うさぎでもわかるDeepSeekの新技術「SPCT」とGeneralist Reward Model
うさぎでもわかるDeepSeekの新技術「SPCT」と「DeepSeek-GRM」
こんにちは、うさぎです!🐰 今日は中国のAIスタートアップDeepSeekが2025年4月に発表した新しい技術「SPCT(Self-Principled Critique Tuning)」とその成果である「DeepSeek-GRM」というモデルについて解説するぴょん!
最近のAI界隈では「モデルを大きくすれば性能が上がる」という考え方から「同じモデルサイズでもっと賢く使う方法」に注目が集まっているんだ。中でも「推論時スケーリング」と呼ばれる手法が熱いんだよ。DeepSeekの新技術はその最前線にあるものなんだぴょん!
推論時スケーリングって何?
まずは基本から説明するぴょん。大規模言語モデル(LLM)には大きく分けて2つの段階があるよ:
- 学習時(Training time):大量のデータからモデルが知識を学ぶ段階
- 推論時(Inference time):学習済みモデルが実際に質問に答える段階
従来のアプローチでは、モデルの性能を上げるために主に「学習時」に焦点を当てていたんだ。つまり:
- より大きなモデルを作る(パラメータ数を増やす)
- より多くのデータで訓練する
- より長く訓練する
これらはすべて膨大な計算資源を必要とするんだよね。GPT-4やClaudeのような最先端モデルを訓練するには何千万ドルもかかるとも言われているぴょん!🥕
一方、「推論時スケーリング」は、すでに訓練済みのモデルを使う段階でより賢く活用する方法なんだ。人間に例えると、難しい問題に直面したときに「もっと考える時間をとる」「複数の解法を試してみる」「自分の回答を批評して改善する」といった感じかな。
既存の推論時スケーリング手法
推論時スケーリングには、すでにいくつかの手法が提案されているよ:
- Chain-of-Thought (CoT): 「考えるステップ」を明示的に示すことで複雑な問題を解くよう促す
- Self-Consistency: 複数の回答パスを生成して多数決を取る
- Tree-of-Thought: 複数の思考経路を木構造で探索する
- Reflection: 自分の回答を振り返り改善する
これらの手法は確かに効果的だけど、いくつかの課題もあるんだ:
- 特定のタスクには効果的でも、汎用的ではない
- 一貫した改善が得られない場合がある
- 計算コストが高い場合がある
DeepSeekの新しい技術「SPCT」は、これらの課題に対処しながら、より効率的で一貫性のある改善を目指しているんだよ!
SPCTとは?
さあ、本題のSPCT(Self-Principled Critique Tuning)について説明するぴょん!
SPCTは、「自己原理批判チューニング」と訳せる技術で、モデルが自分自身で評価原則を生成し、それに基づいて回答を批評できるようにする手法だよ。
SPCTの仕組み
SPCTの面白いところは、単に「良い回答」を評価するだけでなく、「なぜその回答が良いのか」という原則(Principles)と「どの部分が良くて、どの部分が改善できるか」という批評(Critique)を明示的に生成する点なんだ。
具体的なステップはこんな感じだよ:
- 質問(Query)の受け取り: ユーザーからの質問を受け取る
- 候補回答(Responses)の生成: 複数の可能な回答を生成する
- 評価原則(Principles)の生成: その質問に対して重要な評価基準を自動生成
- 批評(Critique)の生成: 各回答を評価原則に基づいて批評
- 最終評価(Final Reward): 批評に基づいて各回答にスコアを付け、最適な回答を選択
このプロセスはすべて推論時(実行時)に行われるんだ。しかも並列処理が可能なので、効率的に複数の回答を評価できるぴょん!
