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ホームサーバー完全構築ガイド #3 サービス群の選定

2024/12/07に公開

ホームサーバー完全構築ガイド シリーズ記事:

ホームサーバー完全構築ガイド #0 計画とハードウェア選定
ホームサーバー完全構築ガイド #1 OS導入と基本設定
ホームサーバー完全構築ガイド #2 インフラの構築
ホームサーバー完全構築ガイド #4 WordPressのデプロイ
ホームサーバー完全構築ガイド #5 情報収集システムの構築
ホームサーバー完全構築ガイド #6 クラウドストレージの構築
ホームサーバー完全構築ガイド #7 DevOpsプラットフォームの構築

はじめに

前回の記事では、ホームサーバーのOS導入とインフラ設定について詳述しました。今回は、自分の経験から、エンジニアとして、実際にホームサーバーでデプロイするサービスの選択理由とデプロイ手順について解説します。

TLDR 選定したサービス

サービス群の選定方針

ホームサーバーにおけるサービス選定の際、以下の観点から検討を進めると考えています。

1. ニーズに基づく

まず、最も重要なのは、ホームサーバーで実現したいコアな目的を明確にすることが重要である。例えば、情報管理、ファイルストレージ、プロジェクトの共同作業、自動化などが挙げられる。具体的なニーズを明確化することで選択肢を絞り込み、各サービスが設定した目標に沿った形で機能するように選定でき、リソースの無駄も防げる。

2. リソース効率

#0章で紹介した自分のホームサーバーのスペックのように、これらの小型PCは、CPU、メモリ、ストレージなどのリソースが限られていることが多いため、軽量で高性能なサービスを選ぶことが非常に重要である。効率の良いサービスは、応答速度の向上やリソースの節約につながり、複数のサービスを同時に稼働させる際のボトルネックも抑えられる。また、効率の高いサービスは維持管理の負担を軽減し、長期的なコスト削減にもつながる。

3. データプライバシーと自主コントロール

ホームサーバーの利点の一つは、データを完全にコントロールできる点である。そのため、サービスを選定する際には、データプライバシーと安全性の観点から、ホームサーバーでホスティング可能なツールを優先的に検討するのが望ましい。パブリッククラウドや第三者プラットフォームに比べて(適切なセキュリティ設定が施されている場合)、ホームサーバーはデータ漏洩のリスクを抑えやすく、データ利用の自主性も確保されるため、柔軟な調整や拡張も容易である。

4. 拡張性と適応性

将来的なニーズの変化を考慮し、サービスの拡張性適応性も重要な検討ポイントである。拡張性が高いサービスは、機能追加やニーズの変化に柔軟に対応できるため、頻繁なサービスの変更や再設定の手間を減らすことができる。また、拡張性が高いツールはさまざまなワークフローに適応しやすく、全体の柔軟性向上にも寄与する。

5. 使いやすさと管理の容易さ

また、ホームサーバーは限られた管理リソースで運用され、複雑な管理プロセスを必要としないため、サービスの使いやすさ管理のしやすさが特に重要である。可能であれば、グラフィカルユーザインターフェースを備えた管理ツールや、自動化設定オプションのあるサービスを選定することで、日常の操作や設定が簡略化され、利便性が向上する。

6. セキュリティとメンテナンス

ホームサーバーでは、特に外部向けのサービスにおいて、セキュリティが極めて重要である。サービス選定時には、定期的に更新され、安全メンテナンスがされているプロジェクトを優先的に検討し、脆弱性や潜在的なセキュリティリスクに対処できる環境を確保する。活発なコミュニティと定期的なアップデートがあるプロジェクトは、安定性と安全性を備えた利用環境を提供してくれる。

7. コミュニティサポートとドキュメントの充実度

強力なコミュニティサポートと充実したドキュメントは、操作や問題解決の手間を大幅に軽減する。特にオープンソースのプロジェクトの場合、活発なコミュニティを持つサービスは、問題が発生した際に迅速に解決策や参考資料を見つけやすく、安定的かつ長期的な利用の信頼性を高める。

選定したサービス

上述の基本指針に基づき、ITエンジニアとして、情報収集、情報管理、プロジェクト管理、ファイルストレージ、自動化といったニーズに応えるため、以下のサービスを選定した。

1. WordPress - ブログ構築のためのCMS

  • 機能:WordPressは、柔軟で多機能なCMS(コンテンツ管理システム)であり、個人ブログやウェブサイトを簡単に作成できる。豊富なプラグインとテーマを使って、デザインや機能のカスタマイズも自由に行える。
  • 選定理由:自己ホスティングが可能で、データを完全にコントロールできるため、プライバシーを確保しながら個人コンテンツを管理できる。また、開発ドキュメントが充実しており、活発なコミュニティがサポートしているため、学習曲線が緩やかで、フロントエンドのカスタマイズがしやすい。さらに、バックエンドのセキュリティ更新の手間が少なく、リッチテキストエディターも充実しているため、総合的に見て優れたブログプラットフォームであると評価できる。

2. RSSHub - カスタムRSSフィード生成ツール

  • 機能:RSSHubは、標準のRSSフィードが提供されていないサイトからもRSSを生成できるツールで、さまざまな情報源をRSSでまとめることができる。
  • 選定理由:RSSHubを使えば、通常はRSSを提供していない情報源も含めて、さまざまな情報源をRSSフィードとして統一的に管理できる。情報収集の範囲を柔軟に設定でき、自分専用の日常情報フィードを構築できる点が便利である。特にエンジニアにとって効率的な情報収集手段として役立つ。

3. FreshRSS - 自前管理型RSSリーダー

  • 機能:FreshRSSは自己ホスティングが可能なRSSリーダーで、サーバーに直接インストールして利用できる軽量な情報管理ツール。
  • 選定理由:プライバシーを確保しながら情報を収集・整理できるため選定。軽量で動作が早く、必要なフィードを個別に管理できるので、効率的な情報収集が可能である。さらに、ウェブ版に加えてスマートフォンアプリとも連携でき、自分専用の日常情報フィードアプリとして活用できる点も魅力である。

4. Nextcloud - クラウドストレージ

  • 機能:Nextcloudは、自己ホスティング可能なクラウドストレージとして、ファイル共有や同期、共同編集ができる。Google Driveの代替としても使える。
  • 選定理由:データを外部クラウドに頼らず、安全に管理できる環境が得られる。ファイル管理だけでなく、追加機能(カレンダー、タスクなど)により多機能に活用でき、プライバシーを保護しながら柔軟な管理が可能。

5. Gogs - 軽量Gitリポジトリ管理ツール

  • 機能:Gogsは、自己ホスティング可能なGitリポジトリ管理ツールで、小規模プロジェクトのバージョン管理やコードの保存・共有ができる。
  • 選定理由:小規模なプロジェクトを自己管理するために最小限で必要な機能が揃っている。また、軽量でリソース消費が少なく、ホームサーバー環境に適している点が評価ポイントとなった。

6. Jenkins - 自動化のためのCI/CDツール

  • 機能:Jenkinsは、開発プロセスにおけるCI/CDパイプラインを構築し、自動化を実現するためのツール。ビルド、テスト、デプロイなどの作業を効率化する。
  • 選定理由:ソフトウェア開発の自動化と効率化を目的に選定。柔軟にワークフローを構築できる拡張性があり、自己ホスティングでも安定的な動作が可能。

7. Home Assistant - 自動化とスマートホーム管理プラットフォーム

  • 機能:Home Assistantは、オープンソースのスマートホーム管理プラットフォームで、さまざまなIoTデバイスやサービスを統合し、自動化と管理を一元化することができる。
  • 選定理由:家庭内の各種デバイスを統合して管理するための最適なプラットフォームであり、自己ホスティングが可能なためプライバシーが保たれる。多数のデバイスと連携でき、照明やセキュリティ、エネルギー管理などの自動化が可能で、柔軟なカスタマイズができる点が評価された。

8. Portainer - Dockerコンテナ管理ツール

  • 機能:Portainerは、Dockerコンテナのデプロイ、管理、監視を簡単に行えるツールで、直感的なGUIを提供している。
  • 選定理由:複数のサービスをコンテナ化して管理する際に、Portainerの視覚的な管理インターフェースが役立つ。コンテナの運用が効率化され、サーバー管理の負担が軽減できるため採用。

9. Homepage - ホームページ(スタートページ)ツール

  • 機能:Homepageは、頻繁に使用するツールや情報を一画面にまとめて配置するスタートページで、すばやくアクセスできるようにする。
  • 選定理由:さまざまなサービスやツールに効率よくアクセスするためのホームページとして採用。個人サーバー上のサービスを一元管理し、全体的な使いやすさを向上させる。

他の代替オプション

上記で選定した各サービスには、機能や用途に応じていくつかの代替オプションが存在します。以下は、それぞれのサービスに対する主な代替選択肢です。

1. WordPressの代替サービス

  • Hexo:Node.jsで構築された静的サイトジェネレータで、特にブログサイトに適している。軽量かつ高速で、Markdown形式でコンテンツを管理できるため、開発者に人気。
  • Jekyll:GitHub Pagesに対応した静的サイトジェネレータ。MarkdownやLiquidテンプレートを使ってコンテンツを簡単に管理でき、無料でGitHub上に公開可能。
  • Hugo:Go言語ベースの静的サイトジェネレータで、非常に高速なコンテンツ生成が特徴。大規模なブログや多言語対応が求められるサイトにも適している。

2. FreshRSSの代替サービス

  • Miniflux:軽量でシンプルな自己ホスティング型RSSリーダー。動作が非常に速く、UIも直感的でシンプル。
  • TT-RSS (Tiny Tiny RSS):強力なカスタマイズ性を持つオープンソースのRSSリーダー。自己ホスティングでプライバシーを保ちながら個別のフィードを管理可能。
  • Inoreader:自己ホスティングはできないが、クロスプラットフォーム対応で柔軟なフィード管理が可能。個別のカスタム設定も容易で、クラウドベースでアクセスできる。

4. Nextcloudの代替サービス

  • ownCloud:Nextcloudと似たオープンソースクラウドストレージ。自己ホスティングでファイル共有、コラボレーション機能が備わっている。

5. Gogsの代替サービス

  • GitLab:自己ホスティングも可能なフル機能のGitリポジトリ管理プラットフォーム。特にCI/CD機能やプロジェクト管理機能が強力で、大規模チームに適している。
  • Gitea:Gogsのフォークプロジェクトで、自己ホスティング型の軽量Gitリポジトリ管理ツール。シンプルな操作性と活発なコミュニティによるサポートが特徴。

6. Jenkinsの代替サービス

  • GitHub Actions:GitHub内で直接CI/CDワークフローを構築できる機能。GitHubリポジトリとの統合が簡単で、自動化の構築が容易。
  • GitLab CI/CD:GitLabに組み込まれているCI/CDサービスで、ワークフロー管理がシームレス。特にGitLab環境での利用に最適。

7. Portainerの代替サービス

  • Rancher:KubernetesやDockerコンテナを管理するためのオープンソースプラットフォーム。マルチクラウドや大規模クラスターの管理に適している。
  • Kitematic:Docker公式のGUI管理ツールで、初心者にとって使いやすく、直感的にコンテナ管理が可能。
  • Cockpit:Linuxサーバー管理ツールで、Docker管理機能も備えている。サーバー全体の管理とコンテナの監視が一元化できる。

8. Homepageの代替サービス

  • Dashy:オープンソースのスタートページツールで、ユーザーのニーズに応じてリンクやウィジェットを配置可能。視覚的にわかりやすいダッシュボードを作成できる。
  • CasaOS:ホームサーバー向けのオープンソースホームOSで、直感的なインターフェースとアプリ管理機能を提供。各種アプリやサービスを一元管理し、ホームサーバーの使いやすさを向上させる。

終わりに

ここまで、ホームサーバーに必要な多様なサービスとその選定理由について紹介しました。次のステップでは、各サービスの具体的なデプロイ方法について詳しく解説し、設定や環境構築のポイントを取り上げます。デプロイ方法の紹介が完了した後には、CloudflareZero Trustを活用して、サーバーを外部から安全にアクセス可能にする設定手順も解説する予定です。これにより、外部から家庭サーバーにアクセスする際のセキュリティが強化され、データの保護とプライバシーの確保が可能になります。

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