うさぎでもわかるGPUサーバのインターコネクト:InfiniBand vs イーサネット完全解説
うさぎでもわかるGPUサーバのインターコネクト:InfiniBand vs イーサネット完全解説
GPUを活用した高性能計算(HPC)や大規模AI学習環境では、ノード間を接続するインターコネクト技術が全体のパフォーマンスを左右する重要な要素となっています。特にマルチGPUの環境では、GPUどうしが効率よく通信できるかが処理性能に大きな影響を与えます。
本記事では、主要なインターコネクト技術であるInfiniBandとイーサネットの違いや特徴を徹底解説し、それ以外の選択肢も含めて最適な技術選定のポイントを解説します。うさぎでもわかるように、シンプルに説明していきますよ!
1. GPUサーバーにおけるインターコネクトの重要性
GPUを使った計算処理では、複数のGPUを効率よく連携させることが重要です。AI学習やシミュレーションなどのワークロードでは、各ノード間で大量のデータを高速にやり取りする必要があります。
インターコネクトの性能が不十分だと、どんなに高性能なGPUを使っていても、その能力を十分に発揮できません。いわば「どんなに立派なエンジンを積んでも、タイヤがスリップしてしまっては速く走れない」というようなものです。ぽよよ〜ん。
インターコネクトに求められる主な性能要件
- 低レイテンシ:データの到達が遅れると、ノード間の同期がずれて待ち時間が発生
- 高帯域幅:大量のデータを一度に転送できる能力
- スケーラビリティ:多数のノードを効率よく接続できる能力
- 信頼性:データ転送の安定性と正確性
2. InfiniBandの特徴と進化
InfiniBandはもともとサーバーの内部バスを置き換えるために1999年に開発されたテクノロジーですが、現在ではHPCやAIクラスタなどの高性能計算環境での主要なインターコネクト技術となっています。
InfiniBandの主な特徴
- 超低レイテンシ:最新のNDR(Next Data Rate)InfiniBandでは約90ナノ秒という驚異的な低遅延を実現
- RDMA(Remote Direct Memory Access) のネイティブサポート:CPUを介さず直接メモリ間でデータを転送することで効率化
- 高帯域幅:最新世代のNDRでは片方向で400Gbpsを実現
- ロスレス転送:パケットロスが発生しない信頼性の高い転送
- 輻輳制御:高負荷状態でも性能劣化を防ぐ高度な制御機能
InfiniBandの進化とロードマップ
InfiniBandは世代を重ねるごとに性能を向上させてきました。
世代 | 略称 | 速度 (片方向) | 登場時期 |
---|---|---|---|
Single Data Rate | SDR | 10 Gbps | 2002年 |
Double Data Rate | DDR | 20 Gbps | 2005年 |
Quad Data Rate | QDR | 40 Gbps | 2008年 |
Fourteen Data Rate | FDR | 56 Gbps | 2011年 |
Enhanced Data Rate | EDR | 100 Gbps | 2014年 |
High Data Rate | HDR | 200 Gbps | 2017年 |
Next Data Rate | NDR | 400 Gbps | 2021年 |
Extra Data Rate | XDR | 800 Gbps | 2025年予定 |
うさぎでも覚えられるように、単純に「速度が倍々に上がっていく」と覚えておけばOKぽよ!
3. イーサネットの特徴と進化
イーサネットは企業ネットワークからデータセンターまで、最も広く普及しているネットワーク技術です。近年ではHPC環境でも採用が進み、InfiniBandと競合するようになっています。
イーサネットの主な特徴
- 広い普及率と互換性:既存インフラとの統合が容易
- RoCE(RDMA over Converged Ethernet) による低レイテンシ対応
- コスト効率:多くのベンダーが製品を提供しているため競争が活発で選択肢が多い
- 急速な進化:400G、800Gと高速化が進んでいる
- 管理・運用の容易さ:多くのエンジニアが使い慣れている
イーサネットRoCEの登場
従来のイーサネットはInfiniBandに比べてレイテンシが高く、HPCやAI環境には不向きでした。しかし、RoCE(RDMA over Converged Ethernet) の登場により状況が変わりつつあります。
RoCEv2(第2世代)ではレイテンシが大幅に改善され、1〜2マイクロ秒レベルまで低減。InfiniBandにはまだ及ばないものの、多くのワークロードで十分な性能を発揮できるようになりました。
イーサネットの進化とロードマップ
イーサネットも急速に高速化が進んでいます。
規格 | 速度 | 登場時期 |
---|---|---|
10 Gigabit Ethernet | 10 Gbps | 2002年 |
40 Gigabit Ethernet | 40 Gbps | 2010年 |
100 Gigabit Ethernet | 100 Gbps | 2015年 |
400 Gigabit Ethernet | 400 Gbps | 2020年 |
800 Gigabit Ethernet | 800 Gbps | 2023年 |
1.6 Terabit Ethernet | 1600 Gbps | 2026年予定 |
うさぎの目が回るほど速くなってるぽよね〜!
