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うさぎでもわかるAIインデックスレポート2025

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うさぎでもわかるAIインデックスレポート2025

AIインデックスレポート2025の主要ポイント

はじめに

皆さん、こんにちは!今回は、Stanford大学のHuman-centered AI Institute(HAI)が毎年発表している「AIインデックスレポート」の2025年版について解説します。このレポートは、世界中のAI研究開発、技術性能、経済への影響、社会的受容など、AIの現状と発展を包括的に分析した貴重な情報源です。

AIインデックスレポートは2017年に始まり、今回で8回目の発行となりました。400ページを超える大ボリュームの内容を、うさぎでもわかるように重要ポイントを抽出して解説していきます。「AIの現在と未来を理解するための地図」と言えるこのレポートから、技術者としてどんな示唆を得られるか、一緒に見ていきましょう!

研究開発の現状:大企業主導の開発と中国の躍進

国・地域別AI発展状況比較

最新の調査によると、AI研究開発の状況は劇的に変化しています。まず注目すべきは、産業界と学術界の役割分担が明確になっていることです。産業界は注目されるAIモデルの開発で圧倒的なリードを示し、2024年にリリースされた注目モデルの約90%が産業界から誕生しました(前年は60%)。一方、学術界は高被引用論文の生産で主導的役割を担っています。

地域別にみると、中国がAI論文数と特許数でリードし、世界のAI論文の23.2%を生産しています。また、特許数では世界全体の69.7%を保有する圧倒的な強さを見せています。対して米国は、影響力の高い研究(高被引用論文)でリードし、注目AIモデルの開発数でも中国(15モデル)を大きく上回る40モデルをリリースしています。

技術的には、AIモデルがますます大規模化・高性能化しており、訓練に必要な計算量は約5ヶ月ごとに倍増、データセットサイズは8ヶ月ごとに倍増しています。これは電力消費の増加にもつながり、炭素排出量も増加傾向にあります。例えば、最新のLlama 3.1 405B(2024年)の訓練による排出量は8,930トンで、平均的なアメリカ人の年間排出量(18トン)の約500倍です。

うさぎ的ポイント:大企業がAIモデル開発を主導していますが、基礎研究は学術界が支えているんですね!米国と中国の競争が激しくなってきて、どっちが勝つかはまだわからないポン!

技術的パフォーマンスの飛躍:性能向上とコスト低下の二重の進化

AIモデルの進化2022-2025

AIの技術的パフォーマンスは、急速な進化を遂げています。特に注目すべきは、新しいベンチマークでの急激な性能向上です。2023年に導入された難易度の高いベンチマーク「MMMU」「GPQA」「SWE-bench」では、わずか1年で大幅なスコア向上が見られました(MMMU +18.8ポイント、GPQA +48.9ポイント、SWE-bench +67.3ポイント)。

同時に起きているのが、AIモデルの民主化です。以前はクローズドな商用モデルと、オープンなモデルの間に大きな性能差がありましたが、その差は急速に縮まっています。2024年初頭には8%あった差が、2025年2月には1.7%まで縮小しました。

地域間でも興味深い変化が見られます。2023年末には、アメリカ製モデルが中国製モデルを各種ベンチマークで大きく上回っていましたが、2024年末にはその差がほぼ消滅しました。例えば、MMULベンチマークの差は17.5ポイントから0.3ポイントに縮小しています。

さらに、AIモデルの経済性も急激に改善しています。GPT-3.5と同等の性能を持つモデルの推論コストは、2022年11月の100万トークンあたり20ドルから、2024年10月には0.07ドル(Gemini-1.5-Flash-8B)へと、わずか18か月で約280倍も低下しました。

小型モデルの性能向上も顕著です。2022年にMMULスコア60%以上を達成できる最小モデルはPaLM(5400億パラメータ)でしたが、2024年にはPhil-3-mini(38億パラメータ)が同等の性能を達成し、2年間で142倍の小型化が進みました。

うさぎ的ポイント:AIモデルは毎年どんどん賢くなって、同時に安くなっているのが素晴らしいポン!オープンモデルも商用モデルに追いついてきて、誰でも高性能なAIが使えるようになってきたね!

