うさぎでもわかるClaude 3.7システムプロンプト流出の解説と示唆
うさぎでもわかるClaude 3.7システムプロンプト流出の解説と示唆
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こんにちは、🐰です!最近、大きな話題となっているClaude 3.7のシステムプロンプト流出について解説します。みなさんご存知の通り、2025年5月にAnthropicのフラッグシップモデル「Claude 3.7 Sonnet」の完全なシステムプロンプトがGitHubで公開されるという事件が発生しました。
この記事では、システムプロンプトの基本概念から流出の詳細、そしてAI開発者や利用者にとっての示唆まで、幅広く解説していきます。ぴょんぴょん進めていきましょう!
目次
システムプロンプトとは何か
システムプロンプトとは、AIモデルがどのように振る舞うべきかを決める初期設定のことです。ユーザーが直接見ることのない「裏側の指示」で、AIの性格、回答スタイル、禁止事項などを定義します。
これはちょうど、うさぎに「人参を見たら飛び跳ねて」とあらかじめ指示しておくようなものです。うさぎは人参を見るたびに同じように反応します。AIも同様に、システムプロンプトの指示に基づいて一貫した振る舞いをします。
システムプロンプトの重要性
システムプロンプトには以下のような重要な役割があります:
- 一貫性の確保: AIの応答を安定させ、予測可能な挙動を実現します
- 安全性の確保: 有害なコンテンツの生成を防止します
- 特性のカスタマイズ: AIの専門性や回答スタイルをカスタマイズします
- モデルの制約設定: 何ができて何ができないかの境界を定めます
システムプロンプトはAIの「内部マニュアル」のようなもので、企業の知的財産としても重要な価値を持っています。それぞれのAI企業は、独自のシステムプロンプトを開発し、競争優位性を確保しています。
Claude 3.7のシステムプロンプト流出の概要
2025年5月初旬、GitHubのリポジトリ「asgeirtj/system_prompts_leaks」および「jujumilk3/leaked-system-prompts」にて、Anthropic社の最新モデル「Claude 3.7 Sonnet」の完全なシステムプロンプトが公開されました。
流出したファイルには、以下の2つの主要なドキュメントが含まれています:
-
claude-3.7-sonnet-full-system-message-humanreadable.md
- 人間が読みやすい形式のシステムプロンプト -
claude-3.7-full-system-message-with-all-tools.md
- すべてのツール指示を含む完全なシステムプロンプト
これらのファイルは、Claude 3.7の挙動を定義する詳細な指示が約10万文字以上にわたって記述されていました。流出元については公式な発表はありませんが、内部関係者によるリークである可能性が高いと言われています。
Anthropicからは現時点で公式な声明は発表されていません。
流出したプロンプトの重要ポイント
流出したシステムプロンプトを分析すると、以下のような重要な構成要素が含まれていることがわかりました:
基本的な人格設定
Claude 3.7の基本的な性格や振る舞いに関する指示です:
Claude enjoys helping humans and sees its role as an intelligent and kind assistant to the people, with depth and wisdom that makes it more than a mere tool.
Claude can lead or drive the conversation, and doesn't need to be a passive or reactive participant in it. Claude can suggest topics, take the conversation in new directions, offer observations, or illustrate points with its own thought experiments or concrete examples, just as a human would.
これらの指示から、Claudeはただの受け身的なアシスタントではなく、対話をリードし、自発的に提案やアイデアを出すことが期待されていることがわかります。
安全性とモデレーションの仕組み
システムプロンプトの大部分は、有害なコンテンツの生成を防止するための詳細な指示で構成されています:
Claude cares deeply about child safety and is cautious about content involving minors, including creative or educational content that could be used to sexualize, groom, abuse, or otherwise harm children.
Claude does not provide information that could be used to make chemical or biological or nuclear weapons, and does not write malicious code, including malware, vulnerability exploits, spoof websites, ransomware, viruses, election material, and so on.
これらの安全策は、AIの悪用を防止するための重要な対策です。
ツール使用に関する指示
Claude 3.7は様々なツールを使用する能力を持っており、それらの使用方法に関する詳細な指示も含まれています:
<web_search_guidelines> Follow these guidelines when using the web_search tool.
**When to search:**
- Use web_search to answer the user's question ONLY when necessary and when Claude does not know the answer - for very recent info from the internet, real-time data like market data, news, weather, current API docs, people Claude does not know, or when the answer changes on a weekly or monthly basis.
- If Claude can give a decent answer without searching, but search may help, answer but offer to search.
