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Pandocで参考文献リストを処理する扱う方法 (PandocとZoteroで参考文献:後編)

7 min read

この記事は Pandoc Advent Calendar 2020 の5日目の記事です。

この記事は前編・後編で構成されています(注:余談編が追加されました)。

(余談編にさらっと絶望的な結論が書いていますね……)

後編で説明するのは、Pandocで参考文献を処理する方法です。特に次の前提で説明します。

  • BibTeX形式の参考文献リストを用いる(前編参照)
  • Pandoc's Markdownで原稿を書き、文献を引用する
  • 参考文献スタイルはCSLファイルを用いる
    • Citation Style Languageの略で、参考文献スタイルを定義するために用いられるXMLファイルの一種

ただし「Pandocで簡単!」となる条件があります。それは「参考文献スタイルにあまりこだわりがない」ことです。

たとえば場合によっては次の要件もあります。

論文誌で参考文献スタイル(bstファイル)が指定されているので、これを絶対使いたい

この要件だとPandocを使う選択肢はだいぶ限られます。少なくとも「Pandoc側の参考文献機能(citeproc)を使う」という選択肢はなくなります(詳細は余談編にて)。

Pandocで参考文献リストを生成する流れ

Pandocで参考文献リストを生成するための大枠を説明します。
入力ファイルはPandoc's Markdown (-f markdown/.mdファイル)とします。

  1. 次のファイルを用意する
    • 参考文献ファイル:BibTeX形式 (.bib)
      • 今回はZoteroからエクスポートする(前編)
    • 参考文献リスト用のスタイルファイル:CSLファイル (.csl)
  2. Pandoc's Markdown上で文献を引用する
  3. PandocでPandoc's Markdownを変換する
    • 末尾に参考文献リストが生成される

Zoteroの参考文献をPandocで処理するフロー (citeprocを利用する場合)

次のページを参考文献のサンプルとして利用させていただきました。

電子書籍(EPUB)作成ツール、個人的にTypora+Pandocが最適解の予感|白崎矢宵(やよい)|note

必要なファイルの用意

まず、次のファイルを用意します。

  • 参考文献ファイル:BibTeX形式 (.bib)
    • 今回はZoteroからエクスポートする(前編)
  • 参考文献リスト用のスタイルファイル:CSLファイル (.csl)

参考文献ファイル:BibTeX形式 (.bib)

BibTeX形式のファイルを用意します(book.bibとします)。これを適当なフォルダ(以下、プロジェクトフォルダ)に入れておきます。

book.bib
@misc{shirasaki2020,
  title = {{電子書籍(EPUB)作成ツール、個人的にTypora+Pandocが最適解の予感|白崎矢宵(やよい)|note}},
  author = {白崎, 矢宵},
  url = {https://note.com/yayoi_shirasaki/n/n1b742449599f},
  urldate = {2020-11-26},
  journal = {note(ノート)},
  language = {ja}
}

参考文献リスト用のスタイルファイル:CSLファイル (.csl)

次にCSLファイルも調達してきます。次のサイトで検索ができます。

欧文における有名な参考文献スタイル(シカゴスタイル、APAなど)はだいたい揃っていると思います。しかし和文向けのスタイルの数は少ないです[1]

和文(横書き)で無難に使える参考文献スタイルとして、個人的にはSIST02をお勧めします。SIST02は科学技術情報流通技術基準(SIST)の成果物で、次のような目的・内容を持っています。

技術論文の末尾に参照文献を記述する際に,記述する個々の文献について,書誌的情報として,何を選定すべきか,選定したものの表記法,記載順序,句読点使用法等についての原則と指針を示したもの(電子文献を含む)。

科学技術情報流通技術基準 SIST ハンドブック

SIST02には、sist02.cslというCSLファイルがあります[2]。これをそのままダウンロードして、プロジェクトフォルダに入れておけばOKです。

Pandoc's Markdown上で文献を引用する

いよいよPandoc's Markdownの原稿を書いていきます。

  1. あらかじめZotero側で文献に引用キー(citation key)を設定しておく
    • 前編を参照
    • たとえばfooという引用キーを設定したとします
  2. Pandoc's Markdownで文献を引用する
    • たとえば [@foo] と書けば、出力ファイルでは (1) のように番号が自動的に振られます

2に関しては、前編でQuickCopyの設定をしていれば、Zoteroで文献を選択してCommand-C / Ctrl-Cで [@foo] の形式をコピーできます。