SPCTの特徴
SPCTには次のような特徴があるよ:
- 動的な評価基準: タスクごとに最適な評価基準を動的に生成
- 説明可能性: なぜある回答が良いのかを明示的に説明できる
- スケーラビリティ: 計算リソースに応じて性能を向上させられる
- 汎用性: 様々なタイプのタスクに適用可能
- 効率性: 並列処理による効率的な計算
ルールベースオンラインRL
SPCTは「ルールベースオンライン強化学習(Rule-based Online RL)」という手法を使っているんだ。これは与えられた質問と回答に対して、モデル自身が評価ルールを作成し、それに基づいてフィードバックを生成する方法だよ。
従来の強化学習では大量の人間からのフィードバックが必要だったけど、SPCTではモデル自身がフィードバックを生成できるから、外部からの大量のフィードバックなしで改善できるんだぴょん!
DeepSeek-GRMモデルとは?
「SPCT」は方法論だけど、実際のモデルはどうなの?って思うよね。そこで登場するのが「DeepSeek-GRM」だよ!
DeepSeek-GRMは、SPCTを使って訓練されたGeneralist Reward Model(汎用報酬モデル)のことだよ。「汎用」というのがポイントで、特定のタスクに限定されず、様々なタイプの問題に対応できるんだぴょん!
DeepSeek-GRMの基本構成
DeepSeek-GRMは、Google社が公開しているオープンソースモデル「Gemma-2-27B」をベースにして作られているんだ。この27Bというのはパラメータ数が27ビリオン(270億)という意味だよ。
でも、単にGemma-2を使っているだけじゃないよ。DeepSeekはSPCTを使ってモデルを特別に訓練し、推論時のスケーリング能力を強化しているんだ。
DeepSeek-GRMの特徴
DeepSeek-GRMの主な特徴はこんな感じだよ:
- 強力な汎用性: 特定のドメインに偏ることなく、様々なタスクで高い性能を発揮
- 優れた推論時スケーリング: より多くの計算リソースを使うほど性能が向上
- 効率的なリソース利用: Mixture of Experts (MoE)アーキテクチャを活用
- 透明な評価プロセス: 原則と批評を明示的に生成
- オープンソース: 研究と開発コミュニティに公開される予定
特に注目すべきは「推論時スケーリング」の性能だよ。従来のモデルでは、計算リソースを増やしても性能向上は限定的だったり、場合によっては逆効果だったりしたんだ。でもDeepSeek-GRMは、計算リソースに応じて一貫して性能が向上するんだぴょん!
GRMとMoEの関係
DeepSeek-GRMはMixture of Experts(MoE)アーキテクチャも活用しているよ。MoEって何?って思うかもしれないけど、簡単に言うと「専門家の集合体」みたいなものだぴょん。
通常のLLMでは全てのパラメータが常に使われているけど、MoEでは与えられたタスクに応じて「専門家」と呼ばれるニューラルネットワークの一部だけが活性化されるんだ。これによって:
- 計算効率が大幅に向上する
- 同じコンピューティングリソースでより大きなモデルを動かせる
- タスクごとに最適なサブネットワークを使える
DeepSeek-GRMはこのMoEアーキテクチャと、SPCTによる推論時スケーリングを組み合わせることで、効率的かつ高性能なモデルを実現しているんだよ!
DeepSeek-GRMのベンチマーク結果
ただの理論ではないよ!DeepSeek-GRMは実際に様々なベンチマークで優れた結果を示しているんだ。
推論時スケーリングの効果
DeepSeek-GRMの最も印象的な点は、推論時のサンプル数(同時に生成する回答候補の数)を増やすほど性能が向上することだよ。具体的には:
- 8サンプルの場合:約2.7%ポイントの性能向上
- Meta RM(メタ報酬モデル)ガイダンスと32サンプルの場合:約4.9%ポイントもの性能向上!
これは本当にすごいことなんだ。なぜなら、27Bという比較的小さなモデルでも、GPT-4oやNemotron-4-340B-Rewardのような数百億パラメータを持つ巨大モデルと同等かそれ以上の性能を発揮できることを意味しているからだぴょん!