4. その他の主要なインターコネクト技術
InfiniBandとイーサネット以外にも、GPU間通信に使われる重要なテクノロジーがあります。
NVLink
NVLinkはNVIDIAが開発したGPU専用の超高速インターコネクトです。主にサーバー内のGPU同士の直接接続に使用されます。
- 超低レイテンシ:約50ナノ秒という業界最速クラスの遅延
- 非常に高い帯域幅:第4世代のNVLinkでは片方向600Gbpsを実現
- 適用範囲の制限:主に同一サーバー内のGPU間接続に最適化
NVSwitchというテクノロジーを使えば、複数のGPUサーバーをNVLinkで接続することも可能ですが、規模や拡張性に制限があります。うさぎさんにはちょっと難しいかもしれないぽよ。
OmniPath
OmniPathはIntelが開発したインターコネクト技術で、もともとはInfiniBandの代替として開発されました。2019年にIntelから事業が売却されましたが、現在も一部の環境で使われています。
- 中程度のレイテンシ:約300ナノ秒
- 中程度の帯域幅:第2世代で200Gbps
- InfiniBandよりも低コスト:導入コストを抑えられるのが特徴
DDC (Fully Scheduled Network)
DDC(Data Direct Connectivity)や「Fully Scheduled Network」と呼ばれる比較的新しい技術も登場しています。イーサネットをベースにしつつ、Virtual Output Queue (VOQ)などの高度なアーキテクチャを採用しています。
- 高度な輻輳制御:ネットワーク内での輻輳をほぼ完全に回避
- パケットの完全スケジューリング:スマートなスケジューリングによりリソース配分を最適化
- ジュニパーやブロードコムなどの大手ベンダーが提供
5. 性能比較と選択基準
では、どのインターコネクト技術を選ぶべきでしょうか?いくつかの観点から比較してみましょう。
レイテンシ比較
レイテンシ(遅延時間)は低いほど優れています:
- NVLink:約50ナノ秒(サーバー内限定)
- InfiniBand NDR:約90ナノ秒
- OmniPath:約300ナノ秒
- RoCEv2イーサネット:600〜800ナノ秒
レイテンシにはとても敏感なうさぎさんには、InfiniBandかNVLinkがおすすめぽよね!
帯域幅比較
現在利用可能な最高速度で比較すると:
- NVLink 4.0:600Gbps(GPU内接続)
- InfiniBand NDR/イーサネット 400G:400Gbps(同率)
- OmniPath第2世代:200Gbps
コストと導入のしやすさ
- イーサネット:最もコスト効率が高く、既存環境との統合が容易
- OmniPath:中程度のコスト
- InfiniBand:比較的高コストだが、性能要件が厳しい環境では必要な投資
- NVLink:主にNVIDIA GPU内蔵の技術として導入(追加コストとして考えない場合が多い)
規模とスケーラビリティ
- イーサネット:非常に大規模なクラスタ(32K以上のGPU)に適している
- InfiniBand:中〜大規模クラスタ(10K前後のGPU)に適している
- NVLink/NVSwitch:小規模クラスタ(〜256GPU程度)に制限される
6. ユースケース別の最適な選択
大規模AIトレーニングクラスタ
OpenAI GPT-3/4トレーニング事例:
OpenAIはMicrosoft Azureクラウド上で10,000個のNVIDIA A100 GPUとInfiniBandスイッチングネットワークを使用してGPT-3モデルをトレーニングしました。
選択基準:トレーニング中の同期が頻繁に発生するため、超低レイテンシが重要
最適な選択:
- 中規模(〜10K GPU):InfiniBand HDR/NDR
- 大規模(10K+ GPU):最新イーサネット + RoCEv2
ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
気象シミュレーション事例:
欧州中期予報センター(ECMWF)は、InfiniBandを採用した世界最大級のスーパーコンピュータで気象予報モデルを実行しています。
選択基準:ノード間の同期とデータ交換の効率性が重要
最適な選択:
- 高度な科学計算:InfiniBand HDR/NDR
- コスト最適化が必要な場合:RoCEv2を搭載したイーサネット
エンタープライズAI推論環境
推論サーバー事例:
多くの企業がAI推論サーバーでは既存のデータセンターインフラと統合しやすいイーサネットを選択しています。
選択基準:既存インフラとの統合性、コスト効率、管理のしやすさ
最適な選択:高性能イーサネット(100G/400G)
7. 将来動向と展望
GPUサーバーインターコネクト技術は今後も急速に進化していくでしょう。主な動向をうさぎ目線で簡単にまとめてみました!
技術進化の方向性
-
イーサネットとInfiniBandの競争激化:
- イーサネットはRoCEv2などの技術でレイテンシを改善
- InfiniBandはXDR(800Gbps)でさらなる高速化を実現予定
- ぽよぽよ競争が激しいぽよね〜
-
NVLinkのサーバー間接続の強化:
- NVSwitchによる接続規模の拡大
- GPUダイレクト技術のさらなる進化
-
CXL(Compute Express Link)の登場:
- CPUとGPUの間の新しい標準インターコネクト
- 将来的にはサーバー間接続にも応用される可能性
業界動向
- クラウドプロバイダーの選択:AWSやAzureなどの大手クラウドプロバイダーはスケーラビリティの観点から、超大規模環境でイーサネットへの移行を検討
- コスト効率の追求:イーサネットベンダー間の競争激化による価格低下の加速
- オープンスタンダードへの動き:特定ベンダーへの依存を減らすための標準化の取り組み
8. まとめ
GPUサーバーのインターコネクト選択は、ワークロードの特性、規模、予算によって最適解が異なります。ここでポイントをおさらいしましょう。
インターコネクト選択チェックリスト
- 超低レイテンシが最重要:InfiniBandまたはNVLink
- 大規模スケーラビリティが必要:最新イーサネット + RoCEv2
- 既存インフラとの統合性:イーサネット
- 中小規模の高性能環境:InfiniBandが最適解
- NVIDIA GPU同士の通信が主:NVLinkの活用を最優先
AI、HPC、データ分析など高性能コンピューティングの発展に伴い、適切なインターコネクト選択の重要性はますます高まっています。各技術の特徴と進化を理解し、自分のユースケースに最適な選択をすることが、システム全体の性能を最大化するカギとなります。
うさぎさんも、複雑なインターコネクト技術の世界を理解できたぽよか?これからのGPUクラスタ構築のお役に立てば嬉しいぽよ〜!
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