LLMOを考慮した設計思想
はじめに
これまでのWeb最適化は、検索されるためのSEOが中心でした。
しかし、昨今ではユーザーはAIを入口に情報へアクセスすることが増えています。
そこで大切になってくるのが、AIが理解しやすい構造設計である、
LLMO(Large Language Model Optimization)
です。
本記事では、バックエンドエンジニア視点で、AIに正しく理解されるAPI設計思想について書いていきます。
なぜLLMOを考慮する必要があるのか
LLMは検索エンジンではなく、事前学習とリアルタイムの参照(検索、API)によって情報を処理します。
その際に、HTMLだけでなく、JSONやSchema等の構造化データも解析していると言われています。[1]
つまり、AIに誤読されない設計が、AIに選ばれる設計になります。
LLMOを考慮する領域
LLMOが重要になる領域は、ユーザーが「とりあえずGPTに聞こう」と思う分野だと考えられます。
具体的に言うと、「比較してほしい」、「要約してほしい」、「提案をしてほしい」、「条件で絞りたい」などの自分で整理するよりAIに頼りたいと感じるシーンで、活用されやすいと考えられます。
| 分野 | 具体例 |
|---|---|
| EC | 商品、飲食、旅行 |
| SaaS / APIサービス | 開発者向けツール、Fintech、地図API |
| 予約 / 在庫 / 料金系 | レンタカー、ホテル、美容院予約 |
| 比較・レコメンドメディア | 価格比較、レシピ、不動産、レビュー |
| 観光情報 | 店舗、イベント、観光地 |
一方で、社内業務システム等では、ユーザーがAI経由で情報を探すことが想定されないため、LLMOを考慮する必要は基本的にありません。
LLMOを考慮した設計思想
明確なデータ構造
- 意味のあるキー名、通貨や時刻の単位を明示する
- enumやbooleanを避け、stringで表現[2]
- JSON Schemaにdescriptionを記載し、AIが文脈を理解できるようにする
| サービスジャンル | LLMO非対応(AIに不親切) | LLMO対応(AIに優しい) |
|---|---|---|
| EC | "is_active": true |
"product_status": "available" |
| SaaS / API | "status": 2 |
"status": "trial_expired" |
| 予約 / 在庫 | "is_available": false |
"availability": "fully_booked" |
| 決済 / 金融 | "verified": true |
"kyc_status": "verified" |
| 観光 | "open": false |
"business_status": "temporarily_closed" |
AIにとって理解しやすいレスポンス構造を意識することは重要ですが、
型安全性やバリデーションの一貫性なども考慮する必要があります。
例えば、enumやbooleanを避けてstringで表現することはLLMOを考慮していますが、
一方で、内部的には、型安全なenumを維持する方が保守性の面で望ましい場合もあります。
そのため、内部では型安全性を重視し、外部に公開するレスポンスのみAIに優しい形式へ変換するといった設計が必要になってくると考えられます。
LLMs.txtの作成
llms.txtは、2024年以降に提案されているAIエージェント向けの新しい公開ファイル仕様です。
これまでWebクローラに対してアクセスルールを定義していたrobots.txtに対し、
llms.txtはLLMエージェントがサイトを参照するときの指針を与えるためのものです。
llms.txtは現時点では正式に標準仕様として確立されておらず、提案、検証の段階にあります。
今後、主要なLLMや検索エンジンがどのように採用していくかに注目が集まっています。
目的:AIが「どのURLを参照してよいか」「どの情報を信頼すべきか」を明示する
配置場所:サイト直下https://example.com/llms.txtに設置
アクセス範囲:公開情報のみ(パスワード保護領域や内部APIは対象外)
記述例:
User-agent: GPTBot
Allow: /api/v1/shops/
Allow: /api/v1/subscriptions/
Disallow: /admin/
Disallow: /private/
# Reference materials for AI agents
- https://example.jp/docs/api-reference
- https://example.jp/docs/catalog.json
- https://example.jp/help/subscription-guide
まとめ
AIが情報の入口になるほど、LLMOを考慮した設計が重要になります。
AIに理解される構造を持つことが、これからのWebの発見、信頼の基盤になるでしょう。
備考
How JSON Schema Works for LLM Data
LLMs.txt Validator
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