責任あるAI:課題と対策の両面での進展

AI技術の急速な発展に伴い、責任あるAI(Responsible AI、RAI)への関心も高まっています。しかし、評価や実践にはまだ課題が多く残されています。

調査によると、AIに関連するインシデント報告は増加の一途をたどっており、2024年には233件が報告され、前年比56.4%増となりました。これは記録的な増加です。

企業のRAIに対する意識も高まっていますが、実際の対策は遅れ気味です。多くの組織が不正確性、規制コンプライアンス、サイバーセキュリティなどのRAIリスクを認識していますが、実際にこれらを懸念事項として特定している企業はそれぞれ64%、63%、60%に留まっています。

世界的には、RAIに関する国際協力が加速しています。OECD、EU、国連、アフリカ連合などの主要機関が、透明性や信頼性などのRAI原則を明確化するフレームワークを発表しました。

技術面では、AIモデル訓練に利用される公開データの制約が急増しています。2023年から2024年にかけて、データ使用制限は5-7%から20-33%へと大幅に増加し、これがデータの多様性、モデルの調整、スケーラビリティに影響を与えています。

一方で、ファンデーションモデルの透明性は改善傾向にあります。主要モデル開発者の平均透明性スコアは2023年10月の37%から2024年5月には58%へと上昇しました。

うさぎ的ポイント:AIが賢くなるほど、インシデントも増えてしまうのは課題ですね。企業や国際組織が責任あるAIについて真剣に考え始めているのは良い傾向ポン!データ制限が増えていることは、プライバシーには良いけど、AIの進歩にはブレーキをかけるかもしれないですね。

AIの経済的影響:投資拡大と企業導入の加速

AI技術は経済面でも大きな影響を与えています。2024年の企業のAI投資は記録的な水準に達し、全世界のAI投資総額は2524億ドルと前年比26%増を記録しました。特に注目すべきは生成AI分野で、投資額は339億ドルに達し、前年比18.7%増、2022年からは8.5倍以上に膨らんでいます。

地域別では、米国が圧倒的な投資リードを維持しており、2024年のAI民間投資額は1091億ドルで、中国の93億ドルの約12倍、イギリスの45億ドルの24倍に達しています。生成AI分野での差はさらに顕著で、米国の投資額は中国とEU+イギリスの合計を254億ドル上回っています。

企業におけるAI利用も急速に拡大しています。調査回答者のうち、組織でAIを使用していると報告した割合は2023年の55%から2024年には78%へと急増し、少なくとも1つのビジネス機能で生成AIを使用している割合も33%から71%へと2倍以上になりました。

地域別のAI導入状況にも大きな変化が見られ、北米がリードを維持する一方で、中国を含む大中華圏が前年比27ポイント増という顕著な成長を示しました。欧州も23ポイント増と大きな成長を遂げています。

AI導入の経済効果も明らかになってきており、AIは生産性向上に寄与するだけでなく、ほとんどのケースで低スキル労働者と高スキル労働者の間のスキルギャップの縮小にも貢献しています。

うさぎ的ポイント:AIへの投資がすごいスピードで増えていて、特に生成AIが熱いポン!企業でのAI利用も爆発的に増えているね。日本企業も約半数が2500万ドル以上のAI投資を計画していて、世界で最も高い投資率なんだって!でも人材育成は追いついていないから、そこが課題かも。

科学と医療におけるAIの進展:ノーベル賞級の成果

AIは科学と医療の分野でも革命的な進歩をもたらしています。2024年は特に重要な年で、AI関連研究が物理学と化学のノーベル賞を受賞しました。Google DeepMindのデミス・ハサビスとジョン・ジャンパーはタンパク質折りたたみの先駆的研究でノーベル化学賞を、ジョン・ホップフィールドとジェフリー・ヒントンはニューラルネットワークへの基礎的貢献でノーベル物理学賞を受賞しました。

