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(初心者向け)Pythonで学ぶオブジェクト指向プログラミング OOP

2025/03/13に公開

オブジェクト指向プログラミング(OOP)とは?

オブジェクト指向プログラミング(OOP)は、ソフトウェア開発における設計思想の一つで、データとそれに関連する操作を「オブジェクト」としてまとめ、プログラムを作る手法です。​これにより、コードの再利用性や保守性が向上し、複雑なシステムでも効率的に開発・管理することが可能となります。

なぜオブジェクト指向が難しいのか

概念としては知っていても、その具体的な活用方法やメリットを理解できていないパターンが挙げられます。
特に、従来の手続き型プログラミング(上から順番に実行して構築する方法)に慣れている人にとって、オブジェクト指向の考え方は抽象的で難解に感じると思います。​
また概念を理解していても、実際のプログラミングにおいてどのように適用すれば良いか分からない、または適切に設計できない場合があると思います。
本記事は、こうした難しく感じるプログラミング初心者を救うきっかけになればと思って書きます。

オブジェクト指向を学ぶステップ

オブジェクト指向を効果的に習得するためには、以下の順序で学習を進めることが良さそうと思います。
オブジェクト指向と密接に関わるドメイン駆動の実践は、挫折する恐れがあるため、一番最後でいいと思います。
異論はガチで認めます。

  1. 基本的なコーディングスキルの習得:​条件分岐やループ、配列処理、標準入出力など、プログラミングの基礎を習得する。​
  2. オブジェクト指向の学習:​クラスやオブジェクトの概念、カプセル化、継承、ポリモーフィズムなどの基本原則を学ぶ。​
  3. デザインパターンの学習:​過去の偉人たちが編み出したベストプラクティス(デザインパターン)を学び、再利用性の高いコードを書く技術を身につける。​
  4. テスト駆動開発(TDD)の実践:​テストを先に書き、そのテストをパスするコードを書くことで、バグの少ない堅牢なソフトウェアを開発する手法を習得する。​
  5. ドメイン駆動開発(DDD)の学習:​ビジネスドメイン(業務領域)の知識をソフトウェア設計に反映させることで、現実の問題に即した柔軟なシステムを構築する技術を学ぶ。

オブジェクト指向プログラミングを理解するための3つの重要な概念

オブジェクト指向プログラミングを実践する上で、次の3つの重要な概念が存在します。
以下の3つは特に重要なので、ぜひ空で言えるレベルで覚えておきましょう。

  1. カプセル化(Encapsulation)
  2. ポリモーフィズム(多様性)(Polymorphism)
  3. 継承(Inheritance)

それぞれの概念を簡単に解説します。

カプセル化(Encapsulation)

データとそれに関連する操作を一つの単位(クラス)にまとめ、外部から直接アクセスできないようにすることで、データを安全に保護します。

Pythonにおいて完全に外部からのアクセスを防ぐ方法は存在せず、ダブルアンダースコア(__変数名)を使った名前マングリング(外部からアクセスしにくくする仕組み)を利用します。

ポリモーフィズム(Polymorphism)

ポリモーフィズムとは、「同じメソッドを持った複数の異なるクラスが、それぞれ異なる動作をする」という特性です。
これを実現するための具体的な方法として「インターフェース(Pythonでは抽象基底クラス)」を使用します。

インターフェースは、クラスが実装すべきメソッド群を事前に定義し、異なるクラスでも共通の操作を持つことを保証します。

継承(Inheritance)

既存のクラスの変数やメソッドを新しいクラスに引き継ぎ、再利用性を高めます。ただし、継承の多用はコードの複雑化を招く可能性があるため、本当に必要な場合のみ利用しましょう。

以下では、カプセル化、インターフェース、継承について詳しく解説し、それぞれのPythonの実装例を紹介します。


カプセル化(Encapsulation)

カプセル化とは?

