うさぎでもわかる algomatic社と営業AIエージェント「アポドリ」
うさぎでもわかる algomatic社と営業AIエージェント「アポドリ」
こんにちは!最近、日本のAIベンチャー業界で注目を集めている「株式会社Algomatic(アルゴマティック)」とその営業AIエージェントサービス「アポドリ(apodori)」について、その全貌と技術スタックを解説します。
AIエージェントがビジネスを変革する時代が到来しました。アポドリはその最前線を走るサービスの一つです。今回はプレスリリースや技術ブログなどの公開情報から、アポドリのアーキテクチャやシステム構成を徹底的に解剖してみましょうぴょん!
1. Algomaticとは?
Algomaticは「AI革命で人々を幸せにする」をミッションに掲げる日本の生成AIスタートアップです。「時代を代表する事業群を創る」というビジョンのもと、生成AIネイティブなサービスを次々と生み出しています。
同社はDMM.com傘下の企業であり、「生成AIスタートアップスタジオ」として、様々な領域でAIを活用した事業を展開しています。複数のカンパニー(事業部)を有しており、多角的に事業開発を進めています:
- ネオセールスカンパニー(アポドリを提供)
- リクルタAI(採用業務をサポートするAIエージェント)
- シゴラクAIカンパニー(生成AI活用プラットフォーム)
- Algomatic Globalカンパニー
- AI Transformation(AX)カンパニー
今回焦点を当てるのは、ネオセールスカンパニーが2025年1月16日にリリースした営業AIエージェント「アポドリ」です。
2. アポドリ(apodori)とは?
アポドリは、営業パーソンがアポイント獲得に関わる活動を行う代わりに、AIエージェントが各企業専属のインサイドセールス担当として機能するサービスです。
2.1 アポドリの主な機能
アポドリは営業活動における以下のプロセスを自動化・代行します:
- リスト作成:潜在顧客のリストアップと選定
- アプローチ実行:最適な方法でのコンタクト
- 活動管理:フォローアップの実施と管理
- 活動分析:効果測定とプロセス改善
これらの活動を通じて、顧客企業のキーパーソンとの商談獲得を実現します。
2.2 アポドリの特長
アポドリには3つの主要な特長があります:
-
商談獲得のための業務をすべてまるごと完全遂行
従来は営業パーソンに属人化していたアプローチ施策企画や個社返信対応なども含め、商談獲得に関わるプロセス全体をカバーします。 -
自社の営業業務プロセスに合わせたカスタマイズが可能
ターゲット・商材・施策・営業担当など用途別にAIをカスタマイズできます。使うほど品質が向上し、営業組織全体の営業力向上を実現します。 -
AIが実働した分だけ費用発生
シンプルな従量課金制で、事業状況に合わせたコストコントロールが可能です。
2.3 ネオセールスシリーズの展開
アポドリは「ネオセールス」シリーズの第1弾として位置づけられています。このシリーズでは、営業活動の様々な領域(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)において、AIエージェントサービスを連続的にリリースする予定とされています。
これはAlgomaticが提唱する「営業3.0」のビジョンに基づくもので、AIが営業プロセスを根本から変革していくことを目指しています。
3. アポドリのアーキテクチャと技術スタック
Algomaticの技術ブログから得られる情報をもとに、アポドリのアーキテクチャと技術スタックを解析してみましょう。
3.1 全体アーキテクチャ
アポドリのアーキテクチャ推測図
アポドリのシステムは大きく分けて以下のレイヤーで構成されていると推測されます:
- フロントエンド層:Web UIを提供するレイヤー
- APIレイヤー:フロントエンドからの要求を処理するレイヤー
- ビジネスロジック層:主要な営業プロセスロジックを実装
- Difyワークフローレイヤー:AI実行フローを管理
- 分散処理レイヤー:大量のタスクを並列実行するための基盤
- LLM連携:複数のLLMと連携し、AIの判断・文章生成などを実行
3.2 使用技術スタック
アポドリの技術スタック予測図
技術ブログの情報から、以下のような技術スタックを採用していることがわかります:
フロントエンド
- React
- TypeScript
- pnpm (モノレポ構成)
バックエンド
- Node.js
- Express
- TypeScript
- RESTful API
- オブジェクト指向設計
AIレイヤー
- 複数のLLM(OpenAI GPT、Anthropic Claude、Google Gemini)
- Dify(AIワークフローエンジン)
- 独自のプロンプトエンジニアリング
- 営業特化型AIモデル
インフラストラクチャ
- Microsoft Azure
- Azure Container Apps
- Azure Functions
- Docker
- 分散ロック機構
3.3 Difyの活用
アポドリでは、Difyというローコード・ノーコードでAIアプリケーションを構築できるプラットフォームを積極的に活用しています。同社のエンジニアブログによれば:
- 100個近いワークフローを作成
- 1日に1万回以上のDify呼び出し
- プロダクションレベルでの本格採用
Difyの採用理由として、以下の点が挙げられています:
