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エンジニアはなぜ病むのかについて考えてみる

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はじめに

本稿では、エンジニアが精神的に消耗してしまう背景にある「構造」について考察する。

よくある「働きすぎ」や「自己管理能力不足」といった説明ではなく、なぜそれが起きてしまうのか、その前段にある構造的な要因に目を向けたい。

なお、ここではあえて「こうすれば解決できる」という処方箋の提示は行わない。

問題の構造を認識し、同じような苦しみを抱える他者への想像力を持つこと。それが、エンジニアとして健やかに働くための第一歩であると考える。

要因1:報連相がしんどい

エンジニアが現場で感じるしんどさにはいくつかのパターンがあるが、報連相の難しさはその中でもよく見られるひとつだ。

背景にはいくつかの構造的要因がある。

  • リモートワークによる非同期・非対面化
    雑談の機会が減り、情報の“空気感”が共有されにくい。

  • 開発現場の多様性
    価値観、性格、仕事の進め方がバラバラな人が集まりやすく、共通ルールが見えにくい。

  • ツールの乱立と変化
    Slack、Jira、Notion、GitHub、Confluence……どれで何を報告するかの基準が曖昧。

このような環境では、

  • どのくらいの粒度で報告するのが適切か?
  • 誰をCCに入れるべきか?
  • どの方向に報告を投げるべきか?

といったことすら判断が難しくなる。

これらが曖昧なまま放置されると、報連相そのものがストレスになる。
迷いながら報告して、無視されたり、逆に「なんで今さら言うの?」と詰められたりすると、もう誰も報告しなくなる。

→ ここで脱落者が多数出る。そして、孤独感やチーム内での疎外感を感じるようになる。


要因2:目に見えない仕事は“なかったこと”にされがち

利害関係者との要求調整、インフラ整備、CI/CD改善、ドキュメントの整備、調査、設計のブラッシュアップ……。

たとえば、CIのエラーを防ぐための細かな設定変更や、DBのインデックス最適化などは、問題が起こらないことで“気づかれない”性質を持っている。

こういった目に見えない仕事は、誰かがやってくれているからこそ、プロジェクトが安定する。
でもそれが可視化されないままだと、評価もされず、感謝もされず、存在しなかったかのように扱われてしまう。

→ このリアクションの薄さが職務肯定感を奪っていく。


要因1・2の蓄積によって:職務肯定感が下がるループに突入する

職務肯定感が下がると、どうなるか。

  • 「どうせ提案しても意味がない」
  • 「評価されないから、何もしない方がいい」
  • 「自分の仕事は誰にも必要とされていない」

こんな思考が頭を支配していく。

そして気づかぬうちに「やらされている仕事」になり、ついには「この状況は○○のせいだ」という他責のサイクルに突入する。

もし他責のサイクルに入ったと感じたら

仮に自分がしんどいと感じているなら、同じ現場にいる他のメンバーも同じように感じている可能性は高い。

つまり、「あの人も、自分と同じように苦しんでいるかもしれない」という想像は、現場で起きている空気感の理解に役立つかもしれない。


おわりに

エンジニアが病む理由は、必ずしも仕事がハードだからとは限らない。
構造的に孤立しやすく、感謝されづらく、誤解されやすいポジションだからこそ、病む。

この問題に対して、自己管理能力だけで何とかしようとするのは酷かもしれない。

まず必要なのは、目の前で起きていることの「構造」を把握すること。
構造が見えれば、納得できる部分も増えるし、無力感の根っこにもアプローチしやすくなると筆者は考える。

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