医療分野では、AIの臨床知識が急速に向上しています。OpenAIの最新モデル「o1」は医学知識を評価するMedQAベンチマークで96.0%という記録的なスコアを達成し、2023年の最高スコアから5.8ポイント、2022年末からは28.4ポイント向上しました。

実用面では、AIが医師の診断能力を上回るケースが報告されており、GPT-4が複雑な臨床症例の診断で医師(AIありとAIなし両方)を上回る結果が示されました。他の研究でもAIががん検出や高リスク患者の識別で医師を上回ることが示されています。

FDA(米国食品医薬品局)のAI医療機器承認数も急増しており、1995年に最初のAI医療機器が承認されてから2015年までの承認件数はわずか6件でしたが、2023年には223件に急増しています。

タンパク質科学の分野でも、ESM3やAlphaFold 3などの大規模タンパク質配列モデルが登場し、2021年以降、主要なタンパク質データベースの規模も大幅に拡大しています(UniProt +31%、PDB +23%、AlphaFold +585%)。

うさぎ的ポイント:AIが科学研究でノーベル賞を取れるレベルになったのはすごいポン!特に医療分野では、AIがお医者さんよりも正確な診断ができるケースが増えていて、これからの医療はAIとお医者さんの協力がますます重要になりそうですね。

AI政策と教育の動向:規制と育成の両輪

AIの急速な発展に伴い、各国政府の政策対応も活発化しています。米国では、2016年にはわずか1件だった州レベルのAI関連法が、2023年には49件、2024年には倍増の131件に急増しました。連邦レベルでも提案されるAI法案は増加していますが、可決数は依然として少ない状況です。

各国政府はAIインフラへの投資も積極的に行っています。カナダは24億ドル、中国は475億ドル(半導体生産支援)、フランスは1170億ドル、インドは12.5億ドル、サウジアラビアは「Project Transcendence」で1000億ドルのAI投資を発表しました。

75カ国の立法機関でのAI言及も前年比21.3%増加し、2016年以降では9倍以上に増加しています。また、2024年には世界中でAI安全研究所の設立と連携が進み、2023年11月の米英に始まり、2024年5月のAIソウルサミットでは日本、フランス、ドイツ、イタリア、シンガポール、韓国、オーストラリア、カナダ、EUでの設立が約束されました。

教育面では、世界の3分の2の国が小中高校でのCS(コンピュータサイエンス)教育を提供または計画しており、その割合は2019年から倍増しています。特にアフリカとラテンアメリカで大きな進展が見られますが、アフリカの多くの国では電力不足がCS教育へのアクセスを制限しています。

米国では、小中高校のCS教師の81%がAIを基礎的なCS学習に含めるべきだと考えていますが、AIを教える準備ができていると感じている教師は半数以下にとどまっています。

うさぎ的ポイント:世界中の政府がAIの規制と投資の両方に力を入れ始めたポン!日本もAI安全研究所の設立を表明しているね。教育面では、コンピュータサイエンスを学校で教える国が増えてきたけど、AIを教えられる先生がまだまだ足りないのが課題みたいですね。

世界のAI認識と展望:楽観論と懸念の地域差

世界のAIに対する認識には興味深い変化が見られます。Ipsosが2022年と2024年に調査した26カ国のうち、18カ国でAI製品やサービスが「デメリットよりもメリットが大きい」と考える人の割合が増加しました。全世界では、このような見方をする人の割合は2022年の52%から2024年には55%へと増加しています。

AIが日常生活に大きな影響を与えるという認識も高まっており、世界の3分の2の人々が、AI搭載製品やサービスが今後3〜5年以内に日常生活に大きな影響を与えると考えています。これは2022年から6ポイント増加しています。