改めて一言でいうと、
カプセル化とは、データ(属性)を外部から直接変更できないようにし、特定のメソッド(操作)を通じてのみアクセスできるようにする仕組みです。

  • メリット
    • データの誤操作を防ぐ(適切なメソッドを通してのみ変更可能)
    • クラスの内部構造を隠蔽し、変更の影響を最小限に抑える

Pythonでのカプセル化の実装

class BankAccount:
    def __init__(self, balance):
        self.__balance = balance  # ダブルアンダースコアで名前マングリング(外部からのアクセスを抑制)

    def deposit(self, amount):
        if amount > 0:
            self.__balance += amount
            return f"Deposited {amount}. New balance: {self.__balance}"
        return "Invalid amount"

    def withdraw(self, amount):
        if 0 < amount <= self.__balance:
            self.__balance -= amount
            return f"Withdrew {amount}. Remaining balance: {self.__balance}"
        return "Insufficient funds"

    def get_balance(self):
        return self.__balance

# インスタンス化とテスト
account = BankAccount(1000)
print(account.deposit(500))        # Deposited 500. New balance: 1500
print(account.withdraw(200))       # Withdrew 200. Remaining balance: 1300
print(account.get_balance())       # 1300

# 名前マングリングでアクセス可能(非推奨)
print(account._BankAccount__balance)  # 1300(直接アクセスは避けること)

ポイント:

  • __balance はPythonの名前マングリングにより account._BankAccount__balance のように変換される。
  • 直接アクセスは推奨されず、get_balance() などのメソッド経由でアクセスするのが適切。

インターフェース(Interface)

インターフェースとは?

インターフェースとは、クラスが実装すべきメソッド群を定義するものです。

  • メリット
    • 開発者が「どのメソッドを実装すべきか」を明確に理解できるため、実装漏れを防ぐことができます。
    • 異なるクラスが共通のインターフェースを持つことで、後から機能を追加するときも、どのクラスにどんなメソッドを追加するべきかが明確になります。
    • 新しいクラスを追加するときも、インターフェースを通じて「決められたメソッド」を実装するだけなので、一感のあるコード設計を維持できます。

Pythonでのインターフェース(抽象基底クラス)

Pythonでは、インターフェースという専用の仕組みはなく、代わりに抽象基底クラス(ABC: Abstract Base Class)を使って実装を強制します。

from abc import ABC, abstractmethod

class Animal(ABC):
    @abstractmethod
    def speak(self):
        pass

class Dog(Animal):
    def speak(self):
        return "Woof!"

class Cat(Animal):
    def speak(self):
        return "Meow!"

# ポリモーフィズムの実践例
animals = [Dog(), Cat()]
for animal in animals:
    print(animal.speak())
    # Woof!
    # Meow!

ポイント:

  • ABC クラスを継承し、@abstractmethod を使うことで、具象クラス(Dog, Cat)が speak() メソッドを必ず実装することを強制できる。
  • もしDogやCatクラスがspeak()メソッドを実装していなければ、エラーでます。つまり、開発者がメソッドを忘れて実装漏れを起こすことを防ぐことができます。

継承(Inheritance)

継承とは?

継承とは、あるクラス(親クラス)の機能を別のクラス(子クラス)が引き継ぐ仕組みです。

  • メリット
    • 共通の機能を親クラスにまとめることで、コードの重複を減らせる。
    • 子クラスで追加の機能を拡張できる。

Pythonでの継承の実装

class Vehicle:
    def __init__(self, brand, model):
        self.brand = brand
        self.model = model

    def drive(self):
        return f"{self.brand} {self.model} is driving."

class Car(Vehicle):
    def __init__(self, brand, model, doors):
        super().__init__(brand, model)
        self.doors = doors

    def honk(self):
        return "Beep beep!"

# インスタンス化とテスト
car = Car("Toyota", "Corolla", 4)
print(car.drive())  # → Toyota Corolla is driving.
print(car.honk())   # → Beep beep!

ポイント:

  • Vehicle クラスの drive() メソッドを Car クラスが継承。
  • Car クラスは honk() という独自のメソッドを追加。
  • super().__init__() を使って親クラスのコンストラクタを呼び出し。
  • 継承の多用は避け、まずはインタフェースを活用することを推奨します。

まとめ

概念 説明 Pythonでの実装例
カプセル化 データを外部から直接変更できないように保護する仕組み(名前マングリングを利用) __変数名 を使用し、メソッドでアクセス
インターフェース(抽象クラス) 同一メソッドを複数クラスが異なる動作で実装(抽象基底クラスで実現) ABC クラスと @abstractmethod を使用
継承 親クラスの機能を子クラスが引き継ぎ、コードを再利 super().__init__() で親クラスを呼び出す

オブジェクト指向プログラミング(OOP)は、複雑なアプリケーションを整理しやすくする重要な設計手法です。
OOPの導入部分だけ本記事では詳しく説明させていただきました。

参考

Python公式ドキュメント:抽象基底クラス
Python公式FAQ: 名前マングリング

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