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AI同士の協働革命: ClaudeとChatGPTをつなぐMCPの可能性

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AI同士の協働革命: ClaudeとChatGPTをつなぐMCPの可能性

最近、このようなツイートを見かけました:

MCP Claude that have full control on ChatGPT 4o to generate full storyboard in Ghibli style ! All automatic I am doing nothing at all, we live a pretty crazy time

これは一体何を意味しているのでしょうか?「ClaudeがChatGPTを制御してジブリスタイルのストーリーボードを自動生成」?

この記事では、AIモデル間の連携を可能にする「Model Context Protocol(MCP)」と、それを活用してClaudeとChatGPTを連携させる画期的なツールについて解説します。さらに、AI同士の協働がもたらす未来の可能性についても考察します。

1. MCPとは何か - Anthropicが開発したAI連携のオープンプロトコル

MCPの概要

Model Context Protocol(MCP)は、Anthropic社が開発しオープンソース化したプロトコルで、大規模言語モデル(LLM)と外部データソースやツールとの間のシームレスな統合を可能にするものです。

簡単に言えば、MCPはAIモデルが外部のデータやツールと対話するための「共通言語」を提供します。これにより、AIアプリケーションは様々なデータソースやサービスと標準化された方法で連携できるようになります。

Model Context Protocol (MCP) の概念図

MCPの主な特徴

MCPには以下のような特徴があります:

  1. 標準化されたインターフェース: LLMアプリケーションと外部データソース・ツールの統合を標準化
  2. N×M統合問題の解決: N個のAIアプリケーションとM個のツール・データソースの組み合わせを効率的に管理
  3. ユニバーサルアダプター: USBポートのように機能し、カスタムコードなしで互換性のあるAIモデルがデータソースやサービスとシームレスに相互作用可能

MCPの技術的な仕組み

MCPは、LLMアプリケーションが外部ツールやデータソースと通信するための標準化されたインターフェースを提供します。このプロトコルにより、AIアシスタントは次のようなことが可能になります:

  • 外部データの取得
  • サードパーティサービスでの操作実行
  • ローカルファイルシステムとの対話
  • 他のAIモデルとの通信と連携

2. Claude-ChatGPT MCPツール解説 - 2つのAIを連携させる仕組み

GitHub上で公開されている「claude-chatgpt-mcp」は、Claude デスクトップアプリから macOS 上の ChatGPT デスクトップアプリを操作するための MCP ツールです。

主な機能

このツールは以下のことを可能にします:

  • ClaudeからChatGPTに直接質問を投げかける
  • ChatGPTの会話履歴を表示する
  • 既存のChatGPT会話を継続する

動作の仕組み

このツールは、AppleScriptを使用してClaudeとChatGPTの間の通信を仲介します。主要なコンポーネントは次のとおりです:

  1. MCP対応サーバー: NodeJSベースのサーバーがClaudeからのリクエストを処理
  2. AppleScriptの活用: MacOSのAppleScriptを使用してChatGPTアプリを自動操作
  3. ユーザーインターフェース: Claude内からChatGPTの機能にアクセスするためのシンプルなコマンド

具体的には、index.ts で定義されたMCPサーバーがClaudeからのリクエストを受け取り、AppleScriptを実行してChatGPTにプロンプトを送信し、応答を取得します。

// Function to send a prompt to ChatGPT
async function askChatGPT(prompt: string, conversationId?: string): Promise<string> {
  await checkChatGPTAccess();
  try {
    // This is a simplistic approach - actual implementation may need to be more sophisticated
    const result = await runAppleScript(`
      tell application "ChatGPT"
        activate
        delay 1
        tell application "System Events"
          tell process "ChatGPT"
            ${conversationId ? `
            -- Try to find and click the specified conversation
            try
              click button "${conversationId}" of group 1 of group 1 of window 1
              delay 1
            end try
            ` : ''}
            -- Type in the prompt
            keystroke "${prompt.replace(/"/g, '\\"')}"
            delay 0.5
            keystroke return
            delay 5 -- Wait for response, adjust as needed
            -- Try to get the response (this is approximate and may need adjustments)
            set responseText to ""
            try
              set responseText to value of text area 2 of group 1 of group 1 of window 1
            on error
              set responseText to "Could not retrieve the response from ChatGPT."
            end try
            return responseText
          end tell
        end tell
      end tell
    `);
    return result;
  } catch (error) {
    console.error("Error interacting with ChatGPT:", error);
    throw new Error(`Failed to get response from ChatGPT: ${error instanceof Error ? error.message : String(error)}`);
  }
}

使用方法

このツールを使用するための手順は次のとおりです:

  1. リポジトリをクローン: git clone https://github.com/syedazharmbnr1/claude-chatgpt-mcp.git
  2. 依存関係をインストール: bun install
  3. スクリプトを実行可能にする: chmod +x index.ts
  4. Claudeデスクトップの設定ファイルを更新:
    "chatgpt-mcp": {
      "command": "/Users/YOURUSERNAME/.bun/bin/bun",
      "args": ["run", "/path/to/claude-chatgpt-mcp/index.ts"]
    }
    
