Talent Management と組織の現在・未来
TL;DR
- マイナスからプラスへの変化としての Talent Management
- プラスからマルチプライアーへの変化としての Talent Management
- Talent Management 導入によって伝えられるメッセージの可能性
はじめに
もともとは Talent Management とかいう幻想をぶっ潰す、みたいなタイトルというか、モチベーションで考え始めたところではあるんですが、それでは生産性がないのでちょっと考え直しているところです。
Talent Management、私はあんまり好きじゃないなぁと思っているところの原因がどこら辺にあるのか考えつつ、じゃあどういうものだったらうれしいのか、考えてみたというお話です。
Talent Management による組織の現在の分析
Talent Management で最初に思いつくのは、以下のような機能なんじゃないかと考えています。
- 組織図に沿って従業員の情報が見られる
- A さんはどこの部署で、誰が上司かがみれる、みたいな話ですね
- 目標設定・目標管理
- ツールによっては目標設定とか、それを上司が承認するとかの機能があったりするかと思います
まぁこれに加えて給与が見えるよとか、人事・労務系のツールと連携ができるよとか、まぁ世の中に SaaS はいっぱいありますし、API 連携するだけなら発想としてシンプルなのでどんどん便利にしていったらいいと思います。
一方で、私が Talent Management をあまり好んでいない理由もここら辺にあるというか、結局経営層などの上位層から見て従業員それぞれがゲームのコマのように扱われている気がする、というところかなと考えています。
三国志などの戦略系のゲームがありますが、あれに近いというか、それぞれのコマのパラメーターを見てどこに配置するかを考えている様子がまるでゲームのようだなと感じるわけです。
もちろん、人材の最適配置ということ考えるのであればそれは正しいのだと思います。
では、それが仮にうまくいって、「社内にこんな人材が!?!?」となったとしましょう。
次に、じゃあその従業員をいきなり異動させることはできるような組織になっていますか?というところもまた抜けているのではないかと思います。
Talent Management が必要なほどある程度大きくなってしまった組織において、それこそゲームのコマのように従業員を異動させていくのは難しいのではないでしょうか。
v-team とか兼任とか便利な言葉はありますが、その程度の貢献度で達成できるようなことはあまりないのではないのでしょうか。
加えて、その従業員の人生というか、どういうキャリアを積みたかったかとか、以前上司と相談して決めていた目標との整合性はどうするのか、とかさまざまな問題がついて回ると思います。
今まで従業員の管理を Excel でやっていました、みたいな企業に対して SaaS でぽんと Talent Management を取り入れるのはよいと思います。
ただし、それだけでは従業員側にメリットが薄いというか、従業員がそんな頻繁に使わないのにユーザ数課金で使うんですか?というところは考えておく必要があると思います。
Talent Management を未来の組織に適用する
現状が分析できたところで、次に未来のために使っていきたいよな、そのためにはどんなことが考えられるか書いてみます。
それぞれの組織は売上を上げるため、組織として継続的に生き残っていくために戦略を立てる必要があります。
たとえば、売り上げが今 1 億円のところを 3 年後に 5 億円にするとか、そのためには従業員が 20 人くらい必要そうだとか、そういった形で少しずつ具体的な数字が出てきます。
その結果として、現状の組織の人員と比較して、単純に人数が足りないとか、あるスキルを持った人材が足りていないとか、そういうことが分かってくるようになります。
その差分を補うためには新しく新卒を採用したり、中途を採用したり、もしくは今いる人材に対してスキルをつけさせるなどの方法が考えられます。
資格取得に補助金を出している企業も多くあるかとは思いますが、組織が向かっていきたい方向に対して足りていないスキルがあればそれの取得に伴う補助金を出す、というのはビジネス上の理由も比較的つけやすいのではないでしょうか。
また、目標設定を考えたときに、自分の上司やその上司、経営層などがどういった目標を立てているのかが見えるような仕組みがあってもいいかなとは思っています。
具体的な目標ではなくとも、経営層として伝えたいメッセージがあり、それが目標設定の画面の一部で表示されていれば、自分の成長したい方向・キャリアとの整合性についても考える機会が生まれます。
