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イベントストーミングを活性化するために考えるべきこと

2024/08/18に公開

はじめに

ここ最近、ドメインを分析する手法としてイベントストーミングを紹介する書籍が増えてきました。
この記事ではお題をもとに、イベントストーミングの始めの1歩である「イベントを書き出す」ところで立ち止まりがちな方を対象として、それを乗り越える方法を提案します

お題

組織の生産性向上のため、従業員の能力と、各部署の業務に必要な能力をもとに従業員にあった部署を提案するシステムを作る

イベントストーミングの難しさ

このお題を見て、どのようなイベントがあるか思い浮かぶでしょうか(自分はできなかった…)
書籍では、主に既にある業務のシステム化であったり、都合よくドメインエキスパートがいたり、
という前提で説明が進みます。
ただ、新規のサービスであったり、未知のドメインである場合はいきなりイベントを書き出すというのは難しいでしょう

基本に立ち返る

このようなときは、すぐにイベントストーミングを始めるのではなく、基本的に立ち返ることが大切です。
基本とは何か、それは「なぜ作るのか」を考えることです。
みなさんはなぜプロダクトを作るのでしょうか。
それは、たとえば「ユーザの体験価値の向上」であったり、「ユーザの不利益を解消するため」であったりすると思います。
それを生み出す仕組みを構築することがみなさんに求められていることです。
ということは、開発したプロダクトは、「ユーザの体験価値を向上する」や「不利益を解消する」ようなイベントを発生させるはずです。
つまり、イベントストーミングにおいて、最終的に発生させるべきイベントが書き出せない場合は、「なぜ作るのが不明瞭な状態にある」と言えるかと思います。

イベントストーミングとは、特定の目的を達成するための仕組みの全体像を「イベントから捉えようとする営み」であると私は考えています。

ユーザーストーリーマッピングの活用

「なぜ作るのか」を考えるには、ユーザーストーリーマッピングを活用すると良いでしょう。
ストーリーから「なぜ」を理解し、それを生み出すイベントを考えていきます。

次のようなストーリーを考えます。

従業員は自分に合った部署を見つけることができる。自分の能力を活かして大きな成果を出したいからだ

では、このストーリーを実現するイベントとして「従業員に合った部署の一覧が表示された」というイベントを考えたとして、ここからイベントストーミングは捗るでしょうか。
できる人はできるかもしれませんが、このイベントを1つ書き出したところで、それにつながるイベントを考えていくことは、まだ難しいでしょう。これは、まだ「何を」に着目し過ぎていて「なぜ」に注目できていない時に陥ることが多いように思われます。
このストーリーで重要なのは「部署を見つけることができる」ではなく、後半の「自分の能力を活かして大きな成果を出したい」の部分です。
ここがユーザが本当に求めているところです(最初に「組織の生産性向上のため」ともいっていますからね)
したがって、「能力を活かして大きな成果を出す」が本来達成したい大きなストーリー(エピック)であり、「自分に合った部署を見つけられる」はエピックの中のストーリーの1つである、ということになります。
では、このエピックには他にどのようなストーリーが考えられるでしょうか。

  • 異動の希望を出せる
  • 希望の部署の部長と面談できる
  • 仮異動(試用期間のようなもの)できる
  • 異動の確定ができる

のようなストーリーが考えられるかもしれません。
上記のストーリーを実現するイベントを書き出すと以下のようになりました(ストーリーの記述は簡略化しています)

実際にはこの流れで異動したからといって成果を出せるとは限らないので、フォローアップの仕組みなどが必要になりそうですが、一旦そこは置いておきましょう。
さて、このように分析をしたあとにイベントストーミングをしてみるとどうでしょう。
「部長との面談日時を設定した」のイベントが発生する前に必要となるイベントには「希望の面談日時を選択した」といったイベントがありそうです。「異動の希望をだした」のあとには、たとえば所属している部長や人事部の承認が必要かもしれません。
最初の何もない状態からイベントストーミングをするよりも、かなりイメージがしやすくなったのではないでしょうか。

まとめ

  • イベントストーミングをする前に「なぜ作るのか」を考えましょう
  • 「なぜ」を考えるきっかけとして、ユーザーストーリーを活用してみてはどうでしょう
  • ユーザーストーリーでも重要なのは「なぜ」の部分です
  • イベントはストーリーの実現に直接結び付くものから考え、そこから連想していくと考えやすくなります

最後に

今回はイベントストーミングの導入部分の難しさに注目して、ユーザーストーリーを活用することで解消できるのでは、という提案をまとめてみました。
イベントストーミングは、書籍では簡単そうに書かれていますが実際にやってみるととても難しいものです。
何回も実践していき、ものにしていきましょう。
この記事では導入部分を扱いましたが、ここから先についても気付きが出てきたらまとめようと思っています。

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