  5. Claudeデスクトップアプリを再起動
  6. 必要な権限を付与(ターミナルやiTermにアクセシビリティ機能へのアクセスを許可)

設定が完了すると、次のような質問をClaudeに投げかけることができます:

  • 「ChatGPTにフランスの首都は何か聞いてみて」
  • 「最近のChatGPT会話を表示して」
  • 「ChatGPTに量子コンピューティングについて説明してもらって」

3. ジブリスタイルのストーリーボード自動生成事例

最初に紹介したツイートで言及されていた「ジブリスタイルのストーリーボード生成」は、MCPを活用してClaudeがChatGPT 4oを制御する実験的な取り組みです。

生成プロセスの概要

この自動生成プロセスは次のように機能していると考えられます:

  1. Claudeへの指示: ユーザーがClaudeに対してジブリスタイルのストーリーボード生成を依頼
  2. MCPを通じた連携: Claudeは内部で適切な指示を生成し、MCPを通じてChatGPT 4oに送信
  3. 画像生成: ChatGPT 4oがジブリスタイルの画像とストーリーの要素を生成
  4. 結果の統合: 生成された内容がClaudeに返され、ユーザーに提示される

特筆すべき点は、作者が「I am doing nothing at all」と述べているように、このプロセスが完全に自動化されている点です。ユーザーは単に初期指示を出すだけで、後はAI同士が連携して複雑なクリエイティブタスクを実行します。

技術的な意義

この事例は単なるデモ以上の意味を持ちます:

  1. AIモデル間の分業: それぞれのAIモデルが得意とする機能を活かした協働
  2. シームレスな連携: ユーザーが複数のAIツールを個別に操作する必要がない
  3. 創造性の拡張: 単一のAIモデルでは実現困難な複合的なクリエイティブタスクの実現

4. AI同士の連携がもたらす可能性と未来への考察

MCPを利用したAI間連携は、AIの応用可能性を大きく拡張します。ここでは、その可能性と課題について考察します。

将来の可能性

  1. 専門性の組み合わせ:異なるAIモデルの長所を組み合わせた複合的なタスク処理が可能になり、単一のモデルでは達成できない成果を生み出せる

  2. ワークフローの自動化:AIモデル同士が連携してタスクを自動的に受け渡し、人間の介入を最小限に抑えた複雑なワークフローを実現できる

  3. マルチモーダルな応用:テキスト、画像、音声など異なるモダリティを扱う専門AIの連携により、マルチモーダルなアプリケーションの開発が容易になる

  4. AI集合知の形成:複数のAIが協働して問題解決にあたることで、個々のAIの能力を超えた「集合知」の形成が期待できる

課題と懸念点

  1. セキュリティとプライバシー:AI間で情報が受け渡される際のセキュリティリスクや、ユーザーデータの保護が課題となる

  2. バイアスや誤りの増幅:一方のAIのバイアスや誤りが他方のAIに伝播し、増幅される可能性がある

  3. 制御とガバナンス:複数のAIが自律的に連携する場合、その動作を監視・制御するガバナンスの枠組みが必要

  4. 責任の所在:問題が発生した際に、どのAIやシステムに責任があるのかが不明確になる可能性がある

5. まとめと実装方法

MCPの重要性

Model Context Protocol(MCP)は、AI技術の新たな発展段階を象徴するプロトコルです。これまで個別に機能していたAIモデルやツールを連携させることで、より複雑かつ高度なタスクの自動化を実現します。Anthropicがこのプロトコルをオープンソース化したことで、AIコミュニティ全体がこの恩恵を受けられるようになりました。

Claude-ChatGPT MCPの応用可能性

今回紹介したClaude-ChatGPT連携ツールは、現時点ではmacOSに限定されていますが、その概念は他のプラットフォームやAIモデルにも応用可能です。このような取り組みは、異なるAIサービスを組み合わせたカスタムソリューションの開発に道を開きます。

実装のポイント

MCPを活用したAI連携システムを実装する際のポイントは以下の通りです:

  1. インターフェースの標準化: MCPの仕様に沿った一貫したインターフェースを設計する
  2. セキュリティの考慮: AI間の通信を暗号化し、不正アクセスを防止する
  3. エラーハンドリング: AIモデル間の通信エラーを適切に処理する機構を組み込む
  4. ユーザー体験の最適化: 複数のAIが連携している複雑さをユーザーから隠蔽し、シンプルな操作感を実現する

終わりに

AIモデル間の連携は、AI技術の新たなフロンティアです。MCPのようなプロトコルの登場により、「AIが制御するAI」というパラダイムシフトが進行しつつあります。クリエイティブな表現からビジネスプロセスの最適化まで、この技術がもたらす可能性は計り知れません。

しかし同時に、セキュリティやガバナンス、倫理的な課題にも十分に配慮しながら発展させていくことが重要です。AIモデル間の効果的な連携が、人間の創造性や生産性を拡張するパートナーとして機能することを願ってやみません。

参考リンク

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