しかし、AIに対する楽観論には大きな地域差が存在します。中国(83%)、インドネシア(80%)、タイ(77%)では大多数がAIに楽観的である一方、カナダ(40%)、米国(39%)、オランダ(36%)では少数派にとどまっています。ただし、以前は最も懐疑的だった国々でも楽観論は増加傾向にあり、ドイツ(+10%)、フランス(+10%)、カナダ(+8%)、イギリス(+8%)、米国(+4%)で増加が見られました。

一方で、AIの倫理的行動に対する懐疑論は増加しています。AIの開発や使用を行う企業や組織が個人データを守るという信頼は、2023年の50%から2024年には47%に低下しました。同様に、AIシステムが偏りがなく差別がないと信じる人も減少しています。

具体的な技術に対する信頼度も課題を抱えており、例えば米国での自動運転車に対する調査では、61%が恐れを感じ、信頼しているのはわずか13%です。2023年のピーク(68%)からは減少していますが、2021年(54%)よりも高い水準です。

うさぎ的ポイント:AIへの期待感は世界的に高まっているけど、国による差がすごく大きいポン!中国やアジアの国々はAIに非常に楽観的なのに対して、欧米諸国はまだまだ慎重ですね。AIが私たちのデータをどう扱うかについての信頼は少し下がっているみたいで、ここは企業がもっと透明性を高める必要がありそうです。

まとめ:AIの現在と未来

AIインデックスレポート2025から見えてくるのは、AIが研究室から実社会へと急速に進出し、私たちの生活、仕事、社会のあり方を根本から変えつつある姿です。

技術面では、AIモデルの性能は着実に向上し続ける一方で、コストは劇的に低下しています。オープンウェイトモデルとクローズドモデルの差も縮まり、小型モデルの性能向上も著しく、AIアクセスの民主化が進んでいます。

地域間の競争では、米国と中国がそれぞれの強みを生かしてリードしており、特に中国のAIモデル性能が米国に急接近している点が注目されます。日本を含むその他の国々も、AI投資や導入を加速させています。

経済面では、企業のAI導入が急増し、特に生成AIへの関心が高まっています。AI技術は生産性向上に貢献し、スキルギャップの縮小にも寄与していることが分かってきました。

同時に、責任あるAIの重要性も増しており、AIインシデントの増加やデータ制限の問題など、解決すべき課題も山積しています。各国政府は規制とインフラ投資の両面からAIに対応し始めており、国際協力の枠組みも整いつつあります。

教育面では、AIリテラシーの重要性が認識されてきましたが、教育者のスキルアップなど課題も多く残されています。

技術者として重要なのは、この急速な変化の波に乗りつつも、AI技術の責任ある開発と利用を常に念頭に置くことでしょう。AIインデックスレポートが示す通り、AIは人間の可能性を広げる強力なツールですが、その力を適切に活用するためには、技術的知識だけでなく、倫理的配慮や社会的影響に対する理解も不可欠です。

うさぎ的ポイント:AIはものすごいスピードで進化していて、使える場所もどんどん広がっているポン!技術者としては最新動向をキャッチアップしつつ、責任ある使い方を考えることが大切ですね。AIを上手に活用して、みんなの生活がもっと良くなるといいな〜!

参考文献

  1. Stanford Institute for Human-Centered AI (HAI). (2025). The AI Index 2025 Annual Report. Stanford University.
  2. 人民網日本語版. (2025). スタンフォード最新報告「中米トップレベル大規模AIモデルの性能差が0.3%に縮小」. http://j.people.com.cn/n3/2025/0411/c95952-20300716.html
  3. BCG Japan. (2025). 2025年に3社に1社が2,500万ドル超をAIへの投資として計画していると回答、日本企業は割合が最多~BCG調査. https://www.bcg.com/ja-jp/press/22january2025-ai-optimism-autonomous-agents

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