Alpenglow: Solana の新コンセンサスプロトコル
私たちは誇りをもって、Solana の新しいコンセンサスプロトコルである「Alpenglow」をご紹介したいと思います。Alpenglow は、グローバル規模で高性能を実現するプルーフ・オブ・ステーク型のブロックチェーン向けに設計されたコンセンサスプロトコルです。私たちはこのリリースが Solana にとって大きな転換点になると信じています。Alpenglow は単に新しいコンセンサスプロトコルであるだけでなく、Solana のコアプロトコルにおける史上最大の変更といっても良いでしょう。
Alpenglow への移行にあたっては、従来のコアプロトコルの多くのレガシーコンポーネント、特に TowerBFT と Proof-of-History に別れを告げることになり、その代わりに、投票とブロックのファイナライズロジックを担う新たなコンポーネント「Votor」を導入します。さらに、従来のゴシップベースの通信方式に代わり、より高速なダイレクトコミュニケーション手法を採用します。
大きな変化ではありますが、Alpenglow は Solana の最大の強みを踏襲しています。Turbine はデータ伝播の問題を解決し、Solana ネットワークの成功に大きく貢献してきました。従来の多くのブロックチェーンでは、リーダーがシステムのボトルネックになりがちでしたが、Turbine では各ブロックを小さなピースに分割してエラー訂正符号を付与し、全てのノードの帯域を有効活用してそれらを迅速に伝播させます。Alpenglow のデータ伝播プロトコル「Rotor」も、この Turbine の手法を取り入れつつ、さらに洗練させています。
これらの変更によって、Solana はこれまでにないパフォーマンスレベルに到達します。従来の TowerBFT においては、ブロック生成からファイナライズまでに約 12.8 秒を要していました。レイテンシーを1秒未満の領域にまで引き下げるため、Solana では「オプティミスティック・コンファメーション」という概念が導入されましたが、Alpenglow ではこれらレイテンシーの限界をどちらも打ち破ります。シミュレーション結果では、中央値で約 150 ミリ秒、最速では 100 ミリ秒というファイナリティーを実現できる見込みです。これは、世界中にノードを持つ L1 ブロックチェーンとしては信じがたいほどの低遅延です。なお、これらの数値は、現行のメインネットにおけるステーク分布をもとに計算されたシミュレーション結果であり、計算オーバーヘッドは含まれていません。
中央値 150 ミリ秒というレイテンシは、単に Solana が「速い」というだけに留まらず、Web2 インフラストラクチャと肩を並べる応答性を備えることを意味し、リアルタイム性が求められる全く新しいカテゴリーのアプリケーションへブロックチェーン技術を適用できる可能性を示しています。
上の図は、スイス・チューリッヒにいるリーダーを例に、Alpenglow 各ステージのレイテンシ分布を示したものです。チューリッヒを例に選んだのは、私たちが Alpenglow の開発を行っていた場所だからです。棒グラフは、チューリッヒからの距離順にソートされた世界中のノード分布に対し、各ステージに到達するまでの平均遅延を表しています。
- 緑の棒は、ネットワークレイテンシを示します。現状のノード分布では、約65%のステークがチューリッヒから 50 ミリ秒以内のネットワークレイテンシ範囲にあります。一方、ステークの長いテール部分はチューリッヒから 200 ミリ秒超のレイテンシを持っています。ネットワークレイテンシは自然な下限を成しており、たとえばチューリッヒから 100 ミリ秒離れたノードでは、どのプロトコルでもファイナライズに少なくとも 100 ミリ秒は必要です。
- 黄色の棒は、プロトコルの最初のフェーズである Rotor による遅延です。
- 赤の棒は、全ステークの60%以上からノータライズ投票を受け取るまでの時間を示します。
- 青の棒は、ファイナライズに要する時間を示します。
では、この驚異的なパフォーマンスはどこから来るのでしょうか?
Alpenglow の投票コンポーネントである Votor は、参加ステークが 80% 以上なら 1 ラウンドの投票でブロックを確定し、60% 以上であれば 2 ラウンドで確定します。この二つの投票モードを統合し、同時に実行することにより、より高速なパスが完了した時点でファイナライズが行われます。
また、データ伝播サブプロトコルである Rotor は Turbine のアプローチを踏襲しつつ改良を加えています。Turbine と同様に、Rotor は参加ノードの帯域をステーク量に比例して活用し、リーダーのボトルネックを解消します。その結果、利用可能な帯域が漸近的に最適な形で活用されます。Rotor の設計を支える洞察の一つは、光の速度であっても十分ではなく、情報伝播の遅延においては、伝送や計算の遅延よりもネットワークレイテンシーが支配的であるという点です。Rotor では、Turbine の多層ツリー構造ではなく、単一レイヤーのリレーノード構造を採用して、ネットワークホップ数を最小化し、さらにリレーノードの新たな選定手法を導入することで、耐障害性も向上させています。
Alpenglow は、最新の研究成果を取り入れ、エラー訂正符号を用いたデータ分散と最先端のコンセンサスメカニズムを融合したプロトコルです。1/2 ラウンド統合投票モードをはじめ、これまでにないファイナライズレイテンシーを実現する革新的な工夫を多数導入しています。特に「20+20」の耐障害性は、20%の敵対的ステークとさらに20%の非応答ステークを同時に許容し、過酷なネットワーク状況下でもプロトコルを安定動作させます。他にも、低分散サンプリング戦略などが含まれます。
Alpenglow の詳細はホワイトペーパーにまとめました。その中では、Alpenglow の直感的な説明からプロトコルの定義と擬似コード、シミュレーション結果や Alpenglow の性能を理解するための各種計算、そして正当性の証明までを網羅しています。
Alpenglow のホワイトペーパーはこちらからご覧ください。
(記事の翻訳は以上です)
Paws Validator のご紹介
わたしたちはトップレベルのパフォーマンスと APY を誇る Paws Validator を運営しています。
SOL のステーキングをお考えの方は、ぜひステーク先として Paws をご検討ください🐾
Discussion