VercelのNestJS Zero-Configuration統合を試してみたら、Fluid Computeに感動した話
本記事のサマリ
VercelがNestJSのZero-Configuration統合を発表したと聞いて、私はてっきりNext.jsとNestJSが一つのプロジェクト内でシームレスに動作する夢のような統合かと思っていました!しかし実際に試してみると、これはNestJS単体をバックエンドAPIとしてVercelにデプロイする機能だったんですよね。
本記事では、この認識のギャップを解消しつつ、VercelにおけるNestJSとNext.jsの実際の動作形態を整理し、新技術「Fluid Compute」の仕組みとデータベース接続の現実的な課題について深掘りしていきます。実際のハンズオンも含めて、モダンなサーバーレス環境でのフルスタック開発の現在地を探ってみましょう!
はじめに:期待と現実のギャップ
NestJSとNext.jsという名前の類似性もあって、私は勝手にVercelが両者の統合を進めているのかと想像していました。一つのVercelプロジェクトの中で、フロントエンドはNext.js、バックエンドはNestJSが自然に連携し、開発者は単一のプロジェクト内で完結したフルスタック開発ができるような、そんな理想的な環境を夢見ていたのです。
しかし、実際にVercelの公式ドキュメントや提供されているテンプレートを確認してみると、現実は少し異なりました。VercelのNestJS Zero-Configuration統合は、あくまでNestJS単体をバックエンドAPIとして効率的にデプロイするための機能だったのです。
この認識のギャップは決してネガティブなものではありません。むしろ、それぞれの技術がどのような方向性で進化しているのか、そしてサーバーレス環境における開発がどこまで洗練されてきているのかを理解する良い機会となりました!
VercelにおけるNestJS Zero-Configuration統合とは
VercelのNestJS Zero-Configuration統合は、2024年に導入された機能で、NestJSアプリケーションを設定ファイル無しでVercelにデプロイできるようになりました。これまでサーバーレス環境でNestJSを動かすには相応の設定が必要でしたが、この統合により大幅に簡素化されています!
重要な点は、この統合がNestJSアプリケーションを単一のVercel Functionとして動作させることです。つまり、従来のNestJSアプリケーションの構造を保ちながら、サーバーレス環境で実行されるということになります。
具体的には、エントリーポイントファイルが以下のいずれかの名前である必要があります:
src/main.{js,mjs,cjs,ts,cts,mts}src/app.{js,mjs,cjs,ts,cts,mts}src/index.{js,mjs,cjs,ts,cts,mts}src/server.{js,mjs,cjs,ts,cts,mts}
そして、アプリケーション全体が一つのFunction内で動作し、Fluid Computeによる最適化が自動的に適用されます。これにより、従来のサーバーレス環境で問題となっていたコールドスタートの影響を大幅に軽減できるんです!
実はNext.jsもサーバーレス:Vercel上での動作を理解する
私が当初持っていた誤解の一つに、「Next.jsはVercel上で常設サーバーとして動作する」というものがありました。しかし、これは正確ではありません。
実際には、Next.jsもVercel上ではVercel Functionsとして、つまりサーバーレス環境で動作しているんです。App RouterのサーバーコンポーネントやAPI Routes、すべてがサーバーレスの仕組みの上で実行されています。
この点を理解すると、NestJSとNext.jsの動作環境に関する見方が変わってきます。どちらもサーバーレス環境で動作するという共通点があり、その上でそれぞれが最適化されているんですね。
Next.jsの場合は、Static Site Generation(SSG)による事前レンダリングや、Incremental Static Regeneration(ISR)による効率的な再生成など、Vercelの仕組みと密接に統合された最適化が行われています。一方、NestJSの場合は、後述するFluid Computeによる最適化が主な恩恵となります。
Fluid Compute:サーバーレスの常識を変える新技術
NestJSのVercel統合を語る上で避けて通れないのが、Fluid Computeという新しい技術です!これは従来のサーバーレス環境の制約を大幅に改善する革新的なアプローチなんです。
従来のサーバーレス環境では、各リクエストに対して独立したFunction インスタンスが立ち上がり、処理完了後に破棄されていました。これによりコールドスタートの問題や、リソースの非効率な使用といった課題がありました。
Fluid Computeは、この問題を「最適化された同時実行性」という概念で解決しています。複数のリクエストが同じFunction インスタンス内で同時実行されることで、リソースの共有が可能になり、コールドスタートの頻度も大幅に削減されるんです!
