頒布した自作キーボードキットの裏話 2021
この記事はキーボード #1 Advent Calendar 2021 の
日目です。
タイトルのとおり、この記事では今年に私が頒布したキーボードの話をツラツラと書いていきたいと思います。
年始に自作キーボードを始め、まさかPCBの設計やキーボードキットをするとは思いもしませんでした。
今となっては余暇の時間の多くを突っ込んでいます笑
キットを設計される人の助けになれば幸いです。
また、自作キーボードを探している方へ選択肢を提供できたなら尚嬉しいです。
EndZone34
「実用的」で「使っていて楽しい」をコンセプトに据えた30%キーボードです。
ちょっと変わったカタチをしていますが、手を置いてみると自然な体勢で文字が打てます。
きっかけ
もともとGherkinを使っていたのですが、あまりにキー数が少ないのと、親指が余ってしまうのを改善したくてSU120でオリジナルなキーボードを作り始めたのが沼への入り口きっかけでした。
(よく見ると過去最高のfav数あるな)
そこから、どうせならレシピとして世に残したい(誰かが作れるように)という思いが強くなり基板の設計に至りました。
初めてPCBが届いた時は嬉しかったですね〜。
キーレイアウト
Gherkinでオーソリニア(格子配列)の指の移動が最小限で済む(縦方向に指を移動させるだけで文字が打てる)良さを踏まえつつ、Alice配列の手の角度を自然に置けるニュアンスを取り入れるべく、このようなレイアウトになりました。
小指の位置がなかなかの難題で、オーソリニアを斜めにすると届かないので、ある程度手前側にずらす必要があったのですが、どれぐらいズラすのか…がなかなか難しかったですね。
ケースデザイン
当時は、「余白とかいらんやろ」ということで、ベゼルレスでキーレイアウトを愚直に形にするという方向性を持ちつつ、安っぽくならないよう(これも当時の偏見)に積層プレートで密閉することは早い段階で決めていました。
ベゼルレスで積層の密閉型を作るというのはなかなかハードでしたが、キースイッチのフットプリントを場所によって反対にするという策で乗り切りました。
(ちょっとした発明だと思ってます...)
低さにもこだわっていて、接地面からPCB底面までの高さが5mmというかなり薄くしました。
GherkinなんかはPCB底面までの高さが13mmぐらいあったので、手首と腕の負担を軽くしたかった…というところが基になっています。
名前
名前はすごーーーーーく悩みました。
端的で読みやすく、覚えやすい単語…という観点で見繕ったのですが、これ!というものになかなか出会えなかったですね。
私はアメフトが好きなので、それに関連する用語から持ってくるのが良いかなぁ…ということで、EndZoneという用語をピックアップしてきました。
https://www.city.kawasaki.jp/250/page/0000016502.html より
ちなみに、アメフトのエンドゾーンはサッカーのゴールに相当するもので、ここにボールを持ち込むと6点が手に入ります。
頒布
一度、頒布までやりきってみよう(もしかしたらそこの達成感で沼から抜け出せるかも)ということで、Boothで頒布を開始しました。
30%サイズでこその楽しさをぜひ体験ください!
購入された方の組み立て報告がめちゃくちゃ嬉しかったです…🙏
また、組み立て済みのものも用意しておりますので、自作キーボードを使いはじめてみたい〜という方にオススメです。
遊舎工房さんへ
ここまで来たからには天下のお膝元に乗り込もう!ということで、恐れ多くも遊舎工房さんに委託を依頼しました。(丁寧に対応くださりました…🙏)
後日、アキバに行く機会があったので、巡礼のごとく出舎しました。
自分のキットのところ行くとき、ちょっと挙動不審になりますねw
あと、他のお客さんが自分のキットの近くいるときそわそわしちゃう笑
Radialex
45キーの一体型キーボードです。
放射状のキーレイアウトと中央の台座とキーが推しポイントです。
きっかけ
正直に書くと、Ergotonic49とCocot46のデザインに触発されて、自分もキーレイアウトがカッコいいキーボードを作ってみたくなった…というのが発端です。
レイアウト
特段オリジナリティがあるわけではないですが、オーソリニア配列の「指を縦方向に動かすだけで文字が打てる」という利点を取り入れつつ、かっこよさを表現するには〜と考えた結果、指の開きに合わせた放射状のレイアウトに至りました。
試作として組み立てたものがこちら。
デザインの狙いは悪くなかったのですが、人差し指の守備範囲が思いの外広くなってしまい、特にTとYキーがそれぞれ押しづらくなってしまうという課題にブチ当たりました。
試行錯誤を繰り返すも、どれもイマイチで結局愚直に隣り合わせる…というところで落ち着きました。
なんだかんだでこれで良かったのかなという感じです。
中央のシンボルキー
もう一点、他のキーボードには無い差別化ポイントを作りたくて試行錯誤している内に、中央にオブジェを置きたいなぁ…というところから中央に好きなキーキャップを飾れる台座を作るに至りました。
中央のキーの周囲に5mmのアクリルを2枚重ねて台座を作っております。
なんとなく中央にポツーンとキーが置いてあるだけだと寂しいかなと思ったので、ちょっと特別感を演出するべくの一手となっております。
ケース
キーキャップの配列をベースにしたものと、余白をつけた矩形型のものの2パターンを作りました。
どちらも良さがありますが、シルエットとして見たときの印象と言いますか、ユニークさが強調できるのは前者かなぁ…ということで採用しました。
また、ケースのアクリルにはマットなブラックを用いており、アクリル板ながらもちょっと落ち着いた感じを出すという狙いがあります。
命名
これまた悩みましたが、今回は放射状のキー配列が推しポイントだったので、放射状を意味する「Radial」に加えて、なんとなく「X」で終わる名前がいいかなと思って、「Radialex」という名前にしました。
多分、「ラディアレックス」…って呼ぶんですかね?自分でもよく分かってないのです笑
頒布
Boothにて頒布しております。
自作キーボードをより楽しめる一品です!
