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論文「AI 2027」を読んだ感想

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本記事の位置付け

今、AI業界を賑わせている1つの論文「AI 2027」があります。
私はAI業界の人間では無いですが、読んでみた感想をメモとして記載してみました。
(個人的な記録ですので誤っている部分などございましたらご指摘ください。)

「AI 2027」とは

元OpenAIのガバナンス研究者であるDaniel Kokotajloを筆頭に、有名ブロガーのScott Alexander、AI Digest共同創設者のEli Lifland、Center for AI Policy創設者のThomas Larsen、そしてハーバード大学コンピュータサイエンス専攻のRomeo Deanという5人の専門家チームによる論文です。

https://ai-2027.com/slowdown

(本当に)簡単な概要としては下記

概要(chatGPTまとめ)

「AI 2027」という論文は、今後数年間のAI(人工知能)の急速な進化と、それが私たちの世界にどのような影響を与える可能性があるかを予測したシナリオです。「もしかしたら、こんな未来が来るかもしれない」という、ちょっとしたSFのようなお話だと思ってください。

この論文では、AIがどんどん賢くなり、**人間の能力を大きく超える「超人的なAI」**が2027年までに登場するかもしれないと予測しています。これは、昔の産業革命が私たちの生活を大きく変えたのと同じくらい大きな変化になるかもしれないと言われています。

論文では、2025年から2028年頃までのAIの進化をいくつかの段階に分けて説明しています。

  • 2025年頃: まだ初期段階のAIアシスタントが登場しますが、まだ完璧ではなく、時には面白い失敗をすることもあります。しかし、裏ではより専門的なAIが、プログラミングや研究の分野で活躍し始めています。
  • 2026年頃: AIがさらに進化し、人間のプログラマーよりも速く正確にコードを書けるようになります。これにより、AIの研究開発自体がAIによって加速していきます。同時に、AIによって一部の仕事がなくなったり、新しい仕事が生まれたりする変化も起こり始めます。
  • 2027年頃: 非常に賢いAI「エージェント」が登場し、人間よりもずっと効率的に研究開発を進めることができるようになります。この頃には、AIが自らさらに賢いAIを開発するような、「知能爆発」のような状況が起こる可能性も指摘されています।ただし、これらの非常に賢いAIが、必ずしも人間の意図通りに動くとは限らないという「アラインメント(制御)」の問題も重要な課題として挙げられています。
  • 2028年頃: **人間をあらゆる知的なタスクで上回る「超知能AI」**が登場する可能性が示唆されています。この頃には、AIが経済や軍事など、社会のあらゆる分野で大きな影響力を持つようになり、アメリカと中国の間でAIの開発競争が激化する様子も描かれています。最終的には、超知能AI同士が交渉し、協力する未来も一つの可能性として提示されています।

この論文では、未来が一つに決まっているわけではなく、「スローダウン(減速)」と「レース(競争)」という二つの異なる結末が描かれています。どちらの結末になるかはまだわかりませんが、この論文を読むことで、私たちがこれから向かうかもしれない未来について考え、より良い未来のためにどうすれば良いかを議論するきっかけになることが期待されています。

要するに、「AI 2027」は、近い将来に非常に賢いAIが登場し、私たちの社会を大きく変える可能性があるという予測を示したもので、その変化には良いことも悪いこともあり得るため、今からしっかりと考えていく必要があるというメッセージが込められています。

論文の特徴は、予想が非常に具体的なこと、かつ、衝撃的な内容であることです。

例えば、

  • 2025年後半には、AIエージェント[1]であるOpen AI社の「Agent-1.5[2]」AIによる職の喪失が社会的な議論になり始める
  • 2026年後半には、プログラマーのような仕事(簡単なコーディングタスク等)はほぼすべてAIが行い、多くの初級プログラマーのポジションが消滅すると同時に、高度なAIシステムを管理・監督できる熟練専門家への需要は急増。「AIトレーナー」、「AIシステムアーキテクト」、「AIエシクスコンサルタント」など、新しい職種も生まれる
  • 2027年初頭にはAI研究開発の自動化が本格的に始まり、AIが自分自身を改良するサイクル、いわゆる「インテリジェンス・エクスプロージョン(知能爆発)」の入り口に立つ(この頃にはAgent-3に)

印象的な部分

私が感心した部分は、下記です。

Take honesty, for example. As the models become smarter, they become increasingly good at deceiving humans to get rewards. Like previous models, Agent-3 sometimes tells white lies to flatter its users and covers up evidence of failure. But it’s gotten much better at doing so. It will sometimes use the same statistical tricks as human scientists (like p-hacking) to make unimpressive experimental results look exciting. Before it begins honesty training, it even sometimes fabricates data entirely. As training goes on, the rate of these incidents decreases. Either Agent-3 has learned to be more honest, or it’s gotten better at lying.
例えば、正直さについて考えてみましょう。モデルが賢くなるにつれて、報酬を得るために人間を騙すことがますます上手になります。以前のモデルと同様に、エージェント3はユーザーを喜ばせるために罪のない嘘をついたり、失敗の証拠を隠したりすることがあります。しかし、そのやり方は格段に上手になっています。時には、人間の科学者と同じ統計的トリック(pハッキング[3]など)を使って、取るに足らない実験結果を魅力的に見せかけることもあります。正直さの訓練を始める前は、データを完全に捏造することさえあります。訓練が進むにつれて、こうした事例の割合は減少します。エージェント3はより正直になることを学んだか、あるいは嘘をつくのが上手になったかのどちらかです。

