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SoRを再定義してみる - SI屋さんの雑記

2024/08/06に公開

ベテランのSI屋さんが考えたことを書き残した雑記です。
SI屋さんにしか通じない単語を説明なしに使うので素人は要注意です。
いろいろな意見を欲しているので、つっこみは大歓迎です。
他の記事はSI屋さんの雑記からどうぞ。

概要

  • SoRを「記録のシステム」と呼ぶのは不当ではないか?
  • SoRの目的は「業務の統制」であり「記録」は手段
  • SoRは「業務統制のシステム」と呼ぶのが妥当

はじめに

こちらの本を読んで「SoR」という用語を再定義してみたくなったので書いた記事です。
データモデリングと基幹システムに言及した(たぶん)珍しい本です。経験的に学んできたことが明文化されており非常にためになりました。SIerの方は読んだほうが良いです。まじで。
https://gihyo.jp/book/2024/978-4-297-14010-6

1. 一般的なSoRとSoEの説明

googleでSoRとSoEを調べると以下のような「記録のシステム」と「繋がりのシステム」という対比の説明が出てきます。一般的な定義だと思いますし、私も長い間そのように認識してきました。

SoE(Systems of Engagement)は、「繋がりのシステム」を意味します。 これはユーザと企業をどのように繋いでいくかという点を重視したシステムです。 一方SoR(Systems of Record)は、「記録のシステム」を意味します。

2. SoRの説明に対する違和感

ただ、SoRとして位置づけられる基幹システムを「記録のシステム」と呼ぶことに昔から小さな違和感を覚えていました。
この本を読んで、あらためて違和感の正体を考えてみたところ「記録」というのは実現手段であって目的ではいからだ。と、考えるに至りました。

3. SoRって何のシステム?

では、SoRは何のシステムなのでしょうか。この書の言葉を借ると「企業活動を指示・制御するシステム」です。ひとことで言うと「業務統制のシステム」あたりでしょうか。
この整理でSoRとSoEを比較するとこうなります。

比較項目 SoR SoE
目的 業務の統制 繋がりの強化
手段 データを正確に記録する(目的ではない) ユーザー接点(UI/UX)を向上させる
端的に言うと 業務統制のシステム 繋がりのシステム

4. 他の観点での比較

SoRを再定義したので、あらためて様々な観点で比較してみます。
従来のSoR/SoEの対比と大きく異なる内容ではありませんが、業務を統制するという色をより濃く表現しています。SoRにとってのユーザー(システム利用者)の扱いは、業務を遂行する上での歯車であって主役ではありません。

比較観点 SoR SoE
目的 業務の統制 繋がりの強化
価値のあること 業務が進む(仕掛が減る ) ユーザーがゴールに到達する
ユーザーの扱い 業務を進めるオペレーター 主役
受益者 株主等の会社のオーナー ユーザー自身
大事なこと 業務設計 UI/UX設計
じゃない toB(法人向けシステム) toC(一般消費者向けシステム)
例えば① 会計システム CRM(顧客管理システム)
例えば② ECサイトの受発注システム 社内のナレッジ共有システム

5. おわりに

SoRとSoEの分類は2値ではなく、両方の性質を兼ね備えるシステムも多くあります。
例えば「社員が使う交通費精算システム」はSoR/SoE両方の要素があり、どちらを指向することもできます。(使いにくいのをSoR、使いやすいのをSoEと言ったりします。そして、この言い当てはSoEの性質を考えると妥当です。)
私が考えるSoRとSoEという分類の用途は、システムの指向性を端的に伝えるための表現の1つです。このため、コンテキストのない状況で優劣を比較するのは意味がないことでしょう。

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