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情報検索の新時代:RAGによる革新的手法の解説

2024/05/02に公開

はじめに

情報検索技術は、インターネット上の膨大なデータから正確な情報を迅速に見つけ出すために不可欠です。RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術は、特に複雑なクエリに対して、より関連性高く、精度の高い情報を提供するための新しい手法を取り入れています。この記事では、RAGに基づく5つの革新的な検索手法について解説します。

仮説的ドキュメント埋め込み(Hypothetical Document Embeddings)

仮説的ドキュメント埋め込みは、与えられたクエリから「仮想的なドキュメント」を生成し、そのドキュメントの埋め込みを利用して意味的検索を行う手法です。このプロセスでは、まずクエリを受け取り、そのクエリ内容をもとに存在しないが、存在すればクエリに答えるのに適した内容を含むドキュメントを構築します。このドキュメントは、自然言語処理技術を使って生成され、その後、ドキュメントの埋め込みベクトルが計算されます。

埋め込みベクトルは、文書の意味内容を数値的に表現したもので、これを用いて検索エンジンは関連する他のドキュメントとの意味的な距離を計算します。この技術は、特に一般的なキーワード検索では捉えにくい、ニュアンスやコンテキストが重要なクエリに対して有効です。例えば、特定の文化的背景を持つイベントについての詳細な情報や、抽象的な概念(例えば「幸福」という概念を文化的な観点から探求する場合など)を検索する際に、その効果を発揮します。

書き換え-検索-読み込み(Rewrite-Retrieve-Read)

書き換え-検索-読み込みは、クエリを適切な形に書き換えてから検索を行い、その結果を元にさらに情報を読み込む手法です。このプロセスの第一ステップでは、入力されたクエリを自然言語処理技術を用いて意味的に最適化します。たとえば、「東京の観光名所」を「東京で人気の観光スポット」というように具体的で検索しやすい形式に書き換えます。

書き換えた後のクエリを使用して検索を行い、得られた情報を基に、必要に応じてさらに詳細な情報を読み込むことで、より豊富で正確な回答をユーザーに提供します。この技術は、クエリがあいまいであるか、ユーザーが求めている情報が通常の検索では得られにくい場合に特に有効です。また、書き換えることで、検索エンジンがより関連性の高い文書を見つけやすくなるため、情報の質が向上します。

ステップバックQAプロンプティング(Step-back QA Prompting)

ステップバックQAプロンプティングは、元の質問に対して一歩戻った形の質問を生成し、その質問に答えることで元の質問にも答えるドキュメントを検索する技術です。この方法では、クエリに対する直接的な回答だけでなく、その背景にある問題や概念も掘り下げることができます。たとえば、「日本の経済成長の要因は何か?」というクエリに対して、「経済成長を支える基本的な要素には何が含まれるか?」という質問を先に立てることで、より広範囲な知識から関連する情報を引き出すことができます。

この手法は、問題の本質を深く理解するために役立ちます。また、ステップバックすることで、より多角的な視点から問題を見ることが可能となり、結果として元の質問に対するより包括的で深い答えを提供することができます。

RAG-フュージョン(RAG-Fusion)

RAG-フュージョンは、複数のクエリを生成してそれに基づき文書を検索し、得られた文書を相互ランク融合を用いて再ランク付けする技術です。この手法では、まず関連する複数のクエリを生成し、それぞれに対して独立して文書を検索します。その後、それぞれのクエリから得られた文書リストを統合して、最も関連性の高い文書を選び出すためにランク付けを行います。

この技術は、一つのクエリだけでは捉えきれないような複雑な情報ニーズに対応するために有効です。例えば、ある疾病に関する治療法を検索する際に、医学的視点、患者の体験談、治療費用の情報など、異なる角度からのクエリを立てることで、より全面的な情報を得ることができます。

マルチクエリ検索(Multi-Query Retriever)

マルチクエリ検索は、大規模言語モデルを利用して複数のクエリを生成し、それに応じてドキュメントを取得する技術です。この手法では、一つの入力に対して複数の異なるクエリを自動的に生成し、それぞれのクエリに対して検索を行います。このプロセスを通じて、一つの問題に対する様々な角度からの情報を収集し、より広範囲な回答を提供します。

例えば、「再生可能エネルギーの利点」というクエリに対して、環境的影響、経済的影響、技術的進展など、複数の視点からクエリを生成し、それぞれの視点に基づいた情報を集めることができます。この多角的なアプローチは、ユーザーが一つの質問に対して包括的な理解を深めるのを助けます。

まとめ

以上のRAGに基づく検索技術は、情報検索の精度を大幅に向上させる可能性を持ち、特に複雑で多面的な情報ニーズに応じるための強力なツールです。これらの技術を理解し、適切に活用することで、必要な情報を効率的に、かつ正確に得ることができるようになります。

手法名 メリット デメリット
仮説的ドキュメント埋め込み ・非常に抽象的なクエリに対しても関連性の高い検索が可能
・コンテキストを豊かに反映した検索結果を提供
・ドキュメント生成の精度が検索品質に直結
・計算リソースを多く要する
書き換え-検索-読み込み ・クエリの意味を最適化し、精度の高い検索が可能
・あいまいなクエリも明確化して対応
・適切な書き換えが難しい場合がある
・書き換えに時間がかかる場合がある
ステップバックQAプロンプティング ・問題の背景や深い理解が可能
・広範な情報から答えを導くことができる
・関連しない情報を取得するリスクがある
・処理が複雑になることがある
RAG-フュージョン ・複数のクエリからの情報を統合し、精度を高める
・異なる視点からの情報を考慮可能
・複数のランク付けの整合性を取るのが難しい
・計算コストが高い
マルチクエリ検索 ・多角的な視点から情報を収集し全体像を把握
・網羅的な情報提供が可能
・関連性の低い情報を含むリスクがある
・クエリ生成の品質に依存

※ 参考

https://python.langchain.com/docs/templates/#advanced-retrieval---query-transformation

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