Rspec社内運用まとめ その2 テストデータの量産とFactoryBot
はじめに
弊社のサービスである ecforce
は、 Rspec
を用いてテストコードを実装しています。
現在はグループ内でルールや方針を定めたため、それらに則って各チームがテストコードを実装するようになっています。
数年前はルールや方針が明確に定まっておらず、可読性や拡張性が低下していました。
今回はテストコードにおいて数年前の状態から今に至るまで、何をどのように変えていったのかをご紹介していきます。
本題
欠損データを作らない
まず、テストコードを書く上で、実際に作成されるデータに可能な限り近づけることが重要だと考えています。
なぜなら、欠損データの状態でテストコードを書くと、意図せずテストコードがパスしたり失敗したりする可能性が高くなるからです。
欠損データを作成しないためには、 画面操作 をイメージすることが良いと考えています。
いくつか以下に例を示します。
- 顧客作成画面は存在する
- 定期受注の作成画面は存在せず、購入画面から注文が入った際に自動で定期受注が作成される
- 在庫一覧画面では在庫の更新はできるものの、在庫単独での登録はできない。必ず商品を作成した後に在庫を登録できる仕様になっている
テストデータの読み書きを容易にするFactoryBot
Rspecだけでもテストデータを作成することは可能です。
例えば、30日間隔で配送される定期商品は、以下のように作成できます。
let(:product){
Product.create!(
name: '定期商品',
number: 'test_number',
is_single: false,
shipping_cycle: 'term',
delivered_every_n_day: 30,
)
}
ただ、この記述を毎回書くとコード量が多くなってしまったり、可読性が落ちたりしてしまいます。
そこでRspecとセットでよく使用される FactoryBot を導入しました。
FactoryBot導入後のテストデータの作成は以下の通りです。
let(:product){ create(:product, :recurring, :cycle_term, delivered_every_n_day: 30) }
左から順に
- 商品
- 定期
- 配送サイクルは間隔
- 30日おき
と読み進めることができ、FactoryBot導入前よりも直感的に 30日間隔で配送する定期商品
と認識することができます。
テストデータの読み書きを容易にする方法
ここからは、どのような手順を踏めばテストデータの作成を容易にできるかについてご紹介します。
結論から先に述べると、 どのような仕様があるのかを洗い出すこと
と こういうふうに呼び出したいという理想形を策定すること
が良いと考えます。
どのような仕様があるのかを洗い出す
ecforceにおいては、一口に「商品」といっても様々な仕様が考えられます。
- 単品商品と定期商品のどちらか
- 配送サイクルが 日付で指定 間隔で指定 曜日で指定
- 販売しているか、販売していないか
- 商品一覧画面への表示/非表示
- アップセル商品(対象商品よりもワンランク上の商品)が設定されているか
- クロスセル商品(対象商品と一緒に購入してもらいたい商品)が設定されているか
- 同梱物が設定されているか
- 販売価格がいくらか
- 配送業者ごとに許容する大きさ
呼び出したいインターフェースの理想形の策定
仕様が洗い出せた後は、読み書きが容易になりそうなインターフェースの理想形を考えます。
この時点で動作するかどうかは気にしなくても大丈夫です。
販売価格が1,000円の定期商品
create(:recurring_product, price: 1000)
指定の日付で販売終了した定期商品
create(:recurring_product, :unsale, :cycle_date)
複数個のラベルが紐づいた定期商品
create(:recurring_product, :with_labels)
2つの同梱物が紐づいた単品商品
create(:product, params: [{ item_id: 1, quantity: 1 }, { item_id: 2, quantity: 1 }])
どのDSLに任せるのかを考える
上記のようなインターフェースの理想形ができたら、最後にどのDSL(ドメイン固有言語)に任せるかを考えます。
具体的には以下4つです。
- factoryのデフォルト値
- trait
- アソシエーションメソッド
- nested attributesメソッド
販売価格が1,000円の定期商品
以下の price: 1000
については、FactoryBotが導入されていればそのまま使用することができます。
recurring_product
については、 product
を継承する形でFactoryを実装する必要があります。
create(:recurring_product, price: 1000)
指定の日付で販売終了した定期商品
こちらの unsale
と cycle_date
を trait
として、Factoryを実装する必要があります。
create(:recurring_product, :unsale, :cycle_date)
複数個のラベルが紐づいた定期商品
こちらの with_labels
については何かしらの実装が必要です。
create(:recurring_product, :with_labels)
ただ、Railsのアソシエーションメソッドの
has_many :labels
が定義されているので、インターフェースそのものを微修正し、以下のように実装しました。
create(:recurring_product, labels: create_list(:product_labels, 3))
labels: xxx
の「labels」は、アソシエーションメソッド has_many :labels
の「labels」です。
すでに定義されているアソシエーションメソッドを活用することで、Factoryの実装を最小限に抑えることができます。
2つの同梱物が紐づいた単品商品
以下の params: xxx
については何かしらの実装が必要です。
create(:product, params: [{ item_id: 1, quantity: 1 }, { item_id: 2, quantity: 1 }])
ただし、RailsのアソシエーションメソッドとNestedAttributesメソッドの
has_many :bundled_items
accepts_nested_attributes_for :bundled_items
が定義されているので、こちらもインターフェースそのものを微修正し、以下のように実装しました。
create(:product, bundled_items_attributes: [{ item_id: 1, quantity: 1 }, { item_id: 2, quantity: 1 }])
こちらもすでに定義されているアソシエーションメソッドとNestedAttributesメソッドを活用することで、Factoryの実装を最小限に抑えることができます。
Factoryの実装
上記を踏まえて、Productモデルに関するFactoryを実装しました。
FactoryBot.define do
factory :product, class: Product do
# 単品商品
is_single{ true }
sequence(:name){ |n| "product_#{n}" }
number{ SecureRandom.uuid }
trait :sale do
sale{ true }
end
trait :unsale do
sale{ false }
end
factory :recurring_product do
# 定期商品
is_single{ false }
trait :cycle_term do
shipping_cycle{ 'term' }
end
trait :cycle_date do
shipping_cycle{ 'date' }
end
trait :cycle_day_of_week do
shipping_cycle{ 'day_of_week' }
end
end
end
end
このように、
- 仕様の洗い出し
- 理想のインターフェースの策定
- DSLの役割分担
の3つを意識することで、高い可読性や拡張性を維持しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回はテストデータの作成に対する考え方と、テストデータの作成を容易するための設計についてご紹介しました。
テストデータの作成において FactoryBot
はもちろん大事なのですが、Rails本体に定義したメソッドと組み合わせることで、設計をよりシンプルにし、可読性を向上させることができます。
次回は、 パスしないテストコードの調査に工数が取られてしまったケース
に対して、どのようなアプローチをしたのかお伝えしていきます。
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