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社内AI推進に取り組んでみて見えた課題と現実

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はじめに

はじめまして。
2024年12月にSKIYAKIにジョインし、気づけば10ヶ月目を迎えることになるのですが
業務と並行して活動している社内AI推進活動についてまとめたいと思います。

AIの爆発的な進化により、エンジニア界隈でも昨今
「うちの会社もAI活用が進んでいる」
「このAIを導入して効率がX倍になりました」

のような話をよく耳にするようになりました。
私自身も最近はAIに夢中というか日々付いていくのに必死な部分があるのですが、
AIを活用するに伴い自身の作業効率の向上や工数の削減に繋がっていることを日々感じています。

そんな中、2025年6月ごろからAIを積極的に利用しているエンジニアを中心とした「AI推進委員会」なるチームが発足し、社内でのAI推進活動を進めていく運びになりました。
エンジニアなら作業の効率化には飛びつくはず、なんなら既にある程度使っているだろうと考えていたのですが
実際に推進活動を進めてみると、予想とは異なる課題と現実が見えてきました。

数字で見る社内AI活用の実態

社内エンジニアを対象に、簡単にではありますがAI活用状況を把握するため実施したアンケートの結果は以下の通り。

  • GitHub Copilot利用率:90%超(全社導入済み)
  • 他のAIツール利用者:各5名以下(Claude Code、Gemini、Cursorなど)
  • MCP連携活用率:実質0%近く(80%以上が未利用)

一見するとCopilotの利用率は高く見えますが、詳しく聞いてみると、多くの人が「使いこなせている」という感覚を持っていませんでした。
これは後述の通りCopilotを全社展開していることもあり、実際の利用パターンはコード補完、コード整形、命名提案、壁打ちの質問などが中心。
完全にAIに開発を任せているようなエンジニアは本当に一握りでした。
一時期から話題に上がっていたMCPも、使えば良いというものではないですが
おそらく利用しているのは推進を進めているエンジニアが中心で、その他のエンジニアの利用率はほぼ0%に近いものでした。

取り組みの軌跡とそれぞれの課題

Devin導入の挫折

最初に取り組んだのが当時話題を掻っ攫っていたDevinの導入でした。
しかし、社内アーキテクチャの制約により、Devinのワークスペースとローカル開発環境の技術構成を一致させることが困難で、導入を断念することになりました。

Devinを導入して全社員に周知すれば全体の効率が一気に向上するぞ!
と意気込んでいた私の思いは一度ここで砕け散ることになります。

GitHub Copilotの全社展開

次に、AI推進の一環でGitHub Copilotがエンジニア全員に付与されました。
利用率は確かに高いものの、前述のとおり活用レベルには大きなばらつきがありました。

利用率が高いからといって必ずしも活用度が高いことを意味しないことがわかりました。
ツールが手元にあることと、それを使いこなすことの間には、想像以上に大きな溝があることがわかりました。
逆にいうと何もしなくても手元にあるからこそ、それ以上を求めないのかもしれません。

外部ツール費用負担

開発効率向上のための外部ツール利用料を、一定額まで会社が負担してくれる制度も導入されました。
私自身はCursorやClaude Codeなどを試してみる際に利用していますが、この制度を活用している人は少ないように思えます。

特に、VSCode+Copilot環境で開発している人たちは、追加でツールを試す動機が薄いのかなと思います。
現状に大きな不満がないなら、わざわざ新しいツールを覚える必要性を感じないのかもしれません。

「使いこなせていない」の正体

アンケート結果を詳しく分析すると、興味深い傾向が見えてきました。

多くのエンジニアがデフォルト機能の範囲内での利用に留まっていること。
AIエージェントを利用していると回答したメンバーでも、実際のプロンプトやカスタマイズについて聞くと、特に何かしているわけではなく基本的な使い方をしている人が大半でした。

この背景には、大きく2つの要因があると考えています。

学習コストと時間確保の現実的な壁

最も大きな課題は、時間の確保にあるのかと思います。
新しいツールを試し、使い方を覚え、自分の開発フローに組み込むには相応の時間が必要です。
しかし、日々の開発業務に追われる中で、そのための時間を確保するのは現実的に困難なのかもしれません。

特にエンジニアの場合、「今のやり方でも一応回っている」状況では、学習コストを投資してまで新しいツールに挑戦する動機が生まれにくいのです。

「何が良いかわからない」という情報の壁

制度や環境は整っていても、「どのツールが自分に合っているのか」「どこから始めればいいのか」がわからない状態では、行動に移すのは困難です。

昨今は昨日までこのAIが主流だったのに、今日には次のAIが発表され席巻していることが多々あります。
私も常にこの状態なのですが、AIの使い方を1つ覚えたと思いきや次のAIが出てきてそちらの方がパフォーマンスが良さそう。の繰り返しで
選択肢の多さとトレンドの移り変わりが激しいことが、かえって行動の障壁になっているのではないか?と考えています。

見えてきた根本的な課題

これらの経験を通じて、AI推進における根本的な課題が見えてきました。

「機能提供」と「活用促進」の根本的違い

ツールを提供することと、それが活用されることは全く別の問題です。
私たちは「環境さえ整えれば使ってもらえる」と考えていましたが、実際には環境整備は出発点に過ぎませんでした。
それに何が良いのかわからないのに「これ使って」と言われても
「とりあえず使ってみるか」の範疇から出ないのは十二分に理解できます。

組織として見落としていた「学習の仕組み」

個人の努力に頼った学習では限界があります。
組織として、どのように学習機会を提供し、継続的な改善を支援するかという仕組みが不足していました。
かと言ってそれほど興味がないものに対してとりあえず学習の機会を与えたとしても
そこに対する意欲にも限界があるように思えます。
まずAIで何ができるのか、どの部分がどのように改善されるのか。
そこに興味を持ってもらうフェーズが抜け落ちていたようにも感じます。

今後の展望

これまでの反省点を踏まえ、AI推進委員会としては以下の活動を行っていく予定です。

  1. 月1回を目安にエンジニアを対象としたAI利用に関するアンケートを実施する
  2. アンケート結果から、開発効率や生産性などの可視化しづらい部分を定量化する
  3. AI活用度ごとに5段階のレベル付けをし、まず全エンジニアが平均値であるレベル3に達することを目標とする
  4. レベル達成の為に不足しているポイントに対して、AI推進委員会からハンズオンなどの理解度を深めてもらうためのアプローチをかける

まずは委員会メンバーが具体的な効率化事例を蓄積し、それを社内で共有していきます。
最終的には、AI活用が開発プロセスの一部として自然に根付いた状態を目指します。
簡単に達成できるものではないとは思いますが、一歩ずつ着実に進めていきたいと考えています。

さいごに

AI推進活動を通じて、技術導入の難しさを改めて実感しました。
しかし多くの組織も同様の問題に直面しているのではないかと感じました。
冒頭で述べたように、世間では活用の成功事例が目立ちますが
まだまだ浸透しきっていない組織や全社導入が難しいと感じている組織も多いのではないかと思います。
そのような組織や同じようにAI推進を進めている方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

私たちも完璧な解決策はまだ見つかっていませんが、これからも試行錯誤の過程や課題も含めて共有することで
社内はもちろん、業界全体でもより良いAI活用の形を見つけていけるようになることを願っています。

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