NotebookLM でスクラム開発を布教する
現在、所属チームではスクラム開発を実施しています。その中で以下のような課題感じる場面がありました。
- スクラム未経験のメンバーが参入した際にスクラム開発についてのキャッチアップコストがかかる
- 現状の開発の進め方がスクラムの原則に沿っているのか分からなくなる
NotebookLM を使用すれば AI に質問するだけでこれらの課題を解決できるのではないかと思い試してみました。
NotebookLM とは?
NotebookLM は、Google が開発した AI 搭載のノートアプリです。
PDF 、 Google ドキュメント、ウェブサイトなどを取り込み、資料を AI が要約して質問に答えます(無料で使用可能)。
スクラムガイドを読み込ませてみる
スクラムの定義がガイドライン化されたドキュメントであるスクラムガイドをソースとして読み込ませてみます。
上記 PDF をダウンロードして、ソースとして読み込ませます。
質問をしてみます。
スプリントプランニングについて教えて
回答は以下の通りです。
スプリントプランニングについてですね。提供されたスクラムガイドのソースに基づいて説明します。
スプリントプランニングは、スプリントの起点であり、スプリントで実行する作業の計画を立てるイベントです。この計画は、スクラムチーム全体の共同作業によって作成されます。
スプリントプランニングの目的は、「なぜ」(Why)、「何を」(What)、そして**「どのように」(How)**という3つのトピックに対応することです。
1.
トピック 1:このスプリントはなぜ価値があるのか?
◦
プロダクトオーナーは、今回のスプリントでプロダクトの価値と有用性をどのように高めることができるかを提案します。
◦
その後、スクラムチーム全体で協力して、そのスプリントになぜ価値があるかをステークホルダーに伝えるスプリントゴールを定義します。
◦
スプリントゴールは、スプリントプランニングの終了までに確定する必要があります。この「Why」に重点を置くことは、2020年版ガイドで追加された変更点の一つです。
2.
トピック 2:このスプリントで何ができるのか?
◦
開発者は、プロダクトオーナーとの話し合いを通じて、プロダクトバックログから今回のスプリントに含めるアイテムを選択します。
◦
このプロセスの中で、スクラムチームはプロダクトバックログアイテムのリファインメント(分割・定義)を行う場合があり、これによりチームの理解と自信が高まります。
◦
開発者は、過去のパフォーマンス、今回のキャパシティ、完成の定義の理解を深めることで、スプリントの予測に自信を持てるようになります。
3.
トピック 3:選択した作業をどのように成し遂げるのか?
◦
開発者は、選択したプロダクトバックログアイテムごとに、完成の定義を満たすインクリメントを作成するために必要な作業を計画します。
◦
これは多くの場合、プロダクトバックログアイテムを1日以内の小さな作業アイテムに分解することによって行われます。
◦
どのように行うかは、開発者だけの裁量とされます。
これらのトピックに対応することで作成される計画を、スプリントゴール、スプリント向けに選択したプロダクトバックログアイテム、およびそれらを届けるための実行可能な計画をまとめて、スプリントバックログと呼びます。スプリントバックログは開発者による、開発者のための計画であり、スプリント期間を通して更新されます。
スプリントプランニングには、プロダクトオーナーが最も重要なプロダクトバックログアイテムについて話す準備をします。スクラムチームは、アドバイスをもらうためにチーム以外の人間を招待しても構いません。
スプリントプランニングにはタイムボックスがあり、スプリントが1か月の場合、最大で8時間です。スプリントの期間が短ければ、スプリントプランニングの時間も短くなることが多いです。
2020年版スクラムガイドでは、スプリントプランニングの焦点として、従来の「What」と「How」に加えて、スプリントゴールとして言及される「Why」という3つ目のトピックに重点を置くようになりました。
スクラムガイドの目的は、スクラムの定義を含むフレームワークの各要素が特定の目的を持ち、全体的な価値や結果に欠かせないものであることを示すことです。スクラムガイドで説明されているスクラムフレームワークに適合するパターンやプロセスは存在しますが、それらはスクラムガイドの目的の範囲外であり、ガイド以外の場所で説明されています。
スクラムガイドを元に適切な回答がなされていそうです。
最近所属するチームで議論した内容で、もう少し突っ込んだ質問をしてみます。
ストーリーポイントをつけるかつけないかの議論をチームで実施しています。スクラムガイドの考えに基づいた見解をください
回答は以下の通りです。
チーム内でストーリーポイントを使うかどうかの議論をされているとのことですね。スクラムガイドの記述に基づき、この件に関する考え方を説明します。
まず、スクラムガイドは、スクラムの「ゲームのルール」として、フレームワークの核となる定義を提供しています。スクラムフレームワークの各要素には特定の目的があり、フレームワークの全体的な価値や結果に欠かせないものとされています。
