TeX/LaTeX ミーム集【初心者向け】
今年の重点テーマは「このパッケージもスゴイ!」
今回紹介するのは、皆様ご存じの scsnowman です!
……
🤔 ワイ初心者、高みの見物
今回は、このようなTeX / LaTeXに関する謎のミームを真面目に解説します。
(ジョークを真面目に解説するという粋と程遠い行為)
ゆきだるま ⛄️
TeX/LaTeXのコミュニティへ立ち入った人への通過儀礼……それがこいつ。
⛄️
某TeX芸人某TeXのすごい人は、こんな感じでEnjoyしています。
これまで数多の☃芸人たちによって,文書組版における “本質的なモノ” すなわち☃を (La)TeX 文書において活用するための素敵なパッケージが開発されてきました.
通称「本質」[1]。
この「素敵なパッケージ」の代表格が scsnowman パッケージです[2]。
% LuaLaTeX
\documentclass[14pt]{ltjsarticle}
\usepackage{scsnowman}
\begin{document}
プレーンなゆきだるま \scsnowman
Let it snow \scsnowman[snow]
あたまを暖かく \scsnowman[hat]
もっと暖かく \scsnowman[hat=true,muffler=red]
ばんざーい \scsnowman[hat=true,muffler=red,arms=true]
\end{document}
なぜ ⛄️ が問題になるのか。その理由は、Unicodeにおいて ⛄️ の字形があまりも多様なことです。
このような問題が起きるのは、フォントによってゆきだるまの字形が全く異なることが原因です。しかも、歴史的経緯によって事態はより複雑になっています:
- 初期の Unicode には「ゆきだるま」は "U+2603 SNOWMAN" 一点だった。
- Unicode 5.2 で日本の ARIB 外字が追加されたことにより "U+26C4 SNOWMAN WITHOUT SNOW" と "U+26C7 BLACK SNOWMAN" が登場。
この時点で、従来のコードポイント "U+2603 SNOWMAN" は突然暗黙に「雪あり白ゆきだるま」になってしまいました*2。結果的に、それ以> 前にデザインされたフォントの中には、U+2603 に「雪なしゆきだるま」のグリフを割り当てたものが一定数存在します。これほどの「字形の多様性」があるのは Unicode の膨大な文字のなかでも☃が群を抜いており、これだけで一記事書けるほど興味深いものです。
この問題を解決する「本質的な」[3]パッケージが、scsnowmanパッケージなのです。
そしてなぜ愛されるのか。私の意見を述べます。
実際のところ、scsnowmanは例示のためになかなか使い勝手のよいパッケージです。「パッケージの使い方」「オプション指定の方法」といった初歩的でメタな解説にも適しています。そして何より、使って楽しいです。
Enjoy! ⛄️ ⛄️ ⛄️
アヒル 🦆
欧米圏のTeXコミュニティで有名(らしい)なミームが、アヒル(duck) あるいはラバーダックです。
どうやら、ゴム(小文字のlatex、ラテックス)とLaTeX(ラテック)を掛けたシャレらしいです。
Rubber ducks can be made of latex, but can they also be made with
? \LaTeX
さきほどのscsnowmanにインスパイアされて、「アヒルをどうやって描画するか?」という議論が起こりました。
その成果物がTikZducks パッケージです。
% LuaLaTeX
\documentclass[14pt]{ltjsarticle}
\usepackage{tikzducks}
\begin{document}
\begin{tikzpicture}
\duck
\end{tikzpicture}
\begin{tikzpicture}
\duck[water=cyan!50!blue]
\end{tikzpicture}
\end{document}
たのしー! 🦆 🦆 🦆
危険な曲がり角 ☡
危なげなTeXコード(正確にはTeX言語のコード)とともに立てられる、謎の看板。
(危険な曲がり角[4])
こいつの正式名称は「危険な曲がり角」。なんとUnicodeに収録されています。Wikipediaにも載っています。
数学における危険な曲がり角(きけんなまがりかど、フランス語: tournant dangereux, 英語: dangerous bend, U+2621 ☡ caution sign)は、フランスの数学者集団であるニコラ・ブルバキによって作られた、Z字型の急カーブの連続を表す道路標識を模した記号である。彼らが書いた数学書の余白に書かれ、一度読んだだけでは分かりにくい箇所や、特に難しい箇所であることを示すのに用いられる。
ブルバキ以外の著者には、この記号に手を加えて使っている者もいる。計算機科学者のドナルド・クヌースは、彼が作成した Metafont と TEX システムに、アメリカ式の道路標識の中に危険な曲がり角が描かれている図を導入している。
LaTeXで使うには、manfntパッケージを使います。その他の記号はマニュアルを参照。
% LuaLaTeX
\documentclass[14pt]{ltjsarticle}
\usepackage{manfnt}
\begin{document}
\dbend
\end{document}
親切なTeX者は、ドキュメントやプレゼンなどにおいて「この箇所は上級者向けですよ」「TeX言語の話をしていますよ」という意味で、この「危険な曲がり角」を示してくれるでしょう。このサインが出てきたら、初心者はスルーしましょう。
寿司 🍣
最後に、調べたけど結局よく分からなかったミームをひとつ(以下、推測です)。
「残念」や「アレ[5]」(あまりよくない、名状しがたい)なことを意味するミームとして 🍣 があります。
※用例が某氏しか思いつかないです。
関連パッケージ・スタイルファイルはいくつかあります。
- zr-tex8r/tcsushihead: To place a sushi flow in the page headers
- LaTeX: Enumeration using 🍣 with aid of coloremoji package
なお「アレ」のニュアンスは、下記からうかがえるかもしれません。TeXはアレ。
おわりに
以上は、昔の私が本当にわからなかったミームでした。結局はお遊びなので知らなくてもいいのですが、知ってるとよりTeX/LaTeXコミュニティを楽しめるんじゃないかと思います。
いいかげん怒られろ
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