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Elixir 1.11 の mix --no-start オプションと Logger

2021/01/23に公開

Elixir 1.11 の Logger

Elixir 1.11 では Logger にもいくつかの改善があった。[1]

  • サポートされるログレベルが増えて[2] Erlang/OTP 21 の新しい logger や Syslog の Severity [3] と同じ種類の優先度を扱えるようになった
  • 構造化データ (map と keyword list) のロギングをサポート
  • Logger.put_module_level/2 でモジュールごとのログレベルが設定可能に

早速、Elixir 1.11 にアップグレードして動作確認をしていたのだが、レベルを :warn にしていても、テストを実行すると debug ログが出力されてしまう、という問題に遭遇してしまった。

テストで debug ログが出力されてしまう

Elixir 1.11 にして mix test を実行すると、以下のように大量のログが出力されるようになってしまった。

% mix test
...
[debug] QUERY OK db=0.5ms queue=0.1ms
INSERT INTO "users" ("display_name","email", ...
[debug] QUERY OK db=1.0ms
INSERT INTO "tokens" ("name","encrypted_token","user_id","inserted_at","updated_at") VALUES ($1,$2,$3,$4,$5) RETURNING "id" ["token7", <<204, 59, ...
INSERT INTO "organizations" ("description","display_name","status","inserted_at","updated_at") VALUES ($1,$2,$3,$4,$5,$6,$7) RETURNING "id" ["organization-755", "organization-755", ...

一見して、ex_machina による fixture 生成の SQL だと分かるのだが、このログは :debug レベルでしか出力されないはずだ。念のため、config/test.exs を確認してみる。

config/test.exs
config :logger,
  level: :warn,
  backends: [:console]

ちゃんと設定されている(ログレベルの変更については後述)[4]

--no-start に注意

実は、このプロジェクトでは、テストを --no-start オプションつきで実行するように mix.exs で設定されていた。

mix.exs
defp aliases do
  [
    ...
    test: ["ecto.create --quiet", "ecto.migrate", "test --no-start"]
  ]
end

--no-start オプションがついていると、アプリケーション(と依存しているアプリケーション)が起動しない。--no-start オプションを外せば、正常にログの設定が反映されるようになった。

$ mix test
02:27:22.114 [info]  Migrations already up
............................................................................................

試しに、Elixir 1.10 と 1.11 で config :logger, level: :warn を設定したときに Logger.level() がどうなるか調べてみた。

Elixir version Logger.level()
Elixir 1.10.4 :warn
Elixir 1.10.4 (--no-start) :warn
Elixir 1.11.0 :warning
Elixir 1.11.0 (--no-start) :debug

比較してみると、Elixir 1.11 では以下のように挙動が変わっていることが分かるだろう。

  • :warn:warning に変換される [5]
  • --no-start オプションをつけると設定が読み込まれない

なぜ、--no-start で Logger の設定が反映されないのか?

まず、--no-start オプションが指定されているときに config.exs で指定した Logger の設定が反映されない、直接的な原因は以下のコミットである。

--no-start オプションが指定されていないときだけ、Logger アプリケーションを停止していることが分かると思う。

if "--no-start" in args do
  ...
else
  # Stop Logger when starting the application as it is up to the
  # application to decide if it should be restarted or not.
  #
  # Mix should not depend directly on Logger so check that it's loaded.
  if Process.whereis(Logger) do
    Logger.App.stop()
  end

Elixir 1.10 では無条件で停止されるようになっていた

さて、Logger を停止しないと設定が反映されないわけだが、こうなる背景については、以下のコミットのメッセージに詳しい。[6]

つまり、Logger はアプリケーションの Mix config が準備できる前にデフォルトの設定で起動するため、アプリケーションの設定を反映させるためには再起動してやらないといけない。

「それでも、--no-start が必要なんだ」

この問題を解決するためには --no-start を取り除くのがベストな解決策だ。

そもそも、ほとんどのプロジェクトでは --no-start でテストを実行する必要などないのだが、今回のプロジェクトでは分散環境のテストに whitfin/local-cluster を使っており、このオプションが必要だった😢

しかたがないので、mix がやっているように、アプリケーションを起動する前に Logger を停止してやる。これは、test_helper.exs に Logger.App.stop() を追加してやれば実現できる。

test_helper.exs
# To avoid some potential issues with local_cluster, we have to run
# `mix test` with `--no-start` option. But it causes another issue that
# Logger can not load mix configuration. So we stop Logger here to ensure
# load mix config when the application started.
:ok = Logger.App.stop()

{:ok, _} = Application.ensure_all_started(:my_app)

もちろん、これは期待通りに動く。しかし、ドキュメント化されている仕様ではないので、いつまた動かなくなるかちょっと不安だ。[7]

脚注
  1. Elixir v1.11 released - The Elixir programming language ↩︎

  2. Elixir 1.11 の Logger でサポートされるレベルの一覧 Logger — Logger v1.11.3 ↩︎

  3. Syslog については RFC 3164 - The BSD Syslog Protocol ↩︎

  4. わざわざ backends も上書きしているのは、本番環境で JSON ログを扱うために独自のバックエンドを使っているから ↩︎

  5. 1.11 の CHANGELOG には "Soft-deprecations (no warnings emitted)" として warn ログレベルの非推奨が記載されている elixir/CHANGELOG.md at v1.11.3 · elixir-lang/elixir ↩︎

  6. なお、このコミット自体は後ほど Revert されている Revert "Ensure project's Logger config is used when running Mix tasks… · elixir-lang/elixir@7d57dc9 ↩︎

  7. epmd を起動したり、分散環境テストのためにアプリケーションを別ノードで起動したりするので、test_helper.exs 以外で local_cluster を起動するのは難しそう ↩︎

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