RubyKaigi 2025 に参加してきました
RubyKaigi2025 松山で見つけた、エンジニアとしての原点とAI時代の未来
愛媛県松山市で開催された RubyKaigi 2025 に3日間参加してきました。私はRubyコミュニティの温かさに触れ、コードに向き合う楽しさを再確認することができたと感じています。また、Matzの基調講演から示唆されたAI時代におけるエンジニアのあり方についても深く考えさせられました。「Developer Happiness」という Ruby の根本的な設計思想がAI時代においても私たち人間が主役であり続けるための重要な鍵となるのではないかと私は感じています。ここでは、印象に残った出来事と今後のエンジニアリングの未来について、個人的な考察を交えながら振り返りたいと思います。
1.Drinkup で知ったコミュニティの温度感
前夜祭として開かれた Asakusa.rb 主催の Drinkup では、国内外の開発者が参加していました。私は強い人の話についていけるかなと少し不安を持ちつつ参加しました。でもみなさんとても優しくフレンドリーで、コードと Ruby への興味で自然に会話が続くのが印象的でした。英語がもっと話せればという悔しさもありましたが、これをバネにして頑張ろうと思いました。
2.セッションで再確認した「掘り下げ」の面白さ
初日のキーノート "Ruby Taught Me About Encoding Under the Hood" では、登壇者が「偶然 Reline
のバグを踏んだことを機に、ひとつの課題を深掘りし続けて Ruby コミッターになった」と紹介していました。私は"掘り下げるだけで楽しい"という言葉から、問題解決にのめり込む感覚を思い出させてもらいました。
また会場全体が共感しているというのを感じ、一緒の価値観を持っている仲間がたくさんいるということに私は感動しました。
言葉を発したり、態度で表している訳ではなくても、会場が熱気に包まれているのを私は肌で感じることができました。
3.コード懇親会で dRuby を体験
最終日夜は Andpad さん主催のコード懇親会に参加し、私は dRuby グループに入りました。黙々とコードを書き、思い通り動いた瞬間の小さな達成感を味わうことができました。プログラミングを始めた頃から変わらないこの感覚が、私にとっては一番の原動力だと感じています。貴重な機会を提供してくださった運営の皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。
4.Matz 基調講演――AI 時代の Ruby が目指すもの
最終日の基調講演 "Programming Language for AI Age" で Matz は、AI が当たり前になる時代でも「人間が主役であり続ける」重要性を強調していたと思います。昨今の AI ブームにより、人間が AI を使うのではなく、AI のために人間が奉仕するような状況への懸念を示し、この逆転した主従関係を避けるための視点を提供してくれたと私は感じました。
私は 「Developer Happiness」 を Ruby の根本的な設計原則として再確認することを呼びかけられたように感じました。「効率が上がっても楽しさを損なわない言語」という理念は、AI 時代においても変わらず大切なものだと思います。技術的な AI の議論においても「楽しい」と「幸福」に焦点を当てることが、Ruby の哲学における重要な差別化要因なのではないかと私は感じ、深く共感しました。AI はエンジニアが幸せになるために使われるべきであり、その逆であってはならないという姿勢に、会場全体が共感していたように私には思えました。
コミュニティへの呼びかけとして印象的だったのは、Ruby コミュニティが最新の構文を用いたクリーンなコードを積極的に公開することで、AI に良質な学習データを提供できるという提案だったと思います。これは開発者が AI と Ruby の関係性を主体的に形成する上で重要な役割を果たすというビジョンを示していると私は感じました。
講演の締めくくりでは「Ruby 4.0」の発表があり、Ruby 30周年を迎える節目に新たな出発を示唆していたと思います。さらに「コミッターとの距離は近い。次はあなたが登壇者になってほしい」という言葉が私の心に残りました。この思想こそが、Ruby コミュニティに主体性の文化をもたらし、AIという新しい時代においても、人間中心の開発文化を育む土壌になるのだと私は実感しました。
5.スタジアムに入社してもうすぐ 1 年――遅くなった入社エントリ
私は昨年の5月にスタジアムに入社しました。その時に考えていたことがRubykaigiに参加して思い起こされました。
遅くなりましたがこの章では入社して1年の入社エントリの思いもこめて書きたいと思います。
スタジアムに入社する以前の環境では、作り上げたアプリが本番稼働する前にチームが解散し、次のプロジェクトへと移動するという繰り返しでした。私はせっかく信頼関係を築いたチームメンバーとの別れ、そして、ユーザーからのフィードバックを受けて改善する喜びを味わえないことに、いつも心のどこかで寂しさを感じていました。
