行列である。
  2. n = k であり、S が正則行列である。

簡単な証明

線形写像

S: V \to W

を考える。ただし

  • V: n 次元ベクトル空間
  • W: k 次元ベクトル空間
  • S: k \times n 行列

ここで以下を定義する:

\ker(S) = \{ v \in V \mid Sv = 0 \} \subset V
\operatorname{Im}(S) = \{ w \in W \mid w = Sv \} \subset W

\ker(S) について

  • \ker(S)G の不変部分空間である。
    実際、gi \in G, v \in \ker(S) に対し、

    Sgi = hiS \implies S(giv) = hi(Sv) = hi(0) = 0

    よって giv \in \ker(S)

  • G が既約であるため、非自明な不変部分空間は存在せず、
    \ker(S) = \{0\} もしくは \ker(S) = V

  • もし S が非ゼロであれば、Sv \neq 0 となる v \in V が取れるので \ker(S) = V は排除される。
    よって

    \ker(S) = \{0\}

    となり、S は単射。したがって

    \dim(V) \leq \dim(W)

※ 単射の理由は省略せずに示しておくと:

Sa = Sb \implies S(a-b) = 0 \implies a-b \in \ker(S) = \{0\} \implies a=b

\operatorname{Im}(S) について

  • \operatorname{Im}(S)H の不変部分空間である。
    実際、w = Sv \in \operatorname{Im}(S), hi \in H に対して、

    hiw = hi(Sv) = S(giv) \in \operatorname{Im}(S)
  • H が既約であるため、非自明な不変部分空間は存在せず、
    \operatorname{Im}(S) = \{0\} または \operatorname{Im}(S) = W

  • S が非ゼロなら像は \{0\} にはならない。したがって

    \operatorname{Im}(S) = W

    よって S は全射。したがって

    \dim(V) \geq \dim(W)

  • 単射より \dim(V) \leq \dim(W)
  • 全射より \dim(V) \geq \dim(W)

よって

\dim(V) = \dim(W)

したがって S は全単射であり、逆写像 S^{-1} が存在する。
つまり S は正則行列である。

既約表現 G, H において、

Sgi = hiS

を満たす非自明な S は正則行列に限られる。
言い換えると、異なる既約表現を繋ぐ非自明なインターツワイナーは、相似関係のときにしか存在しない。


可換な正則行列

さらに、既約表現 G に対し、もし Sgi = giS が成り立つ正則行列 S が存在するなら、

S = cI

となる。

証明の概略

  1. S の固有値を c、固有ベクトルを \nu とすると

    S\nu = c\nu
  2. gi \in G に対し

    S(gi\nu) = gi(S\nu) = c(gi\nu)

    よって gi\nu も固有ベクトル。すなわち固有空間は G-不変部分空間。

  3. G が既約であるため、固有空間は \{0\} または V
    S \neq 0 より非ゼロ固有ベクトルが存在するため固有空間は V

  4. したがって S は全体を c 倍する写像であり、

    S = cI

まとめ

シューアの補題は、既約表現と可約表現の違いを鮮明にする:

  • 異なる既約表現のつながりは相似のみ
  • 既約表現と可換な正則行列はスカラー倍行列のみ

Discussion