AUTOSARとは
はじめに
この文書は自動車のECUに多く適用されているAUTOSAR規格について概要をまとめています。
自動車のソフトウエア開発に初めて関わる人の参考になれば幸いです。
AUTOSARとは
AUTOSAR(AUTomotive Open System Architecture)は自動車業界のグローバル開発組織です。
車載ソフトウェアの仕様の標準化を行っています。
標準化によりソフトウエアシステムをOEMとサプライヤ間で開発、分散設計を容易にすることを目的としています。
パートナーシップ
AUTOSARの会員(partners)は以下の6種類に分類されています。
- 中核会員(core partners)
組織の運営、管理を行う。仕様の決定権がある。 - 戦略会員(strategic partners)
中核会員、上級会員と共に仕様を策定する。 - 上級会員(premium partners)
策定中の仕様を作成する(大企業向け)。 - 開発会員(development partners)
策定中の仕様を作成する(中小企業向け)。 - 準会員(associate partners)
策定された仕様へのアクセス、利用ができる。 - 参加者(atendee)
研究機関等が参加し、仕様の策定に関わる専門知識を提供する。
AUTOSARの会員は年々増加し300社を超えています(2021年時点)。
出典: AUTOSAR Introduction - Part 1
STANDARDS
AUTOSARで標準化されている規格は以下の5種類があります。
出典: AUTOSAR standards
-
CLASSIC PLATFORM (CP)
Classic Platformはリアルタイム性と安全性に厳しい制約のある組込みシステム向けのAUTOSARソリューション。 -
ADAPTIVE PLATFORM (AP)
CASEなどを実現するための高性能コンピューティング向けのAUTOSARソリューション。 -
FOUNDATION (FO)
Classic PlatformとAdaptive Platformの共通な仕様を定義している。
例えばバスのプロトコルや方法論の一般的な側面について記載されている。 -
ACCEPTANCE TESTS FOR CLASSIC PLATFORM (AT)
Classic Platform向けのバスレベル及びアプリケーションレベルのシステムテストの仕様書。
アプリケーションソフトウエアコンポーネントと通信に関してAUTOSAR stackの振る舞い検証する。 -
APPLICATION INTERFACES (AI)
Classic Platform向けのアプリケーションインターフェースに関する標準仕様書。
この中でもCP, APが主要な開発規格です
CPの仕様は成熟しており、APが主な開発対象になっています。
Classic PlatformとAdaptive Platformの違い
Classic PlatformとAdaptive Platformの違いは以下の表のようになります。
Adaptive Platformが単純にClassic Platformの上位互換というわけではないため、各ECUの要求に合った仕様が使用されることが想定されています。
Classic Platform (CP) | Adaptive Platform (AP) | |
---|---|---|
OS | OSEC/VDX OSベース | POSIXベース |
開発言語 | C | C++ |
アプリケーションの実行 | ROM上で直接実行 | ROMなどからRAMにロードしてから実行 |
メモリ空間 | 単一アドレス空間で全ての処理を実行 | アプリケーション毎に仮想アドレス空間を用意して実行 |
リアルタイム性要求 | 高(マイクロ秒単位) | 中~高 (ミリ秒単位) |
演算能力 | 低(~ 1000 DMIPs) | 高(> 20,000 DMIPs) |
処理実行スケジューリング方式 | 固定タスクスケジューリング | 動的タスクスケジューリング |
通信 | シグナル通信(CAN/CAN FD、LIN、FlexRay) | サービス指向型通信 (ECU間ではSOME/IPプロトコルなど) |
安全面の要求 | ASIL Dまで | ASIL B~Dまで |
実行時のソフトウェア更新 | 不可能 | 可能 |
想定用途 | 従来型の制御系ECU | 自動/自律運転で追加されたECUやゲートウェイ/ドメインコントローラー |
引用:eSol Marketing Offcial Blog, witz AUTOSAR Adaptive Platformとは
AUTOSARを導入することのメリット
AUTOSARを導入することでプラットフォームベース開発による以下のようなメリットを得ることが出来ます。
- アプリケーションの部分がハードウエアの依存する部分を依存しないようにできる。
- 横のレイヤー毎に並行開発ができるので、開発機関の短縮ができる。
- ソフトウエアの再利用性が高まり、開発コストを削減及び品質の向上ができる。
出典: AUTOSAR Introduction - Part 1
また、業界標準のAUTOSARを使用することで以下のようなメリットが得られます。
- 各社間のプラットフォームが統一されるので、すり合わせの工数削減ができる。
- 共通化された部分については各ベンダーから設計開発ツールがリリースされているので、開発コストを削減できる。
参考資料
Wikipedia AUTOSAR: Link
AUTOSAR About : Link
Vector はじめてのAUTOSAR: Link
eSol Marketing Offcial Blog : Link
witz AUTOSAR Adaptive Platformとは : Link
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