しかし、スクラムガイドは、スクラムフレームワーク内で使用できる様々なプロセス、技法、手法については、ガイドの目的の範囲外であると明確に述べています。これらは状況に依存するため、ガイド以外のところで説明されている、としています。
ご質問の「ストーリーポイント」という言葉は、提供されたスクラムガイドの日本語版ソース中には直接登場しません。これは、ストーリーポイントがスクラムフレームワークそのものに必須の要素として定義されているわけではないことを示唆しています。
スクラムでは、「経験主義」と「リーン思考」に基づいており、知識は経験から生まれ、意思決定は観察に基づき、ムダを省き本質に集中します。予測可能性を最適化しリスクを制御するために、イテレーティブでインクリメンタルなアプローチを採用しています。また、スクラムの成功は、「確約」「集中」「公開」「尊敬」「勇気」という5つの価値基準の実践にかかっています。
スクラムチーム、特に開発者は、スプリントの計画(スプリントバックログ)を作成する責任があります。また、開発者はプロダクトバックログアイテムをスプリントに含める際に、プロダクトオーナーとの話し合いを通じてアイテムを選択し、必要な作業を計画します。この計画の中で、開発者は選択したプロダクトバックログアイテムごとに、完成の定義を満たすインクリメントを作成するために必要な作業を計画する責任を持ちます。作業規模の評価についても、作業を行う開発者が責任を持ちます。
どのくらい完了できるかを選択するのは難しい場合もありますが、開発者が過去のパフォーマンス、今回のキャパシティ、および完成の定義の理解を深めていけば、スプリントの予測に自信を持つことができるようになります。また、進捗の見通しを立てるために、バーンダウン、バーンアップ、累積フローなど、さまざまなプラクティスが存在することも述べられています。ただし、これらのプラクティスは経験主義の重要性を置き換えるものではないとされています。
スクラムフレームワークは意図的に不完全なものであり、スクラムの理論を実現するために必要な部分のみが定義されています。スクラムは実践する人たちの集合知で構築されており、ルールは詳細な指示を提供するものではなく、実践者の関係性や相互作用をガイドするものです。
これらの点を踏まえると、ストーリーポイントは、**開発者が作業規模を評価し、スプリントで完了できる作業量を予測し、計画を作成するためのツールやプラクティスの一つとしてスクラムフレームワークの中で利用され得るもの**と考えられます。それは、スクラムガイドが義務付けているものではなく、チームが自律的に選択し、採用するかどうかを決定できる範囲にあると言えます。
チーム内でストーリーポイントの使用について議論する際には、**そのプラクティスがチームの透明性、検査、適応といった経験主義の柱や、価値基準(確約、集中、公開、尊敬、勇気)を強化するかどうか、そしてチームの有効性を高め、プロダクトゴール達成や価値創出に貢献するか**という視点から検討することが重要でしょう。スクラムガイドは、具体的なツールや手法を指示するのではなく、チームがゴールを達成し価値を創造するための軽量級フレームワークを提供しているからです。チームが自律的に、最も効果的だと判断する手法を採用することが、スクラムの考え方に基づいていると言えます。
ストーリーポイントとという言葉はスクラムガイド上には存在していないので、それを踏まえた回答を行ってくれていることがわかります(勉強になる...)。
音声概要機能が面白い
本記事公開日である 2025/4/30 より日本語版の音声概要機能が使えるようになりました。
この機能ではポッドキャストのような会話形式でソースの情報について解説してくれるようになります。
上記のスクラムガイドの PDF をソースとして読み込ませたものを解説させてみました。
約 8 分間対話形式ででスクラムガイドについて流暢な日本語で解説してくれました。
内容もまともそうなので、スクラム未経験のメンバーが参入した際にはこれを聞いてもらうだけでも全体感を掴めそうです。
感想・まとめ
本記事では、Google の NotebookLM を活用してスクラム開発を学習する取り組みについて紹介しました。NotebookLM にスクラムガイドを読み込ませることで、スプリントプランニングやストーリーポイントといった具体的なトピックについて、スクラムガイドに基づいた的確な回答を得ることができました。
特に日本語版の音声概要機能は、ポッドキャストのような対話形式でスクラムガイドの内容を分かりやすく解説してくれるため、スクラム未経験者の効率的なキャッチアップに役立つのではないかと考えます。
また、スクラム開発ではチームの成熟と共にそのチームに合った開発の進め方のノウハウが蓄積されていきます。
そんなノウハウも NotebookLM にソースとして読み込ませることで、チームとしてのルールが浸透しやすくなったり、新しくチームに参加してきた人がチームのやり方をキャッチアップすることが容易になりそうです。
チームとして更にスクラム開発の練度を上げるためにも AI の活用をより一層推進していきたいです。
Discussion