様々なタスクでの一貫した性能
DeepSeek-GRMは特定のドメインに強いだけでなく、様々なタイプのタスクで一貫して高い性能を発揮するんだ。具体的には次のようなベンチマークで評価されているよ:
- Reward Bench:報酬モデルの汎用性評価
- PPE(Preference and Correctness):選好と正確性の評価
- RMB:報酬モデルベンチマーク
- ReaLMistake:エラー検出性能評価
従来の報酬モデルは特定のタスクには強いけど他のタスクには弱いという「強いバイアス」を示すことが多かったんだ。でもDeepSeek-GRMはこれらのベンチマーク全体で一貫して高いスコアを達成しているんだよ!
実用例と将来展望
SPCTとDeepSeek-GRMは単なる研究トピックではなく、実際のAI応用に大きな影響を与えるものなんだ。
実用的な応用例
DeepSeek-GRMは次のような分野で特に力を発揮すると期待されているぴょん:
- コンテンツ生成: より高品質で一貫性のあるテキスト、コード、創作物の生成
- 質問応答: 複雑な質問に対するより正確で詳細な回答
- 意思決定支援: 複数の選択肢から最適なものを選び出す補助
- 教育: 学習者のニーズに合わせたフィードバックの提供
- コーディング: より効率的で信頼性の高いコード生成と評価
将来の研究と発展方向
DeepSeekの研究チームは、今後のSPCTとDeepSeek-GRMの発展について次のような方向性を示しているよ:
- 原則生成のさらなる改善: より的確な評価基準を生成する能力の向上
- メタRMの強化: 複数の原則と批評の統合をより効率的に行う方法の開発
- 他のモデルアーキテクチャへの応用: SPCTを様々なタイプのモデルに適用
- 計算効率のさらなる向上: より少ないリソースでも効果的に動作するための最適化
- マルチモーダル領域への拡張: テキスト以外のデータ(画像、音声など)への適用
オープンソースの意義
DeepSeekはDeepSeek-GRMをオープンソースで公開する予定だよ。これはAI研究コミュニティにとって大きな意味を持つんだ。なぜなら:
- 研究者や開発者がSPCTを自分のプロジェクトに応用できる
- 推論時スケーリングの新しいアプローチの探求が促進される
- より多くの人々がハイエンドAI技術にアクセスできるようになる
- 透明性と説明可能性を高めたAI開発の促進に貢献する
こうした取り組みは、AI技術の民主化と進化の両方に貢献するものなんだぴょん!
まとめ:SPCTとDeepSeek-GRMの革新性
最後にSPCTとDeepSeek-GRMの重要ポイントをまとめるよ!
SPCTの革新性
SPCTは推論時スケーリングの新しいアプローチとして、次のような革新性を持っているんだ:
- 自己評価能力: モデルが自ら評価原則を生成し、自分の出力を批評できる
- 説明可能なAI: なぜある回答が良いのかを明示的に説明できる
- 効率的な資源利用: 訓練時ではなく推論時にリソースを集中投下できる
- 一貫した性能向上: 計算リソースに比例して性能が向上する
DeepSeek-GRMのインパクト
DeepSeek-GRMは、こうした革新的な手法を実装したモデルとして、AIの進化における重要なマイルストーンになる可能性があるよ:
- より少ないリソースでより高い性能: 270億パラメータで数千億パラメータのモデルに匹敵
- 多様なタスクでの一貫した性能: 特定のドメインだけでなく幅広いタスクで高性能
- オープンソースによる技術の民主化: 最先端技術を広く利用可能に
- 新たな研究方向性の開拓: 「モデルを大きくする」以外の性能向上アプローチ
今後の展望
SPCTとDeepSeek-GRMは、まだ始まったばかりの技術だよ。今後は:
- より多様なモデルアーキテクチャへの応用
- マルチモーダルデータへの適用
- より少ないリソースでの動作最適化
- 他の推論時スケーリング手法との組み合わせ
などの発展が期待されるんだ。
AIの未来において、単に「より大きなモデルを作る」だけでなく、「同じサイズのモデルをより賢く使う」という方向性はますます重要になってくるだろうね。DeepSeekの研究チームが開発したSPCTとDeepSeek-GRMは、そうした方向性を示す重要な一歩なんだぴょん!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!🐰
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