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朝会で何を話すべきか - アジャイル開発推考

2024/11/07に公開

ベテランのSI屋さんが考えたことを書き残した雑記です。
SI屋さんにしか通じない単語を説明なしに使うので素人は要注意です。
いろいろな意見を欲しているので、つっこみは大歓迎です。

概要

  • 「昨日やったこと」「今日やること」「課題」の3点報告はアンチパターンでは?
  • スプリントゴールに向けたカイゼンが起こる朝会を目指すべき

1. はじめに

多くのアジャイルチームの朝会では「昨日やったこと」「今日やること」「課題」をメンバーが順番に話していると思います。しかし、このやり方は意味のない進捗報告の場に陥りやすいと考えるようになりました。
この3点方式は、昔のスクラムガイドの朝会の進め方の例として記載されていました。しかし、2020年に公開された最新のスクラムガイドでは削除されています。たぶん、良くない方法だったのでしょう。
では、朝会では何を話すべきなのでしょうか?

2. アンチパターン

私が朝会の意味がないなーと感じるのは以下のような状況です。

  • メンバーの発言内容が毎日同じ
    • 「〇〇機能の実装やります」が3日続くなど、状況や見込みがわからない状態です
    • もともと複数日想定のタスクだったのか、なんらかの問題がずっと解決していないのか、毎日違う問題に遭遇しているのか、何もわかりません
    • 進捗率xx%がつけば少しマシですが、他のメンバーに30%と60%の差がわからないのであれば無意味です
    • 「昨日はメソッド10個のうち5個書きました、今日は残りの5個書きます」ぐらいの具体性があれば少し許せるかもしれません
  • 他のメンバーに無関心
    • 発言者に絡むのは管理者やリーダーのみで、他のメンバーのタスクに興味がない状態です
    • 他メンバーのタスクに興味が無いということは、タスクを理解していないか、チームがゴールに到達できるかに関心を持てていないということであり、いずれも非常に不健全な状態です
  • スプリントゴールに誰も言及しない
    • 個々のタスクのみが議題となっていてチーム全体のゴールを確認しない状態です
    • 今やっている作業で本当にゴールに向かっているのか、状況が変わって目指すゴールが変わってないか、日々確認したほうが良いです
  • 進捗確認となっている
    • 進捗を確認すること自体は大事で良いのですが、無関心やゴール不在の状態です
    • よく問題とされる「進捗確認になっている」というのは、上記にあげたような「無関心」や「ゴール不在」が複合して発生している状態なのではないかと思います

3. 目指す姿

ダメそうな朝会をあげたところで、今度は理想的な朝会について考えてみます。
原典かつ答えだと思うのですが、最新のスクラムガイドを読んでみましょう。

「スプリントゴールの進捗に焦点をあて、必要な構造とやり⽅を選択できる。」 これです。

朝会で確認するのは「スプリントゴールへの進捗」であって「タスクの進捗」ではないのです。
当初決めたタスクが順調に消化できていたとしても、スプリントゴールに向かってなければ意味が無いので立ち止まってタスクを再構築すべきなのです。また、タスクが妥当であるのならば、チームで知恵を絞ってやり方を選択すべきなのです。

良い状態だなと私が思える朝会の場は、以下のような状況です。

  • 発言者のタスクの進め方、完了時状態、作業上の大きな課題などが理解できる
  • 発言者に対して、他のメンバーからやり方のカイゼン提案がでる
  • 直近のイベントや成果に応じたスプリントゴールへの見直しの提案がメンバーからでる
  • 朝会の前と後でカイゼンが起こっている

