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現代だからこそリモートワークをデフォルトにすべき、という話

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パンデミックが落ち着いて以降、出社回帰の流れが来ていますが、私は明確に反対しています。もちろんハイブリッドのバランスは重要ですが、それにしてもまだまだ出社に偏りがちだと思います。変えねばなりません。

そういうわけで、エンジニアリングの方法論の一つとして「リモートワークをデフォルトにするためには」を整理しました。Zenn Book として整理し、紹介していますが、本記事ではさわりも書きます。

リモートワークであるべし!な本を書きました

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Remotism

どんな本?

コミュニケーションの限界に挑んだ本です

「出社回帰」や「リモートだけど会議が多い」といった現状には違和感があります。本書では、まず以下の前提に立ちます。

  • 1: 住み込み(自宅 < 職場)
  • 2: 出社(自宅 ≒ 職場)
  • 3: リモート(自宅 > 職場) ★現代はここだよね

出社回帰がそもそもおかしいのです。出社の価値観を持つ人達に「住み込みで働いてもらうよ」と言っているようなものです。一度上がった生活水準を下げるのは極めて暴力的なことです。あってはならないはずです。そして現代は、ご存知のとおり、リモートワークが可能な時代です。水準は第三パラダイムのリモートになったのです。ならば、リモートワークがデフォルトであるべきなのです(デフォルト・リモート)。

また、リモートだからといって、会議が多いのではあまり意味がありません。

詳しい議論は本書を読んでいただくとして、一言で言えば コミュニケーションそのものの限界 があります。

コミュニケーションとは「時間や場所を拘束した」「非言語情報を主に扱う」やりとりを指します。主目的は欲求の充足であり、食事や睡眠と似たようなものです。仕事を情報のやりとりだと定義すると、こんなもので情報のやりとりを行っていること自体がおかしいのです。構造的に非言語と拘束が伴いますから、デフォルト・リモートの水準は満たせません。コミュニケーションそのものから脱せないといけないのです。

弱者を取りこぼさない本です

私はチームワークという言葉もあまり好きじゃありません。チームワークの名のもとに、単一のあり方が強要されがちだからです。平等という聞こえはいいですが、単にやり方が下手くそなだけです、あるいは管理や搾取上、都合がいいだけです。

デフォルト・リモートでは二つの立場がどうしてもでてきます。

  • リモートができる人たちと、できない人たち
  • 自律的に動ける人たちと、動けない人たち
  • 読み書きができる人たちと、できない人たち etc

リモートだからといって「できる人たち」前提で組むと、平等の域を越えられません。もちろん、従来の出社以前の価値観は、できない人前提で組んでいるので良くないです。どちらも尊重する必要があります。本書の特徴は、どちらの立場も尊重した上で、上手く連携をはかりにいくことです。たとえば、コミュニケーションなんて要らないよねと切り捨てるのではなく、必要に応じて確保すると考えます。また、自律的に確保できない人たちのために、場をつくって参加してもらったり、リマインドなど仕組みで気付かせたりといった工夫も使います。

脱線しますが、IT エンジニアの方であれば、開発と似ていると気づくかもしれません。実際そのとおりで、エンジニアリングの本質とは概念をつくることだと思います。つくった概念をどう落とし込むかが違うだけです。開発ではプログラムに落としますが、本書では組織や役割に落とし込むことが多いです。このようにエンジニアリングとの関係性も少し論じているので、(テクニカルな要素は少ないですが)興味を持っていただけるのではと思います。

常識を解体する本です

仕事術(仕事のやり方や考え方)や働き方といったものは蔑ろにされがちです。すでに述べたように、コミュニケーションそのものの限界や平等指向といった「とらわれ」が多く存在しており、そのせいで私たちは原始的な仕事術や働き方から脱しづらくなっています。

方法と道具はもうあります。一番の障壁はそういった価値観、いわば常識にとらわれていることです。いくら手段が豊富でも、根っこの部分が古ければどうしようもありません。ですので本書では丁寧にそれら常識を言語化し、解体しようとします。

自省や壁打ちのつもりで、ぜひ本書と向き合ってみてください。

目次と軽い解説

  • コミュニケーションと情報共有
  • マネジメント
  • シームレス
  • 役割分担
  • 文字通りの IT リテラシー(1/2)