私の所属していた企業においても、目標設定のような Web アプリケーションの中で、まずは組織として重要視する mindset などが画面上部に表示されていました。
一種、Talent Management ツールではあるものの、組織の中で定期的に見ることになるコミュニケーション ツールと考えることもできます。
Talent Management と組織の過去
現在と未来があるのであれば過去もあるかなと思ったのですが、あまりうれしいポイントは思いつきませんでした。。
たとえば名前を伏せたうえで、こんな従業員がいて、こういう異動をしていった・キャリアアップしていったよ、とかが見れてもいいかなと思ったのですが、同じ人生を歩めるわけもないのであまり意味はありません。
A というロールから、B になって、最終的には C に、、!みたいな話もまぁそういう人もいたよね、というだけであって、運とかそういうものも多分にあるので、あまり参考にはならないと思います。
人事 DX
いきなり DX とか出してみましたが、どうでしょうか、人事における DX というのはどういうものがあるのでしょうか。
採用といえば新卒でも中途でもとにかくお金がかかるものではありますが、その中で戦略というか、自分たちとして現状どういう組織になっているか・どういう組織になっていきたいがためにあなたが必要か、こんなことが訴えられるといいのではないでしょうか。
外から優秀な人を採用してみたものの、カルチャー フィットせずなんか意外とダメな人じゃね?みたいな結果になるのも意外と聞く話だったりします。
人材とカルチャー、どちらも重要ですが、組織の向かう方向が今と大きく変わるようであれば、人材の採用の方向が変わっていくのと合わせて社内のカルチャーを変えていく必要があります。
別に digital transformation でも何でもないのですが、今のこのビジネス感覚・流行からいうとこれは人事 DX の一つになるんじゃあないかと思っています。
組織の人員に関する情報をまずはまとめること、そのうえで未来の組織の在り方をビジネスの KPI から導き出し、それとのギャップを確実に埋めていく。
こういったことがこれからの人事・採用に求められることというか、経営層と密に連携した攻める人事・採用といえるかと思います。
Talent の management
あらためて言葉の定義に振り返って、「talent」の「management」の話をしてみます。
前者の「talent」についてはそれぞれの企業でそれぞれの企業なりの定義というか、イメージがあっていいのではないかと思います。
テレビに出ている、いわゆるカタカナで表現される「タレント」、カリスマがある人、のようなイメージかと思いますがこれでも別に構わないです。
とくに社長などの上に立つ人間には求められるべき特徴の 1 つです。
Talent、たとえば組織の中で上に上がっていく人はその一つかと思いますが、それが単なる社内政治がうまいだけではあまり意味はないですよね。
給与が高い、というのも一種結果論であり、貢献度が高いから給与が高い、そんなシンプルな給与デザインができている企業もあまりないです。
いい給与で中途で入ってきたから、新卒でコツコツ頑張ってきた同い年の人材より給与が高い、というのはよく聞く話です。
どういった人材・ロールモデルが企業の中で求められているのか、それはどんどん変わっていくべきで、それを示していくことも重要だと思います。
後者の「management」についてはどうでしょうか。
管理や経営などと訳されることも多いかと思いますが、まぁそれだけいろいろな意味を含んだ単語なのだろうと思います。
Talent Management というシステムを導入するにあたり、どのように使っていきたいのか、これを使ってどう変えていきたいのか、カルチャーを変えていく・雰囲気を変えていくためのツールの一つとして活用するのもいいのではないでしょうか。
まとめ
Talent Management は所詮単なるツールでしかなく、組織図に沿って従業員の情報が見られる、目標設定・目標管理、といった機能がある だけ、と捉えることもできるかとは思います。
ただ、それだけではなく未来につながるツールとして活用することで、組織の戦略を実現する ためのツールとして活用することができます。
せっかく新しいツールを導入するということであれば、それをどのように使うかという説明書のような説明だけではなく、意図とかパッションのようなものを伝えることで 組織のカルチャー・意識変革に生かしていくことができるのではないか、という想像でした。
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