.NET Conf 2025のセッションで、気になったものとその注目ポイント
.NET Conf 2025のセッションで、気になったものとその注目ポイントを紹介します。
気になったセッションと注目ポイント
AI-Powered Testing in Visual Studio
単にテストコードを自動生成するという話だけでなく、LLM の出力をテストする「Evals」という観点が含まれていたのが興味深いです。
Microsoft.Extensions.AI.Evaluation を使うことで、プロンプトやモデル出力の品質を定量的に評価し、反復して改善するサイクルを作れます。
「プロンプトを評価できるなら、コーディングエージェント自体の改善ループも回せる」という視点にかなり可能性を感じました。
カバレッジの話などは一旦置いておいても、この Evals 周りは押さえておきたいところです。
GitHub Actions DevOps Pipelines as Code using C# and Cake SDK
GitHub Actions の定義、YAML と格闘するのに疲れていませんか?という話です。
Cake (C# Make) を利用することで、ビルドパイプライン全体を C# で記述でき、型付けや IntelliSense の恩恵をフルに受けられます。
何より嬉しいのは「ローカル実行・デバッグ」ができる点です。構文エラーの確認のために毎回 push して Actions の結果を待つ……という虚無な時間をかなり削減できます。
複雑な処理を YAML から外部スクリプトに逃がしているなら、いっそ全体を C# に寄せていくのはかなり有力な選択肢になりそうです。
Community Toolkit Roundup
MVVM Toolkit は元々便利すぎて手放せませんが、さらに進化しているようです。
最近のバージョンではpartial properties + [ObservableProperty] に対応するとのことで、 IDE との相性がかなり良くなるはずです。
これまでの [ObservableProperty] private string _name; ではプロパティ定義が生成側に隠れていましたが、 [ObservableProperty] public partial string Name { get; set; } のように プロパティを自分のコード側に書ける のがポイントです。
その結果、プロパティを直接選択して「参照の検索」「リネーム」「定義へ移動」などが素直に使え、XAML バインディングとの対応関係も一目で追いやすくなりました。
また、Native AOT対応や、.NET Aspire向け、WinUI 3向けのように、ただのMVVM便利フレームワークにとどまらない進化をしているようなので、プロジェクトで使えそうなものがあるかを積極的にチェックしたいところです。
Visual Studio Debugger: Advanced Techniques
「戻り値を変数で受けていないメソッドの戻り値をデバッガ上ですぐに確認できる」という機能が紹介されており、クソ・・・もとい既存コードのデバッグで救われる場面が多そうです。
#debugger のコンテキストをGitHub Copilotに渡せるのも、Visual Studioの明確な強みだと思います。それに加えてAzure DevOps上のPRやissueもコンテキストとして参照してくれるそうで、デバッグ用途ではかなりVisual Studioが便利そうだなと思います。
Simplifying .NET with 'dotnet run file.cs'
File-based app(単一ファイルアプリケーション)の紹介です。驚くような魔法の新機能というわけではありませんが、やはり便利です。
単に hello.cs のようなファイルを用意して dotnet run hello.cs とするだけで動かせるので、バッチファイルやPowerShellスクリプトと同じ用途に使っていけます。
さすがに.NET SDKは必要ですが、dotnetコマンドでNative AOT発行が出来ます。これなら運用環境でのスクリプトとしても使えそうです。
プロジェクトやソリューションを操作しなくて良くなる分、GitHub Copilot などに小規模なツールを書いてもらう際のツール呼び出し処理の試行錯誤もかなり軽くなります。「ちょっとしたスクリプト」を C# で書くハードルを下げる、地味ながら強力な機能です。
Understanding Agentic Development
最近よく耳にする「AI エージェント」や「エージェントワークフロー」について、基礎から丁寧に解説しているセッションです。
新機能のチェックというよりは、概念の整理や学習用として非常にまとまっていて、
「エージェントって結局どういうこと?」という状態から、具体的なワークフローのイメージを掴むための入門動画としておすすめです。
Real-World .NET Profiling with Visual Studio
パフォーマンスチューニングやメモリリーク解消といった泥臭い作業を、Visual Studio Profiler と BenchmarkDotNet、そして GitHub Copilot を組み合わせてどう効率化するか、という実践的な内容です。
個人的に刺さったのは、BenchmarkDotNet(https://benchmarkdotnet.org/) を使ったベンチマークコードとの連携です。
Copilot Profiler Agent(@Profiler)にベンチマークの雛形を生成させてから、トレースの収集・ボトルネックの特定・コード修正・再計測までを対話的に回していく流れは、まさに「計測 → 変更 → 再計測」のループを AI で加速している感じでした。
他にもそうした作業をAIで効率化するというセッションはいくつかあり、いま注目されていて色々ノウハウが出てきている分野なのだと思います。
Efficient Onboarding: Accelerating New Engineer Productivity
開発者のオンボーディング(環境構築やプロジェクト参画)をどう効率化するか、という話ですが、ここで .NET Aspire のダッシュボードが登場するのが面白いです。
Aspire のダッシュボードを単なるアプリ監視だけでなく、開発者向けのポータルとして拡張・利用するアイデアは、Aspire の柔軟性をよく表しています。
また、winget の活用や設定ファイル(import/export)を使った開発環境の再現、Visual Studio の設定のエクスポート/インポートなど、
「新しいメンバーが同じ環境を素早く手に入れる」ための仕組みづくりも丁寧に取り上げられていました。
チーム開発の初期セットアップを楽にするうえで、改めて見直しておきたいポイントが多いセッションです。
まとめ
今回の .NET Conf 2025 は、思った以上に気になる内容がたくさんありました。AI関連一色かと思えばそうでもなく、幅広く情報が出てきた印象です。刺さるものがどれかあると思うので、見てみるのをお勧めです。 Youtubeのセッション動画リスト
ちなみに
12/9、LT登壇者募集中!
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