基幹システムとは何か? - SI屋さんの雑記
ベテランのSI屋さんが考えたことを書き残した雑記です。
SI屋さんにしか通じない単語を説明なしに使うので素人は要注意です。
いろいろな意見を欲しているので、つっこみは大歓迎です。
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概要
- 「基幹システム」とは事業活動の統制と記録を行うシステムである
- 事業活動に関係するため会社ごとに基幹システムの指す範囲は異なる
はじめに
「基幹システム」という言葉は、IT業界や企業経営の現場でよく使われますが、その定義は意外と曖昧です。
長い間SIerで働いていても「基幹システム」とは何か聞かれると、答えに窮する方は多いのではないでしょうか?
一般的にはERPシステム、会計システム、人事システムなどが「基幹システム」と呼ばれる一方で、業務に欠かせなかったとしてもメールやチャットなどのコミュニケーションツールは基幹システムとは呼ばれません。この違いを私なりに説明していこうと思います。
私なりの定義
いきなり結論ですが、私が考える「基幹システム」とは「事業活動の統制と記録を行うシステム」を指し、具体的には以下の3つの要素を満たすシステムです。
- 事業活動に直結している
- 統制機能を持つ
- 記録機能を持つ
各要素の説明
1. 事業活動に直結している
「定款」に記載している事業を実現するために必要な機能を有している、あるいは、会社の存続に必要な機能を有しているシステムが該当します。
例えば、販売管理システムは受注から出荷、請求までのプロセスを管理し、企業の売上に直結しています。また、人事システムも会社の存続には不可欠です。
一方で、メールシステムやチャットツールはコミュニケーションを円滑にするためのツールであり、直接的に事業活動を支えるものではありません。会社によっては業務として他社との連携に使用していることがありますが、後述する統制機能を持たないことがほとんどであり基幹システムとはみなされません。
2. 統制機能を持つ
業務のルール、承認フロー、権限管理など、事業活動をコントロールする機能を持つシステムが該当します。
例えば、受発注システムでは、受注の際に在庫確認や価格設定、承認フローなどの統制機能が組み込まれており、これにより業務が適切に遂行されることを保証します。
3. 記録機能を持つ
これは、システムであれば当たり前のことに思えるかもしれませんが非常に重要な機能です。
企業の事業活動における台帳として、事業活動の結果を正確に記録し、後から参照・分析できる形で保管します。
記録だけであればファイル共有システムはデータの保存と共有を目的としておりこの定義だけは満たします。しかし、業務を統制する機能を持たないため、基幹システムとはみなされません。
結論
つまり、基幹システムとは特定の機能を持ったシステムを指す呼称ではなく、企業の事業活動において重要な役割を果たすシステムを指す概念的な用語であると言えます。
このため、私の会社の基幹システムでやってることと、あなたの会社の基幹システムでやってることは違う、ということは普通です。
ここまで読んでいただいた方であれば、当たり前のことだと理解できるはずです。基幹システムは事業を統制するシステムであり、会社ごとに事業が異なるからです。
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