無料BIツールLooker Studioの可能性と限界
この記事について
BIエンジニア的なことを5年くらいやってきました。主にPower BIを使っていますが、たまにTableauやLooker Studioを使うこともあります。
Looker Studioを使った際に、予想以上にPower BI、Tableauとは異なる点が多かったので経験を踏まえた所感をまとめておきたいと思い、この記事を書きました。
なお、この記事では、手元のCSVやエクセルデータを元に、ダッシュボードを作る場合を想定しています。Google Cloudなどの契約はなく、Looker Studioもフリーバージョンを使う前提です。
Looker Studioとは
Googleが提供する無料のBIツールです。シンプルなUIで、Googleアカウントを持っていれば誰でも使える、初心者向きのBIツールだと思います。
利点
無料で使える
Googleを使っているクライアントであればすぐに使いはじめることができます。
有料ライセンスが不要なので、ライセンス付与のための予算確保や手続き、技術面での障壁が少なく、導入が容易です。
なお、社内ポリシーは要確認です。
Looker Studio | Power BI | Tableau | |
---|---|---|---|
作成 | 無料 | Power BI Desktopは無料 | ¥9,000 ユーザー/月 年間契約 |
共有/閲覧 | 無料 | ¥1,499 ユーザー/月 | ¥1,800 ユーザー/月 年間契約 |
※価格は執筆時点
Tableau の価格 (チーム & 組織向け)
Power BI:料金プラン | Microsoft Power Platform
シンプルなUI
TableauやPower BIに比べて、UIがシンプルで使いやすいと思います。機能が絞られているので、直感的に使えます。
また、Power BIに比べて、デフォルトのカラーパレットや表・グラフのデザイン、余白などが洗練されている印象です。
アクセス管理やレポートのシェアも、Google SpreadsheetやGoogle Slideと同じようなUIでできるので、Google製品に慣れていれば、とっつきやすいです。
部署・担当ごとにフィルター設定が保存できる
フィルター条件のブックマーク保存ができる。部署、担当ごとに、好きなフィルターをかけて保存でき、必要な情報にすぐアクセスできます。
欠点
データ処理(データ結合・データ量・集計)に制約がある
- データ量が多くなるとインポートできない (CSVの場合、100MB / Dataset)
- データ結合に弱い (Max 5 Datasets / Blend)
- データ量が多い/データ結合が多いと極端に速度が落ちる
- 複雑な集計はできない
ビジュアライゼーションに制約がある
- グラフの系列には20系列の制約あり
クロスフィルタリングに癖がある
- 複数データベースにまたがるフィルターの設定がやりにくい(Power BIのように自由にRelationを設定することができない)
エラーがわかりにくい
- データセット/ビジュアルが突然壊れることがある(データ構造の変更、データ構造上おかしい設定、重い処理をした際など、突然クラッシュして復元できなくなることがあるので注意、Power BIより壊れやすい印象)
- エラーメッセージがざっくりしていて原因を特定しずらい
情報収集しにくい
- Lookerに関する情報が収集しにくい(旧Google Datastudio, 旧Looker, 現Looker Studioの情報が混在。旧バージョンではできたけれど、今はできないこともある。)
Looker Studio導入の簡易判断基準
- データ量: 100MB以内
- 系列数: 20系列表示できればよい(全データが表示されなくてもOK)
- 結合したいデータの種類: 5種類まで
であれば、Looker Studioを使うのに向いている可能性が高いと思います。
Looker Studioに向いている場合
- データ量が100MB以内に収まる(集計データのみ取り込む場合やデータ量が少ない場合はOK)
- インポートしたデータをそのまま表示するだけで良い(集計は単純な四則演算のみで良い)
- コストをかけられない、制約があっても良いのでコストを抑えたい
Looker Studioに向いていない場合
- 文章など容量を食うデータを扱う(データ量に注意)
- データ期間が長い(データ量に注意)
- 複数のデータソースからデータを組み合わせたい(データ結合の制約に注意、フィルター連携が厄介)
- 凡例が20以上になるデータを比較したい(ビジュアルによっては20系列までしか表示できないので注意)
その他注意点、Tips
Data Type
- Looker Studioではデータ型の設定がかなり重要
- データ型が違うとビジュアルがエラーになる、フィルターが連携されない、集計エラーになる
- Power BIでは設定しなくてもそれなりに処理してくれるが、Looker Studioでは明示的に定義が必要
- データセット更新時に勝手にデータ型が変更されることもあるので注意
Filter
- 同じデータソース、同じカラム名であれば自動で連携される
- 異なるデータソースの場合、共通のIDを持つフィールドを作ることで連携できる
Cross Filter
- 同じデータソースをもつグラフ同士であれば自動で連携される
- データソース自体(Blendではなく)に同じIDのフィールドが含まれていないとクロスフィルターが機能しないので注意
Tips
- 急にデータが壊れる/データ型が変わることがあるので、必ず構成等をメモしておく
- インプットデータはできればデータソースの種類(CSV, Google Spreadsheet, JSON etc)、列名をそろえる。データソース、列名が同じであれば、列の値が自動で連携させて便利。
- 日付型は扱いが難しいのでなるべく使わない(少しでもフォーマットが違うとエラーになる)
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