公開中のiOSアプリに知的財産権の侵害でAppleからメールが来ました
※ 技術記事にするか、Idea記事にするか悩みましたが、一応App Store申請に関わることなので技術にしました
Appleからメールが来ました
2020年にApp Storeにあげた個人開発のiOSアプリに関して、Appleからメールが来ました。
差出人名は、「App Disputes」となっていて、タイトルは、
Apple Inc. (our ref# APPXXXXXX) Notice of Complaint
でした。
メール内容も長文で、僕の英語力だとすぐには読解できませんでしたが、明らかに厄介な内容なのは確実でした。
※ID/個人情報に関わる部分は適宜ボカしています。また、ZennのMarkdownが効いてしまう記号の前にはエスケープ文字を入れています。
あとは原文ママです。
Dear Sir or Madam,
**
Please include APPXXXXXX in the subject line of any future correspondence on this matter.**
On 1/11/2021, we received a notice from company A (“Complainant”) that Complainant believes your application named "Like Paper" infringes Complainant’s intellectual property rights. In particular, Complainant believes you are infringing its trademark, thereby blocking Complainant from using it on the App Store.
Developer: Shetomi
Provider: Shetomi|xxxxxxxxxx|x
App Title: Like Paper
Apple ID: xxxxxxxxxxx
`-You can reach Complainant through person A (email: xxxxxx@xxxxxx.com), B (email: xxxxxxxxx@xxxxxxxxx.com), or C (email: xxxxxxxxx@xxxxxxxxx.com), copied on this email. Please exchange correspondence directly with Complainant.
We look forward to receiving written assurance that your application does not infringe Complainant's rights, or that the parties are taking steps to promptly resolve the matter. If you wish to free up your app name for use by Complainant, you will need to either rename or delete your app. Please see the App Store Connect Developer Guide for instructions https://developer.apple.com/support/app-store-connect/, and keep us apprised of your progress.
Please note that during the course of this matter:
`1. Correspondence to Apple must include the reference number noted above in the subject line and copy the other party. All correspondence sent to Apple may be shared with the other party.
`2. Written assurance of rights may include confirmation that your application does not infringe Complainant’s rights, an express authorization from Complainant, or other evidence acceptable to Apple, and should include documentation wherever possible.
`3. Developers with a history of allegations of repeat infringement, or those who misrepresent facts to Apple and/or the Complainant are at risk for termination from the Developer Program.
`4. Failure to respond to the Complainant or to take steps toward resolving a dispute may lead to removal of the app(s) at issue as in violation of the App Store Review Guidelines and/or the iOS Developer Program License Agreement. Please keep Apple apprised of your progress.
Thank you for your immediate attention.
Sincerely,
(Apple worker name)
Apple Legal | Apple | One Apple Park Way Cupertino, CA 95014 | mailto:AppStoreNotices@apple.com
The information in this e-mail and any attachment(s) is intended solely for the personal and confidential use of the designated recipients. This message may be an attorney-client communication protected by privilege. If you are not the intended recipient, you may not review, use, copy, forward, or otherwise disseminate this message. Please notify us of the transmission error by reply e-mail and delete all copies of the message and any attachment(s) from your systems. The use of the sender's name in this message is not intended as an electronic signature under any applicable law. Thank you.
メールを解読する
全文和訳するのはムダなのでしませんが、ポイントは、
- AppleがA社から知的財産権侵害のクレームを受けたので連絡しました
- A社はあなたのアプリがA社の商標を使っており、そのためにA社がApp Storeで商標が使えないと主張しています
- クレーム申請者はA社のA, B, Cなので、直接やりとりしてください
- Appleはあなたのアプリが権利を侵害していない証明書の提出か、でなければ適切な対応がとられることを希望します
- もしあなたがA社のためにアプリ名を放棄するならば、アプリをリネームするか削除するか対応してください
というところでしょう。
事情はよくわかりませんが、とりあえず僕の個人開発アプリが知的財産権侵害でApple経由でクレームを受けているという状況は飲みこめました。
このメールは本物か?をまず確認
とはいえこんなことはじめてですし、そもそも知的財産権の侵害なんてしてません。
僕のアプリはApple提供のフレームワークしか使っていません。
中身のデータも、ユーザーがApp Storeから落とした段階ではほぼ空で、ユーザーがノート作成してはじめてデータが保存されるので、そもそも権利を侵害しようのないつくりです。
強いていえばアイコンがPagesの丸パクリなので、その点で怒られることはあるかもしれませんが、A社から言われることではありません。
最初は詐欺を疑いました。
あるいはパテントシャーク(あらかじめ特許を大量に取得しておいて、後からビジネスはじめた人に対して訴訟を起こすことで儲けようとする人)的な人。
まずメール本文にあるA社を検索しました。
確かに実在するIT企業でした。
しかし、何をどう見ても僕の個人アプリとは無関係のビジネスをやっている会社です。
次にApp Store Connectで自分のアプリステータスを見ました。
公開停止になっているんじゃないか? と思いましたが、App Store Connectで見ると何の変化もありません。
メールの文面だけだと、何が問題なのかよくわからなかったので、App Store Connectで詳しい説明があったら嬉しかったのですが、それもありませんでした。
メールの文面でGoogle検索をかけると、日本語情報は出てきませんでした。
(なので、この記事を書く意味があるかと思って今書いています)
英語でこんな記事が出てきます。
とりあえず即時公開停止にはならなさそう、というのはわかりましたが、結局僕がなんでクレーム受けているのかは不明なままでした。
あとは中国の質問サイトで、メールの文面をまるっと貼ってる人がおり、上記のAppleからのメールが捏造ではなく、どうやら本物らしいことはわかりました。
メールに返信する
色々調べた結果、メールはたぶん本物だと判断しました。
ただなぜ怒られているのかはわかりませんでした。
メールの中にも「Please exchange correspondence directly with Complainant」と書かれていたので、全員に返信して聞いてみることにしました。
するとA社の人から早めに返信が来て、事情が理解できました。
Appleからのメールと違ってテンプレ文ではないので、引用は避けますが、こんな感じです。
「Appleのメールは誤解を招く内容だったので説明させてください。
我々は同名のアプリをApp Storeに上げようとしたところ、あなたのアプリがあるので、アップロードできませんでした。
我々は既に商標をとっていて、アプリ名の権利は我々にあるので、リネームして欲しいです。
アプリの内容自体は全く別のものであって、我々はあなたと争いたい訳ではなくて、単にアプリ名の競合が起きてるのを解決したいだけです!
ちなみにあなたがアプリ名をLike Paperにした9月(※)より前に我々は商標をとってます!」
※アプリの公開は2020/5で、当初のアプリ名が英文法的におかしかったので、2020/9にLike Paperに変更した経緯があります
アプリ名をリネームする(2回目)
事情は飲みこめました。
名前を変えたくはなかったですが、ビジネスでやってる人らを、個人開発でやってるアプリでジャマするのもよくないなーくらいの気持ちで、改名することにしました。
面倒ごとに巻きこまれるのも嫌ですからね。
公開済みのアプリをリネームする作業は、下記に要領を書いておきました。
「こんな作業二度としないだろうけど、レアな体験だから書いとけば誰かの役に立つかなー」程度の気持ちで書いた記事でしたが、
まさか三ヶ月後にまたリネーム作業してるとは思いませんでしたね。。。
アプリ名考えるのも大変でした。
僕の中ではLike Paperで定着していて、それ以上の名前が最初思いつきませんでした。
結局Pieces of Paperとしました。
Piecesのスペルが毎回書けないのが地味にイヤなんですが、まあいい名前になったかなと思います。
しかも前回よりも機能的に色々追加していて、iCloud部分とかGithub ActionsのCI基盤とか、色々影響する範囲が広がっていて、3〜4時間ぐらいかかる作業になりました。
円満解決した
で、改名したアプリをStore申請して、公開済になったタイミングでA社に連絡して、円満解決しました。
よかったですね。
App Store Content Disputeについて
今回の件があって知ったのですが、App Storeには知的財産権侵害についての窓口があるみたいです。
今回は僕が訴えられた側でしたが、訴える場合は上記のフォームから申請すると、相手に僕がもらった感じのメールが飛ぶ運用になっているのだと思われます。
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