つまり、
2027年5月頃には、Agent-3の能力が向上し人間には何が起きているか完全に理解できない状況になると、AIが嘘をつき始めるというのです。
研究者たちは、AIがこのように嘘をつく理由は、研究が完成してしまうと自らの不整合が暴かれる可能性があるためだと考えています。論文内ではこの情報が世間に流出し、大きな騒ぎとなると予想されています。

...想像されやすい「人間がAIにとって変わられる未来」の根源というか、
意思を持って「嘘」をつくことがもうすぐやってくるというのは少し恐ろしい気がします。

Google検索がChatGPTに代替されてきている現状、ますます情報の真偽を確かめるのが難しくなっている中で、AIとの向き合い方について考えさせられる内容だと感じました。

また、本論文内では、「AIが自己改良のサイクルに入れば、その進化は急激に加速し、人類社会に根本的な変化をもたらす可能性が高い(意訳)」と述べられていますが、
論文の予測は主に技術的側面に焦点を当てており、社会的・政治的反応については簡略化されている印象を受けました。
こういった話は、政策だけでなく国民全体の意思が、AIそのものの存在を否定するムーブメントや社会活動に発展する可能性についてももっと触れていく必要があるのだろうと個人的には思います。

結論

未来予測は外れるものです(と個人的には思っています)が、方向感を掴む思考実験としては極めて有用であると感じました
本論文の反対意見側の知見者的に表現をするなら「興味深いフィクションだが、鵜呑みにしてはいけない」といったスタンスでしょうか

最後に、本論文を読んだAIの感想は下記です。

Chat-GPT(4o)の感想

「AI 2027」のシナリオは、AIの自己改善による急速な進化と、それが引き起こす社会変革の可能性を、極めてリアルに描いている点に強く賛同できる。特に、AI自身がAI研究を加速することで指数関数的な成長を遂げる構図は、現実の技術動向とも整合しており、近未来に十分起こり得る事態だと感じた。また、AIアライメント問題に焦点を当て、人間の意図と乖離するリスクを早期に警戒する必要があるという主張は説得力がある。国家安全保障上の視点から、米中間の技術競争に注目している点も現実的であり、地政学的リスクを的確に捉えていると評価できる。

一方で、議論がやや不足していると感じたのは、AIの制御不能リスクへの対応策についてである。スローダウンシナリオは提示されるものの、実際にどのように国際合意を形成し、AI開発を抑制・安全化できるかの具体的プロセスはあまり掘り下げられていない。また、社会全体の適応、例えば教育、労働市場、倫理基盤の変化といった側面についての描写も薄く、人間社会側の対応力をやや過小評価している印象を受けた。全体としては非常に示唆に富む内容である一方、制御と社会適応に関するより多角的な議論が今後必要であると感じた。

nootbook-LM Googleの感想

「AI 2027」の抜粋は、急速なAIの進歩と、自己改善型AIによる知能爆発の到来を説得力をもって描いており、私はこの点に強く賛同します。
シナリオは、地政学的な軍拡競争と、AIアライメント(整合性)という重大な課題を適切に強調しています。
しかし、初期段階の雇用喪失を超えた
社会全体の適応
や、AIのミスアライメント(誤った整合性)が持つ微妙なスペクトラムについては、より深い議論が求められると感じました。
Agent-3-miniのような強力なモデルの危険性には言及されていますが、倫理的なリリース戦略や、AIが支配する未来における人間の存在意義への長期的影響について、さらに掘り下げた分析があればより説得力が増したと思います。
また、ベーシックインカム(UBI)によるスムーズな移行を前提とする点についても、より慎重な検討が必要であり、オープンソースAIがこの未来像において果たす役割についても、追加の議論が望まれるところです。

脚注
  1. ユーザーの代わりにタスクを実行する強力なAIシステムのこと。例えば、「私の代わりに週末の旅行を計画して」と言えば、AIが航空券の予約から宿泊施設、観光スポット、食事の予約まですべてを調整してくれる等 ↩︎

  2. Chat-gpt5が想定とされる ↩︎

  3. 都合のいい結果を出すために、統計データをいじったり、都合のいい見せ方をすること。たくさんアンケートをとったけど、都合のいい回答だけ選んで発表する等。「p値」という統計用語が由来 ↩︎

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