4. 朝会で話すべきこと

理想的な朝会のために、チームメンバーは何を話すべきなのでしょうか?
私が有用と考えるのは以下のような物です。

  • howを話す
    • 「〇〇機能の作成にあたって☓☓機能を見ながら作ります」
    • 「URL規約や△△機能を参考にurl設計を最初にやります」
    • 上記のようにhow(やり方)を具体的かつ端的に話すことで、他メンバーが内容を理解して意見できるようにします
    • 「チケット番号〇〇」や「××機能開発」などでは、到底カイゼンにつながりません
  • 具体的な成果物名と所要時間を話す
    • 「XYZサービスクラスと関連するunitテストを午前中に作ります」
    • 「ZZZの実装方法がよくわかっていないので、2時間ぐらいでwebで調べて結果のまとめ資料を書きます」
    • 上記のように成果物と想定作業時間を話すことで、作業内容、順番の是非や成果物のレベル感の祖語に気が付ける可能性があります
  • シェア/相談するタイミングを話す
    • 「まずはテーブル変更のDDLを書いてシェアするので見てほしいです」
    • 「午前中に××機能の説明を読むので、午後1にどなたか壁打ち付き合ってください」
    • 意見を欲しいタイミングを明確に伝えることで周りのメンバーが動きやすくなります、「最初からモブプロしようか?」などの提案を受けられることもあるでしょう
  • 全部を話さない
    • 上記のような粒度で、自分がやろうとしているタスクのすべてを話すと大変だし時間が足りなくなるでしょう
    • このためMVP(一番たいへんそう/一番おもしろそう)を選らんで話すようにします
  • スプリントゴールを確認する
    • 朝会の最初にスプリントゴールを再確認してもよいと思います
    • 朝会の最後にスプリントゴールに到達できそうかポーカーをやるのもよいと思います

5. 自分の行動を変える具体的なアイデア

朝会をカイゼンするために、自分1人でもできることを始めましょう。

  • 事前に考えておく(書く)
    • 朝会直前になって話す内容を考えるのはよくないです
    • 前日の終了時でも朝の歯ミガキ中でもよいので、事前に考えるようにしましょう
  • 考えてなかった場合はあきらめる(考えてない他のメンバーを許容する)
    • もし、いろいろな事情で事前に朝会で共有する内容を考えられなかったとしても、他のメンバーが話している間に考えるのは悪手です。発言者の話に耳を傾けましょう
    • また、他メンバーが明らかに考え無しで臨んでいたとしても許しましょう(考えてないことを責めると無関心を助長しかねません)
  • 順調にいっていれば素直に喜ぶ
    • チームの進捗が良い、他メンバーが順調にタスクを消化できている状況を話したのであれば、肯定的な反応をしましょう(リモートの場合は大げさに喜ぶ)
    • チーム全体の状況や他メンバーの状況に関心があることを表明するチャンスです
  • 意見を求めてみましょう
    • 「私は××の手順で進めようと思います。良いやり方を知っている人は教えてください。」
    • このような感じで、他のメンバーの意見を引き出すような話をしてみるとよいでしょう
  • スプリントゴールへの到達について言及しましょう
    • ややハードルが高いのですが、このままでスプリントゴールに到達できるのか?という疑問をぶつけてみましょう(進捗が悪くてゴール未達に対する意見が咎められるようなチームは、朝会以前の問題が起きています)

6. チームの行動を変える具体的なアイデア

朝会が上手くいっていないチームでは、チームメンバーのマインドチェンジが必要になることが多いように思います。どのように行動を起こすべきでしょうか?

  • ふりかえりのKPTで
    • (形だけだったとしても)ふりかえりが行われているのであれば朝会の問題として声をあげましょう
  • 朝会記事をチャットでシェア
    • 雑談チャットが運用されているのであれば、この記事をポストしてみましょう(気軽に書き込めるかはチーム次第ですが。。。)
  • ファシリテーターがアジャイルイベントの冒頭や最後に紹介
    • あなたがSMやPO、チームを引っ張るベテランメンバーであるならば、アジャイルイベントの中で声を上げるとよいでしょう
    • 言いにくい場合はSMにこっそり相談するのが良いでしょう
  • スプリントゴールをみんなで作る
    • スプリントゴールをPOやリーダーのみで決めているのであれば、チーム全員で考えるようにしましょう
    • 誰かが作ったゴールは押し付けられた感がでてしまいます
  • 15分のタイムボックスは守れなくてもよい
    • 内容がクソなのにタイムボックスを守る意味はありません、朝会に手ごたえが感じられるなら延長してもよいはずです
    • 良い内容の朝会ができるようになってから、次に時間を守るという順番でいくべきでしょう

7. おわりに

少しでも良い朝会が運営できるように日々精進しております。

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