『良い戦略、悪い戦略』が良かったので、『戦略の要諦』も読んだ
組織戦略を考えるにあたり、『良い戦略、悪い戦略』が良かったので、2023年発行の『戦略の要諦』を読む。
『良い戦略、悪い戦略』では、具体的にどうやるのかの明示はすくなく戦略策定のフローまでの落とし込みができなかった。また、2012年発行ですこし昔のため、最近は著者がどう考えているのかを知りたくて『戦略の要諦』を読んだ。
戦略については、本書の「はじめに」で説明がされているため紹介する。
戦略とは困難な課題を解決するために設計された方針や行動の組み合わせであり、戦略の策定とは、克服可能な最重要ポイントを見きわめ、それを解決する方法を見つける、または考案することである。(p14)
本書では戦略を立てるための謂わいるベストプラクティスは提供されない。つまりは、良い戦略を立てる方法は体系化されていない。ただ「19章 戦略ファウンドリーの疑似体験」で、これまでの章の総まとめとして、具体的にどうやって課題を見つけて戦略を立てて行くのかが例示されているので、戦略を考えている人であれば具体的にどういったことから考えればいいのかは出発点としてわかりよい。
たとえば、戦略ファウンドリーで提供されている質問から始めてみるのも良いように思える。
- 過去5年間を振り返って、フォームコー自身と業界に取っての最大の変化は、技術、競争、顧客行動のどれだったか。その変化はフォームコーにどのような影響を与えたか。
- 今後3-5年間を展望して、フォームコー自身と業界にとっての最大の変化は、技術、競争、顧客行動のどれだと考えるか。この3つのうち現在のファームコーにとって最も問題なのはどれか、最もチャンスとなりそうなのはどれか。
- 過去5年間でフォームコーが実行したプログラムやプロジェクトのうち、成功した、やる価値があったとあなたが考えるものはどれか。それらの実行中に遭遇した困難や障害はどのようなものだったか。そうした困難を乗り越えれれた要因は何だと考えるか。
- 過去5年間でフォームコーが実行したプログラムやプロジェクトのうち、失敗だったとあなたが考えるものはどれか。その原因は何だと考えるか、なにか他に方法はあったと考えるか。
- 現在フォームコーが取り組んでいる問題のうち最も優先度が高いのはどれだと考えるか。現在フォームコーが実行中のプログラムやプロジェクトのうち、その優先度の高い問題の解決につながるものはどれだと考えるか。
- 良い戦略を構築するカギとなるのは、直面する問題を診断し、最も重要な課題を見極めることである。現在フォームコーが直面する最も重要な課題は何だと考えるか。2つ挙げてほしい。ただし、重要な課題とは財務実勢の悪化それ自体ではない。その根本にある問題はなにかを考えてほしい。2つの課題をみきわめたら、その解決を阻む主な要因について意見も述べてほしい。
- 現在のファームコーの組織構造や主な経営方針が原因で生じた注意すべき問題はなにかあるか。そうした問題のうち、あなたが質問6で特定した重要課題の解決を妨げかねないものはあるか。
また、本書で何度も言及されていることだが、戦略と目標は異なることは理解しておきたい。例えば、「売上高10%」アップというのは目標であり、どうやってその目標を達成するのか示されていない。「売上高10%アップ」という目標は元旦に立てる新年の