「あのバグ、本当に直ったのかな」「この機能、実際に使われているんだろうか」と考えながらも、次の現場では全く別のことを始める—この断絶感が私は非常に寂しく思えていました。
また、業務で使わない新しい技術や、単なる興味から生まれたアイデアについて熱く語り合える仲間も少なく、技術的な好奇心を共有できる場所に私は飢えていたと感じています。たとえば「この書き方、面白いよね」「この実装方法、もっとこのようにできるんじゃない?」という会話が日常的に交わされる環境が欲しいと思っていました。
そんな思いから、「できるだけ多くのことを経験したい」という欲求と「作ったものを育て続けたい」という願いを同時に叶えるため、スタートアップである 株式会社スタジアム への転職を私は決めました。
そして今——入社からもうすぐ1年が経ちますが、私にとって毎日が発見と成長の連続だと感じています。開発チームだけでなく、ビジネス・カスタマーサクセス・マーケティングなど様々な部門のメンバーと同じ目標に向かって協力し、技術からビジネスまで幅広いアイデアを自由に交換できていると思います。リリース後のサービスをユーザーの声を聞きながら改善し続ける体験から、私は大きな充実感を得ています。
RubyKaigi への参加も会社が温かくサポートしてくれました。外部の勉強会、カンファレンスへの参加が推奨されており、「行ってきなよ!」と背中を押してくれる環境は、単なる勉強のためだけでなく「成長してきてね」という期待も感じられ、私のやる気が湧いてきます。
私は貢献(contribute)という形で返したいと思っています。
6.AI と歩む半歩先の未来
Matzのキーノートを聞き、AI時代と今起こっていることについて私なりに考えを巡らせました。
AI技術の進化スピードは、私の想像をはるかに超えていると感じています。MCP(Machine Control Protocol)やAgent-to-Agentコミュニケーションなどの新しいプロトコルが数か月単位で登場し、それらを利用したサービスが次々とリリースされる状況は、私にとって時に目が回るほどの速さに思えます。
これらの新技術は単なるツールではなく、開発の在り方そのものを変えようとしているように私には思えます。AIによって新たな抽象化レイヤーが生まれ、従来人間が担ってきた設計領域の一部がAIが扱いやすい形に再構成されつつあるように私は感じています。例えば「どのようにコンポーネントを分割すべきか」「どのデザインパターンを採用すべきか」といった判断の一部が、AI理解に最適化された形式に標準化されていくのではないかと私は考えています。
インフラストラクチャ、データベース設計、セキュリティ対策など、これまで人間のエンジニアが明示的に選択・設計していた領域が、AIが操作しやすい新プロトコルとともに同一化され、クラウドの一部として抽象化されていく可能性もあるのではと私は思っています。それは私たちの仕事の一部が消えていくようにも見え不安も感じますが、前向きに捉えるならば、同時に新たな創造のための時間を生み出すと捉えることもできるのではないかと思います。
スタジアムでは、こうした技術の波に飲み込まれるのではなく、波に乗るための取り組みを日々重ねていると私は感じています。AIコーディング支援ツールを積極的に日常業務に取り入れ、実践を通じて見極めようとしている姿勢に共感しています。
私は「半歩先を歩く」ことが非常に大事なのではないかと考えています。スタジアムでは新技術を追いかけるだけでなく、それらをどう活用すべきかを常に議論し、チームで共有していると思います。技術の変化が加速する時代において、「必要に迫られてから対応する」のでは常に後手に回ってしまうと私は考えています。代わりに「まず触ってみる→意見を交換する→次の変化に備える」というサイクルを回し続けることが重要なのではないかと私は感じています。
このような変化の中で、私たちエンジニアの役割はどう変わるのか。私は「人間にしかできない創造性」と「AIとの協働による生産性向上」のバランスを見極めることこそが、これからのエンジニアの腕の見せどころになるといいなと思っています。新しいレイヤーが生まれ、古いレイヤーが抽象化される中で、私たちにとって本当に大切な「楽しさ」と「幸福」を失わないようにするには、半歩先を歩き続ける必要があるのではないかと私は考えています。
RubyKaigiに参加して強く感じたのは、このような「技術と人間の関係性」を深く考え、議論し合える仲間の存在がいかに貴重かということです。「AIと人間の主従関係の逆転」というMatzの警鐘を胸に、AIが進化を続ける中でも、私たちエンジニアは単なる「コードを書く人」ではなく、「テクノロジーと人間の幸福な関係を設計する人」としての役割を担っていくのではないかと私は考えています。
7.一緒に次のリリースを作りませんか
スタジアムでは Ruby エンジニアを積極採用中 です。私はコミュニティで得た学びを活かし、AI 時代のプロダクトを一緒に作りたい方と出会えることを楽しみにしています。
RubyKaigi 2025 は私にとって「コードを書く楽しさ」と「学び合う文化」の大切さを再確認する 3 日間でした。来年、またどこかでお会いできることを私は楽しみにしています。
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