- プロンプトを簡単に変更可能:エンジニア以外でも編集できる
- ある程度複雑な処理も実装可能:条件分岐やループなどの基本的な制御構文も使える
- 非エンジニアのドメインエキスパートの巻き込み:営業やCSメンバーが直接プロンプト編集可能に
3.4 分散処理アーキテクチャ
アポドリは1日に数千社の企業情報調査を行い、1社の調査には数十のツール起動を伴うため、1日に数万回のツール呼び出しが発生するとのことです。これに対応するため:
- 巨大なジョブを複数の子タスクに分割
- タスク単位でリトライ可能な設計
- タスク単位での並列実行
この基盤として、Azure Container App Jobと独自の分散ロック機構を組み合わせたシンプルなアーキテクチャを採用しています。
4. アポドリの開発アプローチと哲学
Algomaticの技術ブログから、アポドリの開発における特徴的なアプローチも見えてきます。
4.1 「UIも自動化も後回し」のアプローチ
アポドリ開発では「作らない」ことを重視した開発手法を採用しています。具体的には:
- UIの開発を後回しにし、まずは機能面に集中
- 自動化も後回しにし、初期はエンジニアが手動でオペレーション
- 「できるかどうかわからない」開発を優先し、「できることがわかっている」要素は後回し
このアプローチにより、以下の利点を得ています:
- 業務解像度を高める機会を得られる
- プロンプトやインプット・アウトプットの改善点を発見しやすい
- 早期に顧客価値を検証できる
4.2 三位一体の開発モデル
アポドリ開発では、以下の3つの要素を統合する必要があるとしています:
- プロンプトエンジニアリング:精度の高い出力を得るための最適なプロンプト設計
- ソフトウェアエンジニアリング:プロセスを自動化するための技術実装
- ドメイン知識:営業という領域に関する深い理解と知見
これらを効果的に組み合わせるため、Difyのようなツールを採用し、エンジニアとドメインエキスパートの協業を促進しています。
4.3 monorepo構成と変化に強い設計
アポドリはTypeScript + pnpmによるmonorepo構成を採用しています。この理由として:
- 様々な種類のツールを明確に分離できる
- 複数リポジトリに分かれる心理的障壁を避けられる
- チームメンバーが全ての機能に触れやすくなる
また、機能の重要性に応じて設計・実装方針を変えています:
- 重要・複雑化が予想される機能:オブジェクト指向アプローチで堅牢に設計
- 試験的な機能:シンプルな実装で素早く検証
5. ユースケースと活用シーン
アポドリのユースケース図を見てみましょう:
アポドリのユースケース図
アポドリはどのような場面で活躍するのでしょうか?主な活用シーンを見てみましょう:
5.1 営業担当者の関わり
営業担当者は主に以下の点でアポドリと関わります:
- ターゲットリストの初期設定と調整
- 顧客情報の追加・修正
- アプローチ戦略の承認と調整
- 獲得された商談の実施
5.2 管理者の関わり
営業管理者はアポドリのパフォーマンスを監視し、改善します:
- 営業活動の分析と効果測定
- プロセスの最適化提案
- チーム全体の営業力向上
5.3 顧客側の体験
顧客側からすると、アポドリは優秀な営業担当者と同様のインタラクションを提供します:
- 的確な初期アプローチの受信
- 質問への迅速な応答
- 商談の円滑な設定
6. アポドリの導入成果と今後の展望
6.1 導入企業の成果例
アポドリの導入事例として、Algoage社の事例が公開されています:
- 6ヶ月でARR約1.1億円に相当する売上貢献
- 新規MRRの約20%をアポドリが創出
- 人員増なしでの売上拡大を実現
6.2 AIエージェント時代の営業変革
アポドリが実現する「営業3.0」では、以下のような変革が期待されます:
- 人員増に依存しない売上拡大モデル
- 属人化した営業ノウハウのシステム化・一般化
- データドリブンな営業プロセスの最適化
6.3 今後の展開予測
アポドリはネオセールスシリーズの第1弾とされており、今後は以下のような展開が予想されます:
- マーケティング領域のAIエージェント
- フィールドセールス領域のAIエージェント
- カスタマーサクセス領域のAIエージェント
これらが統合された、営業プロセス全体をカバーするAIエージェントエコシステムの構築が進むと考えられます。
7. まとめ:AIエージェント競争時代の始まり
アポドリは単なる営業支援ツールではなく、営業活動そのものを代行するAIエージェントとして画期的なサービスです。その特徴は:
- AIによる営業業務の完全代行:リスト作成からアポイント獲得まで
- 複数LLMを組み合わせた高度なAI:GPT、Claude、Geminiなどを最適に活用
- ドメイン特化型の営業モデル:一般的なAIではなく営業に特化した知見を搭載
- フレキシブルな技術アーキテクチャ:Difyを中心とした拡張性の高い設計
2025年はまさに「AIエージェント元年」と言われており、アポドリはその先駆的存在と言えるでしょう。今後はより多くの企業がAIエージェントを活用した業務変革を進めていくことが予想されます。
AIエージェントによって人間の仕事が奪われるのではなく、人間はより創造的で高付加価値な業務に集中できるようになる—アポドリはそんな未来の一端を示していると言えるのではないでしょうか。
参考サイト:
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