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BunにNext.jsを立てても、Nodeに戻せるので安心してほしい!

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本記事のサマリ

「Bunを試してみたいけど、プロダクションで問題が起きたらどうしよう」そんな不安を抱えている方に向けて、BunでNext.jsプロジェクトを立ち上げて、いつでもNode.js(yarn)に戻せることを実際のコードで検証します。

Bunの圧倒的な速度と使い勝手の良さを知りつつも、導入への一歩を踏み出せずにいる方が多いのではないでしょうか。本記事では、その心配を解消するために、BunからNode.jsへの移行が本当に可能なのかを実践的に確かめます。結論から言うと、想像以上にスムーズに戻すことができます。だからこそ、もう遠慮する必要はありません。

今回検証した内容は以下のリポジトリで公開しています。
https://github.com/toto-inu/lab-202510-bun_to_node

はじめに:Bunを試したいけど踏み出せない理由

新しい技術に触れるとき、誰もが感じる「本当に大丈夫かな?」という不安。Bunについても同じような気持ちを抱えている方が多いのではないでしょうか。

「パフォーマンスが良いって聞くけど、本当にNode.jsの代替になるの?」「プロジェクトの途中で問題が発生したら、元に戻せるの?」「チームメンバーがBunに慣れていなくて、開発効率が下がったらどうしよう」

こうした心配は、とても自然なものです。特に、既存のプロジェクトや本格的なプロダクト開発において、実験的な技術を導入するのは勇気がいります。

しかし、実際のところBunは思っているより安定していて、何より「いつでも戻れる」という安心感があります。Bunで作ってみてイマイチだったらNodeに戻すことも比較的やりやすい設計になっています。この記事では、その安心感を実際のコードで証明していきます。

Bunとは何か:公式情報に基づく整理

Bunは、Oven社が開発している高速なJavaScriptランタイムです。公式サイトによると、「all-in-one JavaScript runtime & toolkit designed for speed, complete with a bundler, test runner, and Node.js-compatible package manager」と説明されています。

つまり、Bunは単なるNode.jsの代替ではなく、JavaScript開発に必要な様々なツールを統合した包括的なソリューションなのです。

Bunが注目される理由

Bunの最大の特徴は、その圧倒的な速度です。公式のベンチマークによると、Node.jsやYarnと比較して2-3倍、場合によってはそれ以上の高速化を実現しています。

実際に筆者が重い計算処理(sinやlogなど)をts-nodeと比較測定したところ、Bunは15〜20倍近く速く実行されました。この体感できるほどの速度差は、開発時の待ち時間を劇的に減らし、試行錯誤のサイクルを高速化してくれます。

この速度向上は、BunがZig言語で書かれており、JavaScriptCoreエンジン(SafariのJavaScriptエンジン)を使用していることに起因します。従来のV8エンジンとは異なるアプローチで、起動時間とランタイム性能の両方を大幅に改善しています。

さらに重要なのは、Bunが既存のNode.jsエコシステムとの互換性を重視していることです。npm パッケージはそのまま使用でき、既存のコードベースを大幅に変更することなく導入できます。Nodeやnpmやyarnと近い構文で実行できるため、学習コストも非常に低く抑えられています。

All-in-Oneという思想

Bunが他のランタイムと異なるのは、JavaScript開発に必要な機能をワンストップで提供していることです。パッケージマネージャー、バンドラー、テストランナー、トランスパイラーなど、通常は複数のツールを組み合わせて実現していた機能が、Bun一つで完結します。

これは開発者にとって大きなメリットです。ツール間の設定の整合性を気にする必要がなく、学習コストも削減されます。プロジェクトのセットアップも驚くほどシンプルになります。

