[改正民法に注意!] Zenn.devの利用規約を眺めながら利用規約の注意点を考察する

公開:2020/09/20
更新:2020/09/22
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[改正民法に注意!] Zenn.devの利用規約を眺めながら利用規約の注意点を考察する

自己紹介

はじめまして(゜-゜)
坂ラッシュと申します。
情報や統計、法学に興味を持つ人です。
これまで幾つかのMinecraft関係のフォーラムで利用規約を書いてきました。(報酬をもらうと犯罪なので、あくまで助言をしながら無料で手伝いました。)
なお私は法律家、実務家として仕事をしているわけではありません。あくまで自ら勉強した範囲での見解となります。内容については保証しかねますので、ご注意ください。

はじめに

さて、新進気鋭のZenn.devさんへの初投稿となります。記事投稿時現在、公開されてあまり時間が経っていません。ご覧になるユーザーのほとんどの方は、つい最近ユーザー登録をされたと思います。
皆さんはユーザー登録の際に、利用規約をお読みになりましたか?

利用規約は 定型約款 と呼ばれる 契約書 であり、法的な争い事が起きた際には強い効力を持つものです。また、サービスの運営者にとっては自らを法的に守り、ユーザーに安心を提供するための道具となり得るものです。しっかりと不備の無い利用規約を作成するという作業は、ウェブサービス作成上の重要なプロセスなのです。

Zenn.devの利用規約

私は、運営母体が大きな会社でないウェブサービスを見つけると、利用規約を読んでしまう癖があり例によって、Zenn.devさんの利用規約も拝見してみました。
利用規約を作成する際は、どのような点について利用規約作成者は注意するべきなのかを議論していきます。

まず、読んでみると全体として、有名なウェブ上の利用規約テンプレートを使用していることが分かります。
このテンプレートを使用しているウェブサイトは非常に多いのですが、私はこのテンプレートには、大きな問題があると考えています。改正民法に対応出来ていない項目があると見受けられる点です。

2020/04/01から、大幅に改正された民法が施行となりました。この改正民法では、消費者保護の視点から、インターネット上の利用規約を含む「定形約款」(ていけいやっかんと読みます)についての項目が整備され、今まで適当なことを書いていた利用規約では通用しなくなりました。

重要な規定・変更点

改正民法において制定された定形約款において、以下の効果に特に注意する必要があります

  1. 今まで契約を結べていたか不透明であった規約について、定型約款という形で確かに契約を結ぶことが出来る(運営にとって嬉しい)
  2. 一方的な条項が無効化される (消費者にとって嬉しい)
  3. 一方的な規約の変更が無効化される (消費者にとって嬉しい)

順に解説していきます。

1. インターネットの利用規約が定型約款として規定された

これまで利用規約が、どのタイミングで、どのように契約として締結されているのかが明らかでないケースが存在しました。つまり、幾ら利用規約で「責任を負わない」と言っていても、そもそも「契約していない」と主張される可能性が残り、これではサービス運営者は困ってしまいます。

そこで、改正民法では定型約款に値するかどうかの条件が追加されました。詳しくはここでは触れませんが、インターネットの利用規約は通常の運用(ユーザー登録の際に同意してもらう等)を行えば、十分に定型約款として効果を有するようになりました。ある程度安心出来るようになりました。

2. 一方的な条項が無効化されるようになった

サービス運営者が改正民法について、最も気をつけなければいけない効果です。

改正民法第548条の2、第2項には以下のように記されています。(抜粋)

相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

「相手方の利益を一方的に害すると認められるもの」にはよく利用規約に記されている、「故意・過失を問わずサービス運営者は一切の責任を負いません。」等があたります。

つまり、一方的な免責事項や、一方的に多額の金銭を請求するような不当な条項は、同意していなかったものとみなされ、裁判においては無効化されてしまいます。

これを回避する方策として免責事項を「故意または重過失を除く一切の損害について、サービス運営者は責任を負いません。」と定めることが提唱されています。

3. 一方的な変更が無効化されるようになった

今までの利用規約には、「利用規約はサービス運営者によって、通知なく変更される可能性があります。利用規約が変更された時から、ユーザーは新しい利用規約に同意しているものとみなします。」といった項目がよく見受けられました。

考えてみればすぐ分かりますが、これはあまりに乱暴です。利用規約を全てとっかえてしまえば何でも出来てしまいますよね。
そのような暴挙は無効化され、変更のための条件が追加されました。
利用規約を変更する際は、以下の点に注意しましょう。

まず、原則として、利用規約を変更する際は個別に同意し直してもらう必要があります。

そして、例外として、以下の条件のどちらかに当たる場合は、後述のプロセスを適切に踏むことで、個別の同意なく利用規約を変更することが出来ます。

  • 相手方(消費者)にとって、一般の利益に適合する場合
    これは、ユーザーにとって利益しか無い変更のことを指します。例えば「詐欺された場合は当社が負担します」のような内容のものが考えられます。
  • 変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合
    これについては判断が難しいケースが多いのですが、少なくとも利用規約の表記ゆれを修正する等は問題ないと思われます。

そして、変更する際は以下のプロセスを踏む必要があります。

  • 適切な効力発生時期を定めること
  • 定めた変更内容と効力発生時期を、適切な方法で周知すること

この規定は、ユーザーにとって利益のあるような変更しかないのであれば、別に同意なく合意したものとみなしてもいいよね、という「みなし合意」と言うものです。

これに当たらない場合は、個別に同意を取り直す必要があります。気をつけましょう。

Zenn.devの利用規約を見直して

さて、とても長い遠回りをしました。
これら改正民法の注意点を踏まえ、Zenn.devの利用規約を見直してみます。

まず、同意を取るプロセスですが問題は直ちにやばそうな問題は無さそうです。
「Sign in」を押した時に、同意してから押せと言われましたから。

次に、利用規約の一方的条項についてです。
テンプレートの方にある免責事項は大幅に削られ、そもそも免責事項については、第三者とのやり取りに関する規定のみになりました。
また、免責事項について各項に個別具体的に書かれるように変更されているのが分かります。
これにより包括的な免責事項で、一方的で違法な条項となるのを防いでいるようです。
確かに改正民法には対応していますが、これで十分な訴訟リスクを回避出来ているのか?という点は疑問です。ある意味自己犠牲感があります。

最後に、変更方法についてです。ここは少し問題がありそうです。

運営者は、必要と判断した場合には、利用者に通知することなくいつでも本規約を変更することができるものとします。ただし、利用者にとって不利益となる利用規約の変更(手数料の値上げなど、利用者の支払い額および受け取り額の変更を含みます。)については、十分な猶予期間を持って本サイトやメールにより利用者に周知するものとします。

まず、テンプレートにあった「当社は,必要と判断した場合には,ユーザーに通知することなくいつでも本規約を変更することができるものとします。」という条項は削除され、不利益でない変更のみをいつでも可能なものとしていますが、これだけではいけません。

十分な猶予期間を持ち、周知するとはしていますが、ユーザーにとって不利益であるかどうかに関わらず、猶予期間を持って周知しなければいけません。

そして、ユーザーに不利益がある場合は、個別に同意を取り直す必要があるのです。
私の見解が間違っていなければ、これは不当な条項として無効となってしまいます。

もしZenn.devの開発者さんがご覧になっていましたら、修正を検討なされる事をおすすめします。

なお、繰り返しになりますが私は法律の専門家ではありません。詳しくはやはり弁護士さん等の専門家に依頼し、意見を仰ぐことが何よりも重要となるのは言うまでもありません。(法律を勉強し始めてから実感しましたが、本当に弁護士先生の方々の勉強量は計り知れません、尊敬します。)

2020/09/22追記

GitHub上のZenn-docsリポジトリにissueを投げていましたが、顧問弁護士を付けて、対応なされるという事です。良かった!お疲れ様です。

最後に

ここまでお読みくださりありがとうございました。
法律をかじった素人が、新しいサービスの重箱の隅をつつく記事でした。

しかし、やはり利用規約のテンプレートを何も考えずにサービスに乗っけるのは辞めたほうがいいでしょう。

2ch創設者のひろゆき氏が大量の訴訟を受けたことからもわかるように、サービスの運営(特に投稿サービス運営者)には、常に法的なリスクがつきまとっています。

また、これを軽減するためにプロバイダ責任制限法というものが作られており、一定の条件を満たし、一定の義務を果たすことでこの責任を免責してもらうことが可能となります。

これもまた軽く記事数枚分のボリュームがありますので、ここには記しませんが、適切な処置をしないとこの恩恵を受けることは出来ません。是非調べてみましょう。

新サービスやスタートアップと法的なコンプライアンス問題は切っても切り離せないものです。

体力があればまたヨーロッパの個人情報保護に関する規則であるGDPRやプライバシーポリシーに関して、サービス運営者と密接に関わるプロバイダ責任制限法等の法律についても、記事を投稿していきたいと思いますので良かったらフォローみたいな事をお願いします。(そんな機能あるんですか?)