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松尾研発スタートアップの正体とは?松尾研出身ではない企業の謎を解く

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松尾研発スタートアップの正体とは?松尾研出身ではない企業の謎を解く

はじめに

「松尾研発スタートアップ」という言葉をよく耳にするようになりました。AI業界や投資の世界では、「松尾研発」というブランドは高い評価を受けており、多くの注目を集めています。しかし、不思議なことに、これらの企業の中には東京大学松尾研究室の出身者が創業していない会社も含まれているのです。

「松尾研出身でもないのに、なぜ松尾研発と名乗れるのだろう?」
「松尾研発の認定基準はどうなっているのだろう?」

この記事では、これらの疑問を解き明かし、松尾研発スタートアップの実態と、松尾研出身ではない企業が「松尾研発」を名乗る仕組みについて探っていきます。うさぎでもわかるシリーズでお届けするので、AIやスタートアップに詳しくない方も安心してぴょんぴょん読み進めてください!

松尾研(東京大学松尾豊研究室)とは

まずは、「松尾研」とは何かを理解しましょう。

松尾研とは、東京大学大学院工学系研究科の松尾豊教授が率いる研究室、正式名称「松尾・岩澤研究室」のことです。松尾豊教授は日本のAI研究の第一人者であり、1997年に東京大学工学部電子情報工学科を卒業、2002年に同大学院博士課程を修了しています。産業技術総合研究所研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年より東京大学大学院工学系研究科准教授、2019年より教授を務めています。

松尾研のビジョンは「知能を創る」こと。このビジョンのもと、ディープラーニングを中心としたAI研究を推進しています。特に、世界モデルやロボット研究、大規模言語モデル、脳×AIに関する研究を進めており、最先端のAI研究の場として国内外から高い評価を受けています。

松尾研の特徴的なのは、基礎研究だけでなく、その成果を社会に還元することにも強くコミットしている点です。そのため、企業との共同研究や、学生起業家の育成支援にも積極的に取り組んでいます。この産学連携の姿勢が、後述する「松尾研発スタートアップ」の誕生と発展に大きく関わっているのです。

「松尾研発スタートアップ」の定義と実態

それでは、「松尾研発スタートアップ」とは正確にはどのようなものなのでしょうか?

松尾研のウェブサイトによると、「松尾研発スタートアップ®︎」とは、以下のように定義されています。

「松尾研発スタートアップ®︎」とは、松尾研出身者が創業または松尾研の支援を受け創業された企業の内、技術・事業力共に成長可能性が認められ、且つ松尾研の理念に共感し共に後進の育成に取り組む、選抜されたスタートアップ企業群です。(登録商標第6667237号、第6710069号)

ここで注目すべきは、**「松尾研出身者が創業または松尾研の支援を受け創業された企業」**という部分です。つまり、松尾研発スタートアップには2つのカテゴリがあります。

  1. 松尾研出身者が創業した企業
  2. 松尾研の支援を受けて創業された企業

そして、その中からさらに「技術・事業力共に成長可能性が認められ」「松尾研の理念に共感し共に後進の育成に取り組む」企業が「選抜」され、「松尾研発スタートアップ」に認定されるのです。

松尾研発スタートアップの実態と関係性

現在、松尾研のウェブサイトに掲載されている松尾研発スタートアップは20社以上に上ります。その中には、株式会社Gunosy、株式会社PKSHA Technology、READYFOR株式会社など、既に広く知られている企業も含まれています。

また特筆すべきは、「松尾研発スタートアップ」が登録商標となっている点です。これは、松尾研発というブランドの価値を保護するとともに、認定プロセスの正統性を担保する役割を果たしています。

松尾研出身ではないのに「松尾研発」と称している企業の事例

それでは、松尾研出身者が創業したわけではないのに「松尾研発」と名乗っている企業の具体的な事例を見ていきましょう。

株式会社JINGS

株式会社JINGSは2024年4月22日に設立された比較的新しいスタートアップで、「AIの力でイノベーションを民主化する」というビジョンを掲げています。2025年3月に松尾研発スタートアップに認定されました。

JINGSの代表取締役CEOである三上春香氏は、松尾研の出身ではありませんが、認定式では松尾豊教授から認定証を授与されました。JINGSでは、最先端のAI技術とビジネスの知見を組み合わせ、特に製造業向けAIソリューションの提供に力を入れています。

JINGSの事例から、松尾研発の認定を受けるためには、技術力とビジョンの共有が重要であることがわかります。三上氏は「AIの力で、世界に誇れる日本をつくる」というビジョンを掲げ、松尾研の理念に共感し、エコシステムの拡大に取り組む姿勢を示しています。

株式会社2WINS

株式会社2WINSは2022年2月に設立されたAIスタートアップで、2025年3月に松尾研発スタートアップに認定されました。代表取締役Co-CEOの小川椋徹氏と吉村良太氏は松尾研出身ではありませんが、2WINSのメンバーは松尾・岩澤研究室に伴走する株式会社松尾研究所でセールス活動を経験していました。

小川氏は「昨年3月、松尾先生とシンガポールで初めてお会いしてから1年。この度、正式に松尾研発スタートアップの仲間として迎えていただくことを非常に感慨深く感じています」とコメントしています。2WINSは、企業の"ツインズ"として企業に「勝たせるAI」を提供するというビジョンを持っています。

2WINSの事例では、松尾研との人的なつながりと、AI技術の社会実装という共通の目標が、松尾研発認定の背景にあることがわかります。

株式会社SCIEN

株式会社SCIENは2025年3月に松尾研発スタートアップに認定されました。CEOの田端氏は「このたび株式会社SCIENが『松尾研発スタートアップ』として認定いただいたことを、心より光栄に存じます。この認定は、当社の技術基盤と事業創造力が評価されたものであり、新興科学技術(SCIENCE)を社会に還元するという当社の取り組みに対する大きな励みとなります」とコメントしています。

SCIENは、AIを含む科学技術の力で人々の暮らしに彩と縁を与えることを目指しており、松尾研の理念に共感し、エコシステムの拡大に取り組む姿勢を示しています。

これらの事例から、松尾研出身ではない企業が「松尾研発」を名乗る背景には、以下のような共通点があることがわかります。

  1. 松尾研の理念への共感
  2. AI技術の社会実装という目標
  3. 松尾研エコシステムへの貢献意欲
  4. 松尾研からの技術的・精神的支援

これらの要素が、「松尾研の支援を受け創業された企業」として認定される条件となっているようです。

「松尾研発」ブランドの真の価値と背景

では、そもそも「松尾研発」というブランドはなぜ価値があるのでしょうか?そして、松尾研はなぜスタートアップを積極的に支援するのでしょうか?

松尾研からの支援とは

松尾研からスタートアップへの支援は、具体的にはどのようなものなのでしょうか。調査によると、以下のような支援が行われています。

  1. AI起業サマープログラム:松尾研が主催する起業家育成プログラム
  2. 講義やワークショップ:ディープラーニングなどの最先端AI技術を学ぶ機会の提供
  3. 人的ネットワーク:松尾研コミュニティへのアクセス
  4. 技術的アドバイス:AI技術の実装に関する専門的な助言
  5. 「松尾研発」ブランドの使用許可:信頼性と知名度を高める効果

特に「松尾研発」というブランドは、AI技術の信頼性を示す証として機能しています。松尾豊教授は日本のAI研究の第一人者であり、その研究室から「お墨付き」をもらうことは、技術の質と将来性を示すシグナルとなっています。

松尾研エコシステムの拡大戦略

松尾研がスタートアップを支援する背景には、「エコシステムの拡大」という目標があります。これは、単に研究成果を論文として発表するだけでなく、実際の社会に実装し、価値を創出するという目標です。

松尾研のウェブサイトには、「松尾研は今後もスタートアップ企業の育成を通じ、最新技術を社会に還元し、産学連携による新しいエコシステムの実現に取り組んでまいります」と記載されています。

このエコシステムの拡大により、以下のような好循環が生まれることが期待されています。

  1. 松尾研の研究成果がスタートアップによって社会実装される
  2. スタートアップの成功事例が増えることで、松尾研発ブランドの価値が高まる
  3. 高まったブランド価値により、さらに優秀な人材や企業が集まる
  4. 集まった人材や企業との連携により、さらに研究が進展する

松尾研エコシステムの循環と拡大戦略

このような好循環を通じて、日本のAI産業全体の発展を促進することが、松尾研の大きな目標であると考えられます。

松尾研におけるスタートアップ支援の全体像

松尾研では、スタートアップ支援を体系化し、「松尾研 起業クエスト」として整理しています。この取り組みは、以下のような特徴を持っています。

「松尾研 起業クエスト」の概要

「松尾研 起業クエスト」は、松尾研がこれまで行ってきた起業家育成の取り組みを体系化したものです。東京大学のウェブサイトによると、「その成果として、多くの松尾研発スタートアップが生まれてきている」とされています。

このプログラムでは、以下のような支援が提供されています。

  1. 起業に関する講義やワークショップ
  2. メンタリングとアドバイス
  3. 投資家や企業とのネットワーキング機会
  4. 技術的支援

松尾研・高専発スタートアップの取り組み

さらに興味深いのは、「松尾研・高専発スタートアップ」という取り組みです。これは、「高専出身者が創業または松尾研の支援を受け創業された企業の内、技術・事業力共に成長可能性が認められ、且つ松尾研の理念に共感し共に後進の育成に取り組む、選抜された高専発のスタートアップ企業群」と定義されています。

この取り組みからも、松尾研がAI研究の社会実装と人材育成に幅広くコミットしていることがわかります。高専という異なる教育機関とも連携し、多様な人材が活躍できる場を提供しているのです。

産学連携による新しいエコシステムの実現へ

これらの取り組みを通じて、松尾研は産学連携による新しいエコシステムの実現を目指しています。このエコシステムは、以下のような特徴を持つものと考えられます。

  1. 大学の研究成果がスムーズに社会実装される
  2. スタートアップが大学の知見を活用して成長する
  3. 成功したスタートアップが次世代の育成に貢献する
  4. 多様な人材が交流し、新たなイノベーションを生み出す

こうしたエコシステムは、日本のAI産業の発展に大きく貢献することが期待されています。

まとめ:松尾研発スタートアップの未来と展望

ここまでの調査から、「松尾研発」の真の意味が見えてきました。それは、単に松尾研出身者が創業した企業というだけでなく、松尾研の理念に共感し、AI技術の社会実装とエコシステムの拡大に取り組む企業群としての価値です。言わば「精神的系譜」とも言えるでしょう。

松尾研出身ではなくても、松尾研の支援を受け、その理念に共感する企業が「松尾研発」と名乗ることができるのは、このような背景があるためです。これは、単なるブランディングではなく、日本のAI産業の発展に向けた戦略的な取り組みの一環と言えるでしょう。

「松尾研発スタートアップ」が今後も増え続けるならば、日本のAI産業は大きく発展する可能性があります。そして、そのエコシステムは、単に技術的な革新にとどまらず、社会的な価値の創出にもつながっていくでしょう。

最後に、この記事を読んでいるあなたも、ぜひAI技術やスタートアップの世界に関心を持ってみてください。そして、「松尾研発スタートアップ」の活動に注目し、日本のAI産業の発展を見守っていただければうれしいです。

ぴょんぴょん!うさぎでもわかるシリーズでした!

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