実際に使って感じたBunの魅力

公式の情報だけでは伝わりにくい、実際に使ってみて気づいたBunの素敵なポイントを紹介します。

開発体験を向上させる細かな気配り

Bunには、開発者の日常的な作業を楽にする工夫が随所に散りばめられています。例えば、環境変数は .envファイルを自動で読み込んでくれます。Node.jsでは dotenvパッケージをインストールして明示的に読み込む必要がありましたが、Bunではその手間が不要です。

また、bun run --hotでホットリロードが有効になります。コードを変更するたびにサーバーを再起動する必要がありません。
Next.jsなどでは当たり前ですが、Bunでも同様の機能があります。

組み込みAPIの充実と注意点

Bunには、よく使われる機能の組み込みAPIが用意されています。例えば、PostgreSQLへの接続やS3へのアクセスなど、通常は外部ライブラリが必要な機能も、Bunの標準機能として提供されています。
Bun公式ドキュメント S3組み込みAPI

正直なところ、データベースアクセスについてはPrismaのようなORMを使うことが多いので、組み込みAPIの恩恵を受ける場面は限られるかもしれません。しかし、S3のようなクラウドサービスについては、AWS SDKを経由せずに直接アクセスできるのは、依存関係を減らせるという意味で魅力的です。

APIサーバーの構築も簡単に

Bunには bun.serveという機能があり、簡単にAPIサーバーを立ち上げることができます。Expressのような外部フレームワークを使わずとも、基本的なHTTPサーバーを構築できるのは便利です。

// bun.serveの簡単な例
Bun.serve({
  port: 3000,
  fetch(req) {
    return new Response("Hello from Bun!");
  },
});

もちろん、本格的なアプリケーション開発ではNext.jsのようなフレームワークを使うことが多いでしょう。ただ、ちょっとしたAPIエンドポイントを作りたいときや、プロトタイピングの段階では、この手軽さが光ります。

プロジェクト初期化の選択肢

bun initでプロジェクトを初期化する際、Reactをベースにしたテンプレート(TailwindやShadcn込み)を選択することもできます。create-react-appのような感覚で、すぐに開発を始められる環境が手に入ります。

個人的には、本格的なプロジェクトではNext.jsで create-next-appを使いたいところですが、シンプルなSPAを作りたい場合や、Reactの学習目的であれば、この機能は十分に活用できます。

本当に大事なこと:Node.jsに戻せるのか

新しい技術を導入する際、最も重要な考慮事項の一つが「後戻りできるか」です。これは、リスク管理の観点から非常に大切な要素です。

なぜ「戻れること」が重要なのか

実際のプロジェクト開発では、予期しない問題が発生することがあります。パフォーマンスの問題、特定のライブラリとの互換性、チームの学習コストなど、様々な要因でツールの変更を余儀なくされる場合があります。

そんなとき、従来の環境に戻せる選択肢があることは、心理的な安心感だけでなく、プロジェクトリスクの軽減にも大きく貢献します。

特にBunのような比較的新しい技術では、まだ発見されていない問題や、特定の環境での予期しない動作に遭遇する可能性があります。そのような状況でも、既存の安定したツールチェーンに戻れることが分かっていれば、安心して新しい技術を試すことができます。

Bunの互換性設計

Bunの開発チームは、この点を十分に理解しています。公式ドキュメントでも、Node.js互換性について詳しく説明されており、既存のNode.jsプロジェクトをそのまま動作させることを目標にしていることが明確に示されています。

この互換性重視の設計思想により、BunとNode.js間の移行は理論上スムーズに行えるはずです。しかし、理論と実践は異なります。実際に試してみることで、本当に問題なく移行できるのかを確かめてみましょう。

実践検証:BunでNext.jsを立ち上げてYarnに戻す

それでは、実際にBunでNext.jsプロジェクトを作成し、その後Yarn(Node.js)に戻す手順を検証してみます。

環境準備

検証を始める前に、必要な環境を準備します。

# Node.js(v18以上)とyarnが既にインストールされていることを前提とします
node --version
yarn --version

Bunのインストールと基本コマンド

Bunのインストールは驚くほど簡単です。公式インストールガイドに従って、以下のコマンドを実行します。

# Bunのインストール
curl -fsSL https://bun.sh/install | bash

# インストール確認
bun --version

Bunの基本的なコマンドは、npmやyarnと非常によく似ています。パッケージ管理は bun addbun installで行い、既存のnpmやyarnの知識がそのまま活かせます。

