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@babel/plugin-transform-instanceof を読む

2020/11/04に公開

Babelプラグイン開発について勉強しはじめた。

まずは手近な実装として Babel が提供しているプラグインのうち、@babel/plugin-transform-instanceof を読んでみる。このプラグインは、ES6 の instanceof 演算子を変換するだけなので実装コードも短く読みやすい。

@babel/helper-plugin-utils

import { declare } from "@babel/helper-plugin-utils";

export default declare(api => {
  api.assertVersion(7);

  ...
});

まずは、モジュールから export されている箇所だが、@babel/helper-plugin-utils から declare 関数が使われている。これは Web サイトにも解説があるとおり、Babel 7 と以前のバージョンの互換性を保つためのものだ。この declare 関数に渡された関数は、以下の修正が施されるように別関数にラップされて返される。

  • 第 1 引数 api (babel オブジェクト) が assertVersion() メソッドを持つようになる
  • 第 2 引数 options が常に渡されるようになる

Visitor オブジェクト

export default declare(api => {
  return {
    name: 'transform-instanceof',
    visitor: {...}
  };
});

export した関数からは visitor プロパティをもつオブジェクトを返すようにする。visitor プロパティに指定したオブジェクトのメソッドが AST のノードに応じて呼び出されるわけだが、このへんは Babel Plugin Handbook に詳しい。

instanceof 演算子に対応させる

visitor: {
  BinaryExpression(path) {
    const { node } = path;
    if (node.operator === 'instanceof') {
      ...
    }
  }
}

instanceof 演算子を変換したいので、visitor オブジェクトは BinaryExpression メソッドを実装し、path.node.operator で演算子を判定する。ちなみに、この BinaryExpression メソッドは、

visitor: {
  BinaryExpression: {
    enter() {...}
    exit() {...}
  }
}

のように、enter/exit を実装することもできる

helper の利用

ここから、実際の変換処理に入る。

const helper = this.addHelper('instanceof');

export した関数が実行されるときの thisPluginPass であり、この addHelper() 関数は以下のように、file オブジェクトにそのまま委譲されている。

file.js
addHelper(name: string) {
  return this.file.addHelper(name);
}

この addHelper() 関数の実装は割と複雑なのだが、動作は @babel/helpers に説明がある。

// The .addHelper function adds, if needed, the helper to the file
// and returns an expression which references the helper

理解できた範囲でまとめると、

  • コアのプラグインは @babel/helpers を使って、変換に必要な関数を定義している
  • たとえば、instanceof を実装する関数はこんな感じ
  • 関数の実装など長めのコードを構築するには @babel/template が便利

addHelper() 関数のメモ

  • ローカル変数の binding を管理する Scope
  • path の unshiftContainer, pushContainer - body のようなコンテナノードの開始位置、終了位置にノードを追加

helper の利用 (2)

const isUnderHelper = path.findParent(path => {
  return (
    (path.isVariableDeclarator() && path.node.id === helper) ||
    (path.isFunctionDeclaration() && path.node.id && path.node.id.name === helper.name)
  );
});

if (isUnderHelper) {
  return;
}

ここでは isUnderHelper 変数で「走査中のノードがヘルパー自体ではないか」を判定している。これは、たとえば、以下の変換後のコードを見れば理解できると思う。

function _instanceof(left, right) { if (right != null && typeof Symbol !== "undefined" && right[Symbol.hasInstance]) { return !!right[Symbol.hasInstance](left); } else { return left instanceof right; } }

_instanceof(this, String)

ここで、_instanceof 関数がヘルパーとして追加された関数だが、当然、この関数の中身の instanceof 演算子を変換してはいけない。なので、isUnderHelper 変数を使って判定する必要があるわけだ。

ノードの置き換え

path.replaceWith(t.callExpression(helper, [node.left, node.right]));

最後に、変換対象のノードを置き換える。

  1. @babel/typescallExpression() でヘルパー関数を呼び出すためのノードを生成
  2. path.replaceWith() によって対象ノードを置き換え

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