ざっくりと上記の構成になっています。

コミュニケーションと情報共有

最も重要と思われるコミュニケーションと情報共有を、リモートでどうやるかを整理します。

そのために、そもそもコミュニケーションとはなにか?情報共有とはなにか?という前提から再考します。皆さんがすでにご存知であろう「非同期コミュニケーション」や「透明性」の概念も出てきます。

マネジメント

マネージャーという専門職・役割が存在するように、エンジニアリングとマネジメントは切っても切り離せません。さて、マネジメントというと、予実をシステムに数字を投入させて管理するか、対面でメンバーを集めて非言語的に読み取りながらフォローするかを浮かべると思いますが、それではデフォルト・リモートにできません。

では、どうするかというと、セルフマネジメント(自律)です。自律的な集団、は IT 業界にかかわらず、ビジネス界隈でもホットだと思いますが、まさにそれです。どのように自律性を育んでいくのか、またそのためのやり方や考え方は何かを丁寧に見ていきます。

シームレス

ゲームでは、少しでも遅延があると非常に腹ただしいと思います。リモートも同じです。遅延がなく超高解像度な現実での対面に比べ、リモートやデジタルはただでさえ遅延が生まれがちです。それがストレスとなって、人々をリモートワークから遠ざけます。

逆を言えば、ストレスフルな遅延をできるだけなくす方向に努力することで解消できます。これをシームを緩和するということでシームレスと呼び、章として扱っています。といっても、難しいことではなく、エンジニアなら省力化へのこだわりは持っているでしょう。そうでなくとも、単に ChatGPT に(から)コピペするのと、Copilot や Cline や Devin などでシームレスに連携するのとでは全然違うはずです。

このような考え方を一般化して、整理しています。デフォルト・リモートを実現するためには、万人がリテラシーを身につけねばなりません。シームレスの考え方もその一つです。

役割分担

デフォルト・リモートを始め、多様な働き方を阻む最大の障壁が「多様性の欠如」です。出社する人も、リモートで居たい人も、どちらも共存すればいいのに、その程度もできていないのが現状です。技術を知らないというよりは、単にそういう発想がないのがまず第一に挙げられます。「単一のあり方のみ許容する」モデルであるためです。

あずはこのあり方を壊して、多様なあり方を許さねばなりません。もちろん、許しただけでは収拾がつきません。そこで役割という概念を使います。出社する人、リモートの人には、それぞれ向いているもの向いていないものがあり、それを役割の形で定義すればいいのです。かつ、役割は動的なので、調整は融通できます。

また、エンジニアとして設計に携わる方はお馴染みだと思いますが、AとBを仲介する役割も必要です(どころか重要です)。まさに設計と同じように、組織のあり方も役割ベースで設計していけばいいわけです。

本章では特に「現代の兵農分離」という考え方で、兵士を農民を分けるモデルに力点を置いています。

文字通りの IT リテラシー

IT リテラシーというと広域な知識・スキル・その他素養全般を指すと思いますが、リテラシーには「読み書きの能力」との意味があります。ならば、IT リテラシーとは「IT を用いた読み書きの能力」とも言えると思います。

これを「文字通りの IT リテラシー」と呼んでおり、デフォルト・リモートでは非常に重要です。というのも、リモートとは IT を使った読み書きにほかならないからです。読み書きから逃げてはいけないし、できないならできるようになるべきです。

この現実と向き合うために、文字通りの IT リテラシーの鍛え方や向上のさせ方(道具)を学びます。

※余談ですが、本書のスタンスは多様性であり、「絶対身に付けないといけない」ほど強く主張はしていません。どうしても無理な場合は、役割分担をすればいいのです。たとえば読み書きをせず、出社して聞く・話すばかりしている人がいても構いません。重要なのは、そういう人がいてもデフォルト・リモートが成立するような連携をつくることです。そういうわけで、連携――特に分担や仲介という発想は、本書ではよく登場します。

おわりに

コミュニケーションという当たり前の営みを疑い、技術的に再構成してみることでリモート・デフォルトが可能だとわかるでしょう。現代だからこそリモートであるべきです。働き方を再考してみませんか?

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