なぜAIコーディング時代でも「ESLint」を手放せないのか?
AIエディタやコード補完ツールの急速な進化によって、私たちのコーディング環境は劇的に変わりつつあります。 「AIがあれば、もはや面倒な作業はすべて自動化できるのでは?」 と思われがちで実際にRules for AIにコーディング規約を追加することを推奨する記事が見られますが、実はそう単純ではありません。
結論から言えば、「ESLint」のような静的解析ツールは手放せないのです。なぜなら、AIにすべてを任せるのはAIの足を引っ張る行為だから。本記事では、AIとESLintの役割を整理し、どうすれば両者の強みを最大化できるのかを解説します。
🎯 1. AIにコーディング規約を守らせることは可能だが、得策ではない
多くの人が「AIは厳密なコーディング規約を守れない」と考えがちですが、実際にはプロンプトを工夫すれば、ある程度は規約を守らせることも可能です。とはいえ、AIには以下の特徴があります。
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✅ AIの強み
- 設計やアーキテクチャの提案、ベストプラクティスの学習
- 新しいアイデアや設計上のアドバイスをクリエイティブに出せる
- コードの生成・補完など、人の手間を減らす能力に優れる
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❌ ルール適用をすべてAIに任せる欠点
- 「インデントは2スペース」「import順はアルファベット順」などの厳密ルールを毎回守らせるには、細かい指令を繰り返す必要がある
- AIはルールが多すぎると性能が低下する 傾向にある
- それでも100%一貫する保証はなく、一度間違うと大量に修正が必要になる可能性
「AIならなんでもできる」という発想は間違いではないかもしれませんが、果たしてそれが“効率的”かどうかは別問題。ここで生きてくるのが、静的解析ツールであるESLintの役割です。
🎯 2. ESlintは厳密なルール適用のスペシャリスト
ESLintはJavaScript/TypeScriptコードの品質管理に特化したツールで、次のような役割を担っています。
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✅ コードの一貫性を強制
- 「未使用変数の禁止」「
console.log
の検出」「インデントやクォートルールの徹底」など、機械的に適用するルールを確実に守らせる
- 「未使用変数の禁止」「
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✅ CI/CDとの連携が容易
- プルリクエスト(PR)のたびに自動チェックを走らせ、違反があれば弾く
- 開発者が見落としても、ツールがブロックしてくれるのでヒューマンエラーを防げる
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✅ リソースの最適化
- ESLintの動作は比較的軽量で、設定ファイル(.eslintrcなど)で完結
- サーバリソースをほとんど消費せず、コマンド一発で多数のファイルを一括チェックできる
つまり、ESLintを使うことで「ルール適用」という機械的タスクを簡単かつ確実に行えるのです。AIに同じことをやらせるより、はるかに負荷が少なく効率的というわけです。
🎯 3. なぜAIコーディングでもESLintを手放せないのか? — 3つの観点
1. AIのリソースを“創造的な作業”に集中させるため
AIの強みは、繰り返しの単純作業よりも「新しい設計」や「高度な推論」 といった場面で活きます。厳密なルール適用はESLintに任せて、AIはアーキテクチャの提案やリファクタリングのアイデアなどにリソースを割いたほうが、開発効率と価値が高まります。
2. チーム全体のコードを統一できるのは静的解析ツール
AIを導入している人、していない人、さまざまな開発者がいるのが現実です。ESLintなら全員分のコードを同じ基準でチェックできるため、プロジェクト全体の一貫性を保ちやすいのです。
3. CI/CDで自動化しやすい
ESLintはCI/CDパイプライン(例:GitHub Actions, Jenkins)と連携し、プルリクエスト単位で「規約違反がないか」を機械的にチェックできます。AIにはこの「自動ブロック」機能がないので、最終的な品質ゲートとしてESLintは欠かせない存在です。
🎯 4. AIとESLintの共存
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「Rules for AI」には設計・構造のガイドを記載
- 例:「API通信は
services/api.ts
経由」「特定の処理はユーティリティに切り出す」など - AIが提案するときにプロジェクト特有のアーキテクチャを意識してくれる
- 例:「API通信は
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AIにコード生成・補完をさせる
- 「この機能を追加したい」「既存コードをリファクタリングしたい」など、クリエイティブな要望をAIに投げる
- コーディング規約よりも “設計レベル” の支援を頼むのがポイント
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人間が最小限の調整を加える
- AIが作ったコードがビジネス要件に合うか、ドメイン固有のルールを満たしているか確認
- 必要に応じて修正
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ESLint/Prettierでコード規約やフォーマットを一括適用
- インデントやクォート、
console.log
禁止など、機械的なルールをすべて洗い出す - 自動修正(
--fix
オプションなど)を利用し、チーム全体で一貫したスタイルを保つ
- インデントやクォート、
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CI/CDで最終チェック
- プルリクエストやコミット時にCI環境でESLintを走らせ、もし違反があればPRをブロック
- AIと人間が見落としたルール違反を確実につぶす
このフローなら、AIのリソースをフル活用しながら、ESLintで“機械的なルール”を強制的に守らせることができます。
🎯 5. 結論:厳密なルール適用はESLintに任せ、AIは創造的タスクに集中させよう
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AIにルール適用をさせるのはリソースの無駄
- 繰り返しやフォーマットチェックは静的解析ツールが得意
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ESLintはチーム全体のコード品質を機械的に担保
- PR時の自動ブロックなど、人の手を介さずに100%一貫性を維持できる
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AIは設計・アーキテクチャ・リファクタリング提案に注力
- 新しいアイデアや複雑なロジックの見直しなど、付加価値の高いところに使う
開発の最終ラインを守るのはESLint、その前段階の“アイデア生成”をAIに任せる―― これこそが、現代の最適な開発スタイルです。ぜひ、AIとESLintを併用して、効率と品質を同時にアップさせましょう。
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