Python で簡単にコマンドラインツールを作るなら Fire が便利

5 min読了の目安(約4900字TECH技術記事

とにかく簡単にコマンドラインツールを作りたい。 Google 製のオープンソースライブラリ Fire は、そんなあなたのためのライブラリだ。

  1. 使い方はこれ以上ないほどシンプル。fire.Fire() 関数を呼ぶだけ
  2. インタラクティブな開発やデバッグをサポートする機能
  3. ライブラリの動作確認にも便利

簡単にコマンドラインツールが作れる

Python でコマンドラインツールを開発するためのライブラリといえば click が有名だろう。

では、サンプルとして「指定された回数だけ指定された相手に挨拶する」コマンドラインツールを書いてみよう。このツールは以下のように実行でき、--count オプションが省略された場合はデフォルトとして 1 が使われるものとする。

$ python ./hello_click.py --name World --count 5
Hello World!
Hello World!
Hello World!
Hello World!
Hello World!

click を使って実装すると以下のようになる(click のホームページに掲載されているサンプルを参考にした)。

import click

@click.command()
@click.option("--name", required=True)
@click.option("--count", default=1)
def hello(name, count):
    for _ in range(count):
        print("Hello %s!" % name)

if __name__ == "__main__":
    hello()

一方、Fire を使って実装すればもっと簡単だ。

import fire

def hello(name, count=1):
    for _ in range(count):
        print("Hello %s!" % name)

if __name__ == "__main__":
    fire.Fire(hello)

コマンドラインツール化したい関数やクラスを引数にして fire.Fire() を呼ぶだけというシンプルさ。

もちろん、click にはコマンドラインツールの実装に必要となるさまざまな機能が提供されており、コードの短さだけをもって「click より Fire を使うべき」とは言えません。この記事の最後に「Fire と click の使い分け」として見解を述べています。

fire.Fire() の詳しい使い方については、公式のガイドを参照してほしい。後述するが、コード中で fire.Fire() を呼ばずに、Python インタプリタの -m オプションで Fire をロードするだけでも使うことができる。

インタラクティブな開発をサポート

また、重要な特徴として、click のデコレータを用いたアプローチと異なり、Fire は対象となる関数やクラスのインターフェースを変更しないという点があげられる。これはつまり、実装中のコードがそのままテストや REPL (対話型シェル) で使える、ということであり、トライ&エラーを繰り返すインタラクティブな開発では重要な特徴だ。

さきほどの click の例だと、hello() 関数は @click.command() デコレータでラップされているため、そのまま使うことはできない。

$ python
Python 3.6.6 (default, Mar 23 2020, 11:51:32)
...
>>> import hello_click
>>> hello_click.hello
<Command hello>
>>> hello_click.hello(name='World')
Traceback (most recent call last):
  File "<stdin>", line 1, in <module>
  File "/Users/takanori_is/Developer/Workspace/Zenn/workspace/fire-is-one-of-python-library-for-creating-cli/.venv/lib/python3.6/site-packages/click/core.py", line 829, in __call__
    return self.main(*args, **kwargs)
  File "/Users/takanori_is/Developer/Workspace/Zenn/workspace/fire-is-one-of-python-library-for-creating-cli/.venv/lib/python3.6/site-packages/click/core.py", line 781, in main
    with self.make_context(prog_name, args, **extra) as ctx:
  File "/Users/takanori_is/Developer/Workspace/Zenn/workspace/fire-is-one-of-python-library-for-creating-cli/.venv/lib/python3.6/site-packages/click/core.py", line 698, in make_context
    ctx = Context(self, info_name=info_name, parent=parent, **extra)
TypeError: __init__() got an unexpected keyword argument 'name'

関数に name 引数を与えて動作確認しようとしてもエラーになってしまう。

一方、Fire の場合はそのまま REPL でも呼び出すことができる。さらに、スクリプトを実行するときに --interactive オプションを指定することで、直接 REPL に入ることができる(今回のように、Fire 自体にオプションを渡すときは -- で区切る)。

$ python ./hello_fire.py -- --interactive
Fire is starting a Python REPL with the following objects:
Modules: fire
Objects: component, hello, hello_fire.py, result, trace

Python 3.6.6 (default, Mar 23 2020, 11:51:32)
>>> hello
<function hello at 0x103f81ea0>
>>> hello('World')
Hello World!

実行例を見て分かる通り、--interactive オプションで起動した REPL 環境では、必要なモジュールが自動でインポートされているので、毎回 import を入力する必要がない。これだけで開発中のストレスがだいぶ減る。

ライブラリの動作確認にも便利

すこし前にも書いたが、Fire は Python インタプリタの -m でロードするだけでも使うことができる。これと Fire がサポートするさまざまな呼び出し方法を組み合わせると、既存ライブラリの動作確認も簡単にできてしまう。

たとえば、画像処理ライブラリとして有名な Pillow を試してみたい、としよう。

公式のチュートリアルも充実しているので、Python の REPL で試すこともできるが、画像ファイルのパスを手入力したり、変換結果を確認するために REPL とシェルと行き来するのも多少面倒だ。

Fire を使うと、コマンドラインから動作確認ができる。

$ python -m fire PIL.Image open ./cat.jpeg - format
JPEG

これは以下のコードとほぼ等価である。

import PIL

im = PIL.Image.open('./cat.jpeg')
print(im.format)

また、適宜 --help を表示すれば、呼び出せるメソッドやプロパティが一覧されるので便利だ。

$ python -m fire PIL.Image open ./cat.jpeg --help
NAME
    PIL.Image open ./cat.jpeg

SYNOPSIS
    PIL.Image open ./cat.jpeg - GROUP | COMMAND | VALUE
...
COMMANDS
    COMMAND is one of the following:

     alpha_composite
       'In-place' analog of Image.alpha_composite. Composites an image onto this image.

     close
       Closes the file pointer, if possible.
...
VALUES
    VALUE is one of the following:

     bits

     category

     custom_mimetype
...

Fire と click の使い分け

今回、Fire を試してみて「開発中に活躍するライブラリだな」と感じた。

書き捨てのスクリプトであれば Fire のまま使いつづけてもいいが、エンドユーザー向けに提供するコマンドラインツールであれば、最終的には(パラメータのチェックやヘルプ実装が柔軟な) click で実装するのがよさそうだ。

  1. まずは実現したいタスクを処理する関数/クラスを実装する
  2. Fire で開発者向けのコマンドラインインターフェースを用意して、インタラクティブな開発を進める
  3. 当面の動作確認が終わったら、1 の関数/クラスを対象に自動テストを作り、テスト駆動開発に移行する
  4. 最後に、1 の関数/クラスをラップする形でエンドユーザー向けのコマンドラインインターフェースを click で実装する

もしも、ぼくが今後、エンドユーザー向けにコマンドラインツールを開発するなら、このような手順で進めるだろう。