初心に戻ってプリンシプルオブプログラミングとデザインパターンを学び直した
オブジェクト指向プログラミングにおける設計力を高めたいと思い、初心に戻って「プリンシプルオブプログラミング」と「Java言語で学ぶデザインパターン」を読み直しました。以前も読んだことがあるのですが、Railsプロジェクトでの適切なクラス設計の判断に迷うことや、コードレビューで設計上の問題点を論理的に説明できないことに最近悩んでいたため、もう一度読むことにしました。
オブジェクト指向の目指すもの
オブジェクト指向プログラミングの本質的な目標は以下の品質特性を高めることです:
- 拡張性: 新機能の追加が容易であること
- 依存の管理: モジュール間の依存関係を適切に制御すること
- 再利用性: モジュールを別のプロジェクトやコンテキストで再利用できる能力
- 交換可能性: コンポーネントを別のコンポーネントに置き換えられること
これらはすべて「保守性の向上」という大きな目的に繋がっています。保守性とは、ソフトウェアの変更、拡張、テスト、再利用がどれだけ容易かを表す特性です。
オブジェクト指向の基本技法
分割統治とモジュール設計
「分割統治(Divide and Conquer)」は問題解決の基本的なアプローチです。これは大きな問題を小さな問題に分割し、それぞれの問題を独立して解決した後、解決策を統合して全体の解とする方法です。
プログラミングにおいては、問題に対する「責務」と「凝集度」を意識して抽象化とカプセル化を行うことが重要です。一つのクラスやモジュールは一つの責務に集中させる(単一責任の原則)ことで、変更容易性が向上します。このようなモジュール設計の考え方は、ソフトウェアの保守性と拡張性を高める基盤となります。
モジュール結合度
モジュール結合度とは、モジュール間の関係の密接さを表します。結合度が低い(疎結合)ほど、変更容易性とテスト容易性が高まります。良い設計では、モジュール間では可能な限りシンプルなデータ(スカラ型またはシンプルなオブジェクト)をやり取りし、グローバル変数や制御引数(フラグなど)の使用を避けるべきです。また、安定したモジュールに依存するようにする(依存性逆転の原則)ことや、依存性の注入(DI)を活用して結合度を下げることも重要な手法です。
開放閉鎖の原則(OCP)
OCPはオブジェクト指向設計の中心的な原則の一つです。この原則によれば、クラスは拡張に対して開いているが、修正に対しては閉じているべきとされています。つまり、機能拡張は既存コードを変更せず、新しいクラスを追加することで実現するべきです。これにより拡張性が高まり、変更影響範囲が限定され、再利用性も向上します。
OCPを実現するための主な方法としては、インターフェースと実装を分離し、クライアントはインターフェースのみに依存させることが挙げられます。また、具象クラスではなく抽象クラスやインターフェースに依存させることも重要です。
インターフェースと実装の分離
インターフェースと実装の分離はオブジェクト指向の重要な原則の一つです。この原則では、モジュールはインターフェース(外部と対話する部分)と実装(内部動作)を分離し、クライアントはインターフェースを通してのみオブジェクトと対話するべきとされています。これにより内部実装の詳細が隠蔽され、実装の変更がクライアントに影響しなくなります。結果として、変更の影響範囲を実装クラス内に閉じ込められるようになります。
デザインパターンとオブジェクト指向の関係
以前もデザインパターンを学ぼうとして途中で挫折してしまったのですが、今回はオブジェクト指向プログラミングの原則を具体的に適用するサンプル集として見ていくと理解が深めやすかったです
交換可能性を高めるパターン
交換可能性とは、モジュールを「部品」として捉え、別のモジュールに容易に置換できる性質です(OCPの実践):
- モジュールを交換可能にするための手法:
- インターフェースへの依存
- 依存性の注入
- 具象クラスではなく抽象クラス/インターフェースの型を使用
代表的なパターン:
- Builderパターン: オブジェクト生成プロセスをインターフェースで抽象化
- Observerパターン: イベント通知の送信者と受信者を疎結合に保つ
- Strategyパターン: アルゴリズムを交換可能なモジュールとして分離
抽象化による型の同一視を活用するパターン
抽象クラスやインターフェースを用いることで、異なるサブクラスを同じように扱える(リスコフの置換原則):
-
instanceof
などによる型チェックが不要になる - 抽象化の利点を最大限に活用する
代表的なパターン:
- Compositeパターン: 個別オブジェクトとその集合を同じように扱う
- Decoratorパターン: オブジェクトに動的に責任を追加する
- Adapterパターン: 互換性のないインターフェースを持つクラスを協調させる
まとめ
オブジェクト指向プログラミングの本質は「保守性の向上」にあります。改めて基本書を読み返すことで、情報隠蔽、分割統治、OCP、インターフェース分離、依存性の注入などの技法の意味をより深く理解できました。
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