こちらも組み立てレポート頂いております。
Center x Enter
中央にEnterキーを置いた30%レイアウトのキーボードです。
Enterキーの左右でキーの配列が異なる変態ユニークなキーボードです。
きっかけ
仕事の合間に、ふと思いついたキーレイアウトを投稿したら思いの外favがついていたので、ささっと基盤に起こしてみました。
発注前にガーバーデータだけ先に公開していたところ、なんと有志の方がPCBを作成されていました!
すごく嬉しかったですね〜!
ビルドガイドを委託
ビルドガイドを他の方に書いて頂くと、どんな感じなんだろう…と気になってしまい、軽く募集してみたところなんと応募者が!
書いて頂いたビルドログはこちら。なんと2本立て!
とても丁寧に書いてくださいました…!感無量です😂
命名
真ん中にEnterキーがあるから…という理由で「Center」と「Enter」をそのままくっつけただけです、某ハンター漫画っぽい語呂だったので、真ん中にXを入れちゃいました。
頒布
Boothにて頒布しております。
ちょっと変わったキーボードが欲しいあなたへ。
DogTag
9キーのマクロパッドです。
ロータリーエンコーダを積むこともできます。
2台揃えると分割型のマクロパッドとしても利用できます。
きっかけ
ということで、デザインしたのが当キーボードなのです。
トッププレート付きの基盤
JLCPCBの場合100mm x 100mm以内だと200円で5枚作れるんですよね。お得!
ただ、DogTagに関してはだいたい700円ぐらいかかってしまいます…。
1枚のPCBで複数のことをやろうとしているからですね。
それでも充分お得なのですが。
(見積り担当の人によってはもっと高くなったりする💦)
ケース
100mm x 100mmでPCBを作る…となった時に、フツーにそのサイズ内で1枚のPCBを作っても良いのですが、それだとあんまり面白くないかな〜というところで、トッププレートもつけちゃおう!ということでこのような形状になっています。
ボトムプレートにするかすごーーーく悩んだのですが、やっぱりキースイッチをパチっと差し込む気持ちよさを多くの人に体験してほしいと思ったので、それならやっぱりトッププレートだよね…といった感じです!
一方でボトムプレートが無いので、底面をどうするのか…というところが課題として存在します。
もうこれはストレートにゴム足に頑張ってもらうしかね〜〜ということでちょっとだけ大きいゴム足(高さ2.2mm)でどうにか対処できました。
分割型のマクロパッドとしても
基盤自体はリバーシブルなので、左手用・右手用として組み立てることも出来、かつTRRSケーブルで繋ぐことで分割型のマクロパッドとしても使えるようにしました。
この用途にどれぐらいにニーズがあるか分からないのですが、Ergo42(SE)を片手分を組み立てた後、やっぱり両手分ほしいよね〜と結局もう1セット購入した経緯がありまして。
初学用として組み立てられるけど永くも使える…という裏コンセプトを実現するためという意図もあります。
スペースの関係上TRRSソケットを手前側に置くので精一杯でしたが、これはこれでアリかなと思ってます。
命名
この手のキーボードは、ネームプレート系?の名前がつけられいるイメージなので(あれとかそれとか)、自分もそれにあやかろうと思い、パッと思いついたのが、洋画で見るこれかなぁ…というところでドックタグにしました笑
デザインとかは全く似通らないですが、2枚セットなところにちょっとシンパシーを感じてます。
頒布
Boothにて頒布しております。
自作キーボード初めての方にも、小さなマクロパッドをお求めの方にもぜひ使っていただきたいです。
Heavy Left
左手側にテンキーを備え付けた分割型の日本語配列キーボードです。
きっかけ
元々、日本語配列キーボードを作ってみたかったことと、1つのPCBから分割型のキーボードの基盤を作ることをやりたかった…という技術的な挑戦からスタートしました。
レイアウト
左手側にテンキーが備え付けられているところが推しポイントです。
キーマップを変更してオリジナルなマクロパッドとしても利用できるのが強みでしょうか。
命名
「名は体を表す」そのまんまですね。
余談ですが「左手が重い」と聞くと、あのガンダムをイメージしちゃう人、私以外にいるかな?
頒布
Boothにて頒布しております。
ちょっとオリジナルな日本語配列の分割キーボードが欲しいあなたへ!
まとめや今後の展望
ここまで読んでくださってありがとうございます!
個人的には自作キーボード、早く飽きないかなぁ…なんて思ってるんですが、当分は抜け出せそうにないですね笑
自分は高級な外装や打鍵感を追い求めるよりも、「文字を打つのが楽しい」とか「作って面白い」といったところを突き詰めたいタイプなのかなぁ…と振り返って思いました。
そもそも自作キーボードの設計に手を出したのも、レシピを作りたい(作り方を世に残したい)というところが始まりですしね。
まだガーバーデータやケースのsvgなど公開できてないところありますが、時間を見て進めたいと思います。
(今すぐ欲しい方いましたらDMいただければお渡しします。)
自作キーボード設計の面白いところは、キーボードという道具としての制約の中でいかに表現を行うのか…といったところを突き詰めるところだと思っています。
この記事をきっかけに、自作キーボードの設計や組み立てに足を踏み入れる方がいたら幸いです。
(もし組み立てたいけど勇気が出ない〜という方はこちらも読んでくださるとお力になれるかもしれません。)
また、こういった取り組みを考えておりまして興味ある設計者の方はリプライやDM頂けますと幸いです。
この記事はRadialexとREALFORCE TKLで書きました。
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