# パッケージのインストール
bun install

# パッケージの追加
bun add <package-name>

# 開発用パッケージの追加
bun add -d <package-name>

# スクリプトの実行
bun run <script-name>

# ホットリロードでスクリプトを実行
bun run --hot <script-name>

# プロジェクトの初期化
bun init

この一貫性が、既存のワークフローからの移行を容易にしている要因の一つです。npmやyarnを使っている方なら、ほとんど違和感なくBunを使い始められるでしょう。

BunでNext.jsプロジェクトを作成

それでは、BunでNext.jsプロジェクトを作成してみましょう。Bunには bun createコマンドがあり、Next.jsプロジェクトを簡単にセットアップできます。

# Bunを使ってNext.jsプロジェクトをプロジェクトルートに作成
bun create next-app .

インタラクティブなセットアップが始まるので、以下のように選択します:

✔ Would you like to use TypeScript? … Yes
✔ Would you like to use ESLint? … Yes
✔ Would you like to use Tailwind CSS? … Yes
✔ Would you like your code inside a `src/` directory? … Yes
✔ Would you like to use App Router? (recommended) … Yes
✔ Would you like to use Turbopack for `next dev`? … Yes
✔ Would you like to customize the import alias (`@/*` by default)? … No

プロジェクトが作成されたら、簡単なテストページを追加してみましょう。

app/test/page.tsx
export default function TestPage() {
  return (
    <div style={{ padding: '2rem' }}>
      <h1>Bun + Next.js テストプロジェクト</h1>
      <p>このプロジェクトはBunで作成され、Yarnに移行できます。</p>
      <p>現在の日時: {new Date().toLocaleString('ja-JP')}</p>
    </div>
  )
}
app/api/test/route.ts
import { NextResponse } from 'next/server'

export async function GET() {
  return NextResponse.json({ 
    message: 'Hello from Bun + Next.js!',
    runtime: 'bun',
    timestamp: new Date().toISOString()
  })
}

Bunでの開発サーバー起動

Bunでプロジェクトを実行してみます。

# 開発サーバーの起動
bun run dev

Bunでの開発サーバー起動

ブラウザで http://localhost:3000 にアクセスして、ページが正常に表示されることを確認します。また、http://localhost:3000/api/test でAPIエンドポイントも動作することを確認します。

起動時間を見ると、わずか1029msでReady状態になっています。この速さは、開発時の快適さに直結します。

YarnへのMigration手順

いよいよ、本記事の核心部分であるYarnへの移行を行います。

まず、Bunで生成された bun.lockb ファイルを削除し、Node.jsとYarnでプロジェクトを再セットアップします。

# Bunのロックファイルとnode_modulesを削除
rm bun.lock
rm -rf node_modules

# Yarnでパッケージを再インストール
yarn install

Yarnでのパッケージインストール

パッケージのインストールが完了しました。64.27秒かかっています。この時点で、プロジェクトの構造は変わっておらず、package.jsonの内容もそのまま保持されています。

# Yarnで開発サーバーを起動
yarn dev

Yarnでの開発サーバー起動

開発サーバーが起動し、1034msでReady状態になりました。再度ブラウザで確認すると、Bunで作成したプロジェクトがYarn環境でも完全に動作していることが分かります。

動作確認とテスト

移行が正常に完了したかを確認するため、いくつかのテストを行います。

まず、Bunでビルドを実行してみます。

# Bunでビルドテスト
bun run build

Bunでのビルド

ビルドが完了しました。注目すべきはCompiled successfully in 0msという表示です。

次に、Yarnでも同様にビルドを実行します。

# Yarnでビルドテスト
yarn build

Yarnでのビルド

Yarnでのビルドは1000msかかっています。両環境でビルドが成功し、アプリケーションが期待通りに動作することを確認できました。

検証結果と考察

この実践検証を通じて、いくつかの重要な発見がありました。

移行の容易さ

BunからYarnへの移行は、想像以上にスムーズでした。ロックファイルを削除して再インストールするだけで、プロジェクトは完全に動作しました。これは、Bunの設計思想である「Node.js互換性」が実際に機能していることを示しています。

package.jsonの内容も一切変更する必要がなく、依存関係の管理も問題なく引き継がれました。これにより、開発チーム内でツールの移行を段階的に行うことも可能です。

パフォーマンスの違い

検証過程で体感できたのは、明らかなパフォーマンスの違いです。実際に測定した結果を以下の表にまとめました。

操作 Bun Yarn 速度比較
パッケージインストール 27.59秒 (326 packages) 64.27秒 Bunが約2.3倍速い
開発サーバー起動 1029ms (Ready) 1034ms (Ready) ほぼ同等
ビルド時間 (Compiled) 0ms 1000ms Bunが圧倒的に速い?

※ 0msと書いてますが、実際にはおよそ10秒ほどコマンド実行完了までかかってたので、あまり変わらないかもですね。

Bunでのインストール画面

特に注目すべきは、パッケージインストールとビルド時間の差です。Bunでのパッケージインストールは27.59秒で326パッケージをインストールしていますが、Yarnでは64.27秒かかっています。

もう少し煩雑な処理を書くと、もしかするとbuildやサーバー起動の時間にも差が出るのかもしれませんが、今回はそこまで差は確認できずでした。

潜在的な注意点

一方で、いくつかの注意点も見つかりました。特定のパッケージでBun特有の最適化が効いている場合、Node.js環境では期待したパフォーマンスが得られない可能性があります。

また、Bunの実行時エラーメッセージとNode.jsのそれは微妙に異なる場合があり、デバッグ時には注意が必要です。

最も重要な注意点は、Bun独自の組み込みAPIの扱いです。PostgreSQLへの接続やS3へのアクセスなど、Bunが提供する便利な組み込みAPIを使ってしまうと、Node.jsに戻す際にそのコードを書き直す必要があります。これは当然のことですが、見落としがちなポイントです。

スムーズにNode.jsへ戻せることを優先するなら、最初からPrismaやAWS SDK for JavaScriptのようなNode.js互換のパッケージを使うべきです。Bunのパフォーマンスは享受しつつ、いざという時の移行パスを確保しておくという戦略が、実践的だと言えるでしょう。

実用性の評価

総合的に考えると、BunはNext.jsプロジェクトにおいて実用的な選択肢と言えますね。移行の容易さが確認できたことで、「試してみてダメなら戻す」というアプローチが現実的であることが分かりました。

まとめ:遠慮なくBunを使おう!

この検証を通じて明らかになったのは、Bunは思っているより安全で、実用的な技術だということです。

「新しい技術を導入するのは怖い」その気持ちは、とても自然で健全な考えです。
そしてこのような記事を書いている通り、筆者も相当なビビりです。
しかし、実際に試してみると、そこまで怖がるような問題が「少なくともBunについてはなさそう」だと分かりました!

Node.jsとの互換性は想像以上に高く、問題が発生した場合の退避路もしっかりと用意されています。パフォーマンスの向上は確実に体感でき、開発体験の向上に直結します。

特に、個人プロジェクトや新しいプロトタイプの開発では、Bunの導入を躊躇する理由はほとんどありません。チーム開発においても、段階的な導入が可能であることが今回の検証で確認できました!

Bunの公式ドキュメントは bun.sh で確認できます。コミュニティも活発で、GitHub 是非こちらもみていただくと良いかもしれませんね!

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