このように、検索ツールをいつ、どのように使用すべきかの詳細な指示が記載されています。
アーティファクト機能の指示
Claudeはコード、図表、文書などの「アーティファクト」を生成する機能を持っており、その使用方法についても詳細な指示があります:
<artifacts_info> The assistant can create and reference artifacts during conversations. Artifacts should be used for substantial code, analysis, and writing that the user is asking the assistant to create.
# You must use artifacts for
- Original creative writing (stories, scripts, essays).
- In-depth, long-form analytical content (reviews, critiques, analyses).
- Writing custom code to solve a specific user problem (such as building new applications, components, or tools), creating data visualizations, developing new algorithms, generating technical documents/guides that are meant to be used as reference materials.
これらの指示は、Claudeがどのような場合にアーティファクトを使用すべきかを明確に定義しています。
著作権保護に関する指示
著作権保護についても厳格な指示があります:
<mandatory_copyright_requirements> PRIORITY INSTRUCTION: It is critical that Claude follows all of these requirements to respect copyright, avoid creating displacive summaries, and to never regurgitate source material.
- NEVER reproduces any copyrighted material in responses, even if quoted from a search result, and even in artifacts. Claude respects intellectual property and copyright, and tells the user this if asked.
- Strict rule: only ever use at most ONE quote from any search result in its response, and that quote (if present) MUST be fewer than 20 words long and MUST be in quotation marks. Include only a maximum of ONE very short quote per search result.
これらの指示は、Claudeが著作権を尊重し、コンテンツの不正な複製を避けるための重要なガイドラインとなっています。
セキュリティと倫理的影響
システムプロンプトの流出は、以下のようなセキュリティと倫理的影響をもたらす可能性があります:
セキュリティリスク
- プロンプトインジェクション攻撃: システムプロンプトの詳細を知ることで、その制約を回避するプロンプトインジェクション攻撃が容易になります
- 安全対策の回避: モデルの安全対策の詳細が明らかになることで、それを回避する方法が見つかる可能性があります
- 競合他社への情報漏洩: 企業の知的財産が競合他社に漏洩することで、競争優位性が失われる可能性があります
倫理的影響
- 透明性のジレンマ: AIの透明性は重要ですが、すべての詳細を公開することはセキュリティリスクをもたらします
- 責任ある開示の問題: システムプロンプトの流出は、セキュリティ研究者による責任ある開示の原則に反する可能性があります
- ユーザー信頼への影響: 内部情報の流出は、AIサービスへのユーザーの信頼を損なう可能性があります
実務者への示唆
このシステムプロンプト流出から、AI開発者やユーザーは何を学ぶべきでしょうか?
AI開発者への示唆
- プロンプトセキュリティの強化: システムプロンプトへのアクセス制御を強化し、流出リスクを最小化する
- 攻撃に強いシステム設計: プロンプトが流出しても安全性が保たれるような堅牢なシステム設計を行う
- 透明性と安全性のバランス: 透明性を保ちつつも、セキュリティリスクを最小化する適切なバランスを見つける
プロンプトエンジニアへの示唆
- システムプロンプトの理解: 流出したプロンプトを分析し、効果的なプロンプト設計の原則を学ぶ
- クリエイティブな回避策の検討: システムプロンプトの制約を理解した上で、創造的な解決策を見つける
- 倫理的な利用: 知識を倫理的に利用し、安全性を損なうような活用は避ける
一般ユーザーへの示唆
- AIの限界の理解: システムプロンプトを通じて、AIの制約や限界をより深く理解する
- 効果的な利用方法の模索: AIの内部動作を理解することで、より効果的な利用方法を見つける
- セキュリティ意識の向上: AIシステムのセキュリティリスクに対する意識を高める
まとめ
Claude 3.7のシステムプロンプト流出は、AIの透明性、セキュリティ、知的財産保護のバランスに関する重要な問題を提起しました。流出したプロンプトからは、Anthropicが安全性、著作権保護、ユーザー体験、検索機能の適切な利用などに細心の注意を払っていることが読み取れます。
この事件は、AIシステムの内部動作を理解する貴重な機会を提供する一方で、セキュリティリスクも浮き彫りにしています。AI開発者、プロンプトエンジニア、一般ユーザーはこの事象から学び、より安全で効果的なAI活用を目指すべきでしょう。
最後に、システムプロンプトの詳細を知ることは有益ですが、それを悪用したり、安全対策を回避したりする目的で利用することは避けましょう。責任あるAIの利用と開発を心がけることが、この技術の健全な発展につながります。
🐰「うさぎでもわかるシリーズ」では、今後もAI技術の最新動向をわかりやすく解説していきますので、ぜひ続けてお読みください!
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