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オイラー標数 - 位相幾何学

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今回は筆者が最近読んでいる「トポロジーへの誘い」から、位相幾何学について学んでいることを共有する。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8668.html

位相幾何学とは (ごく簡単に)

そもそも位相幾何学を考える際には、普通の幾何学とは異なり図形を変形させても問題ない。例えば、正方形の4つの頂点から隣りあう2つの頂点を選んだ場合に、「どちらも直角」や、「その頂点から対角線を引くとその交点は直下うに交差する」などは正方形固有の性質であって、正方形を変形させてできる(膨らませてできる)円では成り立たない(そもそも頂点がない)。それに対して、位相幾何学では、"変形を施した場合にも変わらない"性質 (=位相不変量)を探求する。
ここで、位相不変量は、ある図形を連続変形 (切ったりしない) させた場合に変わらない図形の量的性質である。

オイラー標数

ここでは位相幾何学の代表的な定理について紹介する。オイラーの多面体定理を知っている方も多いかもしれない。正n (n= 1,2... ) 面体の頂点の個数、辺の個数、面の個数をそれぞれ用いて、

(頂点の個数) - (辺の個数) + (面の個数) = 2

が成り立つ、という式である。例えば、サイコロのような正六面体は、頂点/辺/面の個数がそれぞれ、8/12/6 であるので、8-12+6=2 となって、上式は成り立っている。

ところが、本によれば、本来の"オイラーの多面体定理"は位相幾何学の立場に立っている、という点で上のよく知っている書き振りとは少し異なる。

【オイラーの多面体定理】
球面を分割して得られる多面体の頂点の数を\alpha_0 個、辺の数を\alpha_1 個、面の数を\alpha_2 個とすると、
\alpha_0 - \alpha_1 + \alpha_2 = 2
が成り立つ。

本来のオイラーの多面体定理は、位相幾何学の立場で多面体を球面と捉え直すことを考える。そうすれば、多面体の頂点や辺の個数を数える問題は、球面をどのように分割するかという問題に帰着される。したがって、オイラーの多面体定理で得られる結果は、「ある図形X (ここでいう球面のこと) を分割して、\alpha_0 - \alpha_1 + \alpha_2 を得るとき、この数は図形X だけで決まり、分割の仕方に依存しない」というものである。この数 \alpha_0 - \alpha_1 + \alpha_2 をオイラー標数と呼び、e(X) で表す。
つまりこのオイラー標数は「分割する対象」によって変化しうる指標である。例えば、p 個の穴が空いた曲面 X_p のオイラー標数は

e(X_p) = 2-2p

で表される。p=1 の場合はトーラスと呼び、一般的にはドーナツ状の形状をしている。このp は種数と呼ばれ、曲面の形と、一対一対応している。
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4369214

さらに一般化してオイラー標数を考える。
まず、"単体"を定義する。これは要素的な図形を指し、0 次元の単体は点、1 次元の単体は線分、などと呼ぶことができるとする。さらにこれらをまとめてn- 単体と呼ぶ。
さて、n 次元空間の中にある図形X があり、それらを有限個の単体の集まりに分割するとする (球面を分割します、という先ほどの話に対応している)。この時の図形X を多面体と呼びなおす。ここでは、X は二次元や三次元の球面のことだけではなく、より一般的である。X を分割した結果、0- 単体(頂点)が\alpha_0 個、1- 単体(辺)が\alpha_1 個、2- 単体(面)が\alpha_2 個...というようにn- 単体が\alpha_n 個得られたとする。奇数次元にはマイナス、偶数次元にはプラスの符号を付して和をとった交代和

\alpha_0 - \alpha_1 + \alpha_2 -\alpha_3 +...+ (-1)^n \alpha_n

のことを図形X のオイラー標数と呼びe(X) で表す。なお、このオイラー標数e(X)は、Xの位相不変量である。

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