特に注目すべきは、Node.js 20以降で利用可能な「バイトコードキャッシング」機能です!これにより、初回実行後のJavaScriptファイルのコンパイル済みバイトコードが保存され、後続のコールドスタート時の初期化が高速化されます。
また、Fluid Computeでは「エラー分離」という仕組みにより、一つのリクエストで未処理例外が発生しても、同じインスタンス内で実行中の他のリクエストに影響を与えないよう設計されています。これにより、従来のサーバーレスの信頼性を保ちながら、パフォーマンスの向上を実現しています。
実際の数字で見ると、Fluid Computeを使用することで99.37%のリクエストでコールドスタートが発生しないという驚異的な改善を達成しています!100回のリクエストのうち、コールドスタートを体験するのはわずか1回未満ということになるんですね。
データベース接続の現実:セッションプールは大丈夫なのか
サーバーレス環境でNestJSを運用する際に、私が最も心配していたのはデータベース接続の問題でした。特に、Neonのようなクラウドデータベースに対するコネクションプールの管理です。
従来のサーバーレス環境では、各Function が独立してデータベース接続を開閉するため、コネクション数の枯渇や、非効率な接続管理が深刻な問題となっていました。特に、Function が中断された際にアイドル接続のタイムアウトが実行されず、コネクションプール使用量が発生するという「サスペンションリーク」問題が存在していました。
しかし、Fluid Computeはこの問題に対しても解決策を提供しています。
まず、Fluid Computeでは複数のリクエストが同じインスタンス内で実行されるため、グローバルスコープで初期化されたコネクションプールを複数のリクエスト間で共有できます!これにより、従来のサーバー環境と同様の効率的なコネクション管理が可能になるんです。
さらに、attachDatabasePoolというヘルパー関数が提供されており、これをコネクションプールに適用することで、リクエスト完了後にアイドル接続を適切にクローズする仕組みが自動的に組み込まれます。これにより、サスペンションリーク問題を根本的に解決できます。
ベストプラクティスとしては、以下の点が推奨されています:
- コネクションプールはグローバルスコープで定義し、複数リクエスト間での再利用を可能にする
- アイドルタイムアウトは比較的短め(5秒程度)に設定し、未使用接続を迅速にクローズする
- 最大プールサイズを1に設定することは避け、Fluid Computeの同時実行性を活かすために最小プールサイズを1にとどめる
これらの対策により、サーバーレス環境でも安心してデータベース接続を管理できるようになります!
実際に試してみる:ハンズオン
理論だけでは実感が湧かないので、実際にVercelが提供しているNestJSテンプレートを使ってデプロイを試してみましょう!
1. テンプレートのクローンとセットアップ
まず、GitHubからテンプレートをクローンします:
git clone https://github.com/vercel/examples
cd examples/solutions/nestjs-on-vercel
このテンプレートは非常にシンプルな構成になっています。src/main.tsがエントリーポイントとなっており、標準的なNestJSアプリケーションの構造を保っています。
2. ローカル環境での動作確認
まず、ローカル環境で動作確認を行います:
npm install
npm run start:dev
このとき、http://localhost:3000にアクセスすると、"Hello World!"というレスポンスが返ってくるはずです。
3. Vercel CLIを使用したデプロイ
Vercel CLIの最新版(48.4.0以降)を使用してデプロイを行います:
npx vercel deploy
デプロイプロセス中に、VercelがNestJSアプリケーションを自動的に認識し、Zero-Configurationでセットアップを行う様子を確認できます。設定ファイルなしで、すべてが自動的に構成されるのは確かに便利ですね!
4. 動作確認とパフォーマンステスト
デプロイ完了後、提供されたURLにアクセスして動作確認を行います。初回アクセス時のコールドスタート時間と、連続アクセス時のレスポンス時間の差を体感することで、Fluid Computeの効果を実感できるでしょう。
ブラウザの開発者ツールでNetworkタブを確認すると、初回リクエストと後続リクエストの応答時間の違いが明確に見えるはずです。
まとめ
VercelのNestJS Zero-Configuration統合を詳しく調べてみると、当初の期待とは異なる方向性でしたが、それはそれで非常に価値のある進歩だということがわかりました!
まず、認識を整理すると、この統合はNext.jsとNestJSの統合ではなく、NestJS単体をバックエンドAPIとして効率的にデプロイするための機能です。そして、Next.jsもNestJSも、どちらもVercel上ではサーバーレス環境で動作しているという共通点があります。
Fluid Computeという新技術により、従来のサーバーレス環境の制約の多くが解決されており、特にコールドスタート問題や効率的なリソース使用に関して大幅な改善が見られます!99.37%のリクエストでコールドスタートが発生しないという数字は、実用的な観点から見ても十分に魅力的ですよね。
データベース接続についても、適切な設計とFluid Computeの機能を組み合わせることで、従来のサーバー環境と同等かそれ以上の効率性を実現できることがわかりました。
実際にハンズオンを通じて体験してみると、Zero-Configurationの名に恥じない簡単さで、本格的なNestJSアプリケーションをサーバーレス環境にデプロイできます!
サーバーレスファーストなアプローチがますます現実的な選択肢になってきていることを実感します。Next.jsとNestJSが同一プロジェクト内で統合される日が来るかどうかはわかりませんが、それぞれが独立して最適化を続けることで、開発者により良い体験を提供してくれることは間違いないですね!
株式会社StellarCreate(stellar-create.co.jp)のエンジニアブログです。 プロダクト指向のフルスタックエンジニアを目指す方募集中です! カジュアル面談で気軽に雑談しましょう!→ recruit.stellar-create.co.jp/
Discussion