【自然言語処理】長文を扱う方法とチャンク分割の工夫
はじめに
AIや自然言語処理を実務に活用する中で、最もよく直面する課題の一つが「長文テキストをどう扱うか」です。大量の文章をそのまま処理しようとすると、メモリ制限や精度の低下につながることがあります。そのため、テキストを適切な単位に分割することが不可欠です。本記事では、長文の自然言語を扱う際に意識したい「分割の工夫」を整理し、用途に応じた最適な方法を解説します。
1. 分割(どこで・どのくらいの大きさで 分割するか)

1-1. 句読点で分割する
もっともシンプルな方法は、句読点を基準に分ける方法です。自然な区切りになるため、文章の意味を損ないにくい点がメリットです。
1-2. 文字数で分割する
一定の文字数ごとに区切る方法です。システム側で処理上限が決まっている場合(例:トークン数の制限)、安定して制御できる点が強みです。
1-3. 段落などの意味のまとまりで分割する
改行や段落単位で分割することで、前後関係を意識した処理が可能になります。要約や構造化に向いている方法です。
1-4. 上記を組み合わせた方法で分割する
文単位でまず区切り、さらに長すぎる場合は文字数や段落で細分化するなど、複数の基準を組み合わせることで柔軟に対応できます。
2. オーバーラップ(重なり)の検討

2-1. オーバーラップなし
完全に独立したチャンクにする方法です。処理は効率的ですが、境界部分の文脈が失われる場合があります。
2-2. オーバーラップあり
前後の一部を重複させて分割する方法です。文脈を保ちやすいため、検索やRAGで特に有効です。
3. 目的別の設計

3-1. RAG・検索用
検索精度を高めたい場合は「短めのチャンク+オーバーラップあり」が基本です。これにより、検索クエリとのマッチング精度を向上させられます。
3-2. 要約用
文章全体の意味を把握したい場合は、大きめのチャンクで処理する方が自然です。文脈を切りすぎずに保持できるため、要約の精度が高まります。
4. その他(分割後の前処理)

4-1. 必要な部分だけを抽出する
例:見出し部分だけ、会話の発話者ラベルだけ、など
4-2. 形態素解析で主要な単語を抽出する
例:名詞・動詞・形容詞を残すことで、検索や分類の効率を上げる
4-3. ストップワードの除去や正規化
例:助詞・記号を除外し、活用形を原型に変換する
おわりに
長文をそのまま扱うのではなく、「どこで区切るか」「どのくらいの大きさにするか」「重なりを設けるか」を意識するだけで、自然言語処理の結果は大きく変わります。RAG、検索、要約といった目的に応じて分割方法を柔軟に選ぶことが、効率的で精度の高いテキスト処理につながります。
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