さらに必要なら、入力ファイルの最後[3]# 参考文献 のように、参考文献リスト用の見出しを書いておきます。

... (何かしらの文章の終わり)

# 参考文献

末尾に参考文献リストが生成されてほしくない場合もあります。任意の場所で次のように書けば、書いた場所に参考文献リストが生成されます。

::: {#refs}
:::

例として、Pandoc's Markdownで書かれた次の入力ファイルをinput.mdとします。

input.md
---
title: サンプル
---

> 「このツールを知るだけで世界が変わる人がいるはず」

この言葉は、Pandocで電子書籍を制作された白崎矢宵さんによるものです[@shirasaki2020]。

PandocでPandoc's Markdownを変換する

最後に、Pandocで各ファイルを読み込み、文献リストを生成します。

注意:参考文献処理エンジンの変更 [Pandoc 2.11+]

Pandoc 2.11以前で参考文献リストを生成するには、Pandoc本体に加えてpandoc-citeprocというバイナリが必要でした。オプションとしては --filter pandoc-citeproc を渡していました。

しかしPandoc 2.11以降から、Pandoc内部で参考文献の処理を行うように変更されました[4]。コマンドラインオプションとしては --citeproc (-C) を渡します。

整理すると次のとおりです。

  • Pandoc 2.11以降の場合
    • コマンドラインオプション: --citeproc (-C)
    • フィルタ pandoc-citeproc は不要
  • Pandoc 2.11以前の場合
    • コマンドラインオプション: -F pandoc-citeproc (フィルタを指定する)
    • フィルタ pandoc-citeproc のインストールが必要
      • 公式のGitHub Releasesにあるインストーラやzipを使えば、Pandoc本体と同時にpandoc-citeprocも同時にインストールできます
      • Homebrewなどのパッケージマネージャを使っている場合は、pandoc-citeprocを別途インストールします

コマンド例

順に「HTML」「LaTeXソース」「LuaLaTeXで生成したPDF」を出力するPandocコマンドを挙げます。

# Pandoc 2.11以降
pandoc input.md -s -o output.html --citeproc --bibliography=book.bib --csl=sist02
pandoc input.md -s -o output.tex --citeproc --bibliography=book.bib --csl=sist02
pandoc input.md -o output.pdf --citeproc --bibliography=book.bib --csl=sist02 --pdf-engine=lualatex -V documentclass=ltjsarticle

# Pandoc 2.11以前(要・pandoc-citeproc)
pandoc input.md -s -o output.html --filter=pandoc-citeproc --bibliography=book.bib --csl=sist02
pandoc input.md -s -o output.tex --filter=pandoc-citeproc --bibliography=book.bib --csl=sist02
pandoc input.md -o output.pdf --filter=pandoc-citeproc --bibliography=book.bib --csl=sist02 --pdf-engine=lualatex -V documentclass=ltjsarticle

なお、このコマンド例でPDF出力するにはTeX Liveが必要です(この記事では割愛します)。

--pdf-engine=lualatex-V documentclass=ltjsarticleについては下記を参照してください。

サンプルファイルはGitHubの sky-y/pandoc-advent-2020-zotero に上げています。

HTML出力

(図:HTML出力の例)

LuaLaTeXで生成したPDF出力]

(例:LuaLaTeXで生成したPDF出力の例)

おわりに

前編・後編にわたって、Pandocで参考文献リストをつくる方法について説明しました。軽くおさらいしましょう。

ところで記事の最初には

  • 余談編:Pandocで参考文献が辛い話
    • 結論:既存のBibTeX用参考文献スタイル(bstファイル)を使いたいなら、Pandocの参考文献機能を諦めよう

という項目がありました。これを次回にまわします。

脚注
  1. Zotero Style Repositoryで「japan」と検索した結果は16件でした。 ↩︎

  2. sist02.cslのライセンスはCreative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 (CC-BY-SA 3.0)です。このファイルを編集・改変する際はこのライセンスを継承してください。CSLの編集については余談編で軽く触れます。 ↩︎

  3. 入力ファイルが複数ある場合は、最後のファイルの末尾に参考文献リスト用の見出しを書きます。 ↩︎

  4. citeproc というHaskellライブラリ(パッケージ)が、Pandoc本体の内部で用いられます。 ↩︎

Discussion

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