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普遍性と意外さ(General and Surprising)

2024/12/15に公開

これは ポール・グレアム翻訳 Advent Calendar 2024 14日目の記事です。


2017年9月

最も価値のある洞察とは普遍的でありながら意外性のあるものです。例えば、F = maのような法則がそうです。しかし、普遍的で意外性のある洞察を得るのは非常に難しいものです。そのような洞察は非常に価値が高く、すでに開拓し尽くされているからです。

人々ができるのは通常、どちらか一方だけを達成することです。つまり、意外性はあるが普遍的でない(噂話のような)か、普遍的だが意外性のない(決まり文句のような)かのどちらかです。

興味深いのは中程度の価値を持つ洞察です。これは、欠けている要素を少しだけ補うことで得られます。よくあるのは普遍性を少し加えるケースです。例えば、単なる噂話ではなく、世界について何か興味深い教訓を含むような話です。もう一つのあまり一般的ではない方法としては、最も普遍的なアイデアに着目し、それについて新しい視点を見出せないか探ることです。これらのアイデアはすでに十分に普遍的なので、わずかな新しさを加えるだけでも有益な洞察が生まれる可能性があります。

ほとんどの場合得られる新しさはわずかなものでしょう。この方法を取ると、既存のアイデアとよく似たものになりがちです。時には、すでにあるアイデアを再発見しただけだと気づくこともあります。しかし、落胆する必要はありません。たとえわずかでも新しい何かを思いつけた時、それが持つ大きな価値の可能性を忘れないでください。

付け加えると、扱うアイデアが普遍的であればあるほど、同じことを繰り返し言うことを気にする必要はありません。十分な量を書いていればそれは避けられないことです。私たちの頭脳は年々大きく変わるわけではなく、受ける刺激も同様です。以前言ったことと似たことを言ってしまうと、自己剽窃をしているような後ろめたさを感じることがあります。しかしそれは理にかなっていません。二度目は必ず表現が変わるものですし、その違いこそが重要な新しい視点をもたらす可能性を高めるのです。

そしてもちろんアイデアは新しいアイデアを生みます(これも聞き覚えがありますね)。わずかな新しさを持つアイデアが、より大きな新しさを持つアイデアへとつながることもあります。ただしそれには継続が必要です。だからこそ、自分が見つけたことに「あまり新しくない」と言われても落胆しないことが特に重要なのです。最も普遍的なアイデアについて語るときには「あまり新しくない」というのも立派な成果なのです。

太陽の下に新しいものは何もない、というのは正しくありません。確かにほとんど新しいものがない分野もあります。しかし「何もない」と「ほとんどない」の間には、太陽の下の広大な領域を考えれば大きな違いがあるのです。

謝辞

Sam Altman、Patrick Collison、Jessica Livingston に原稿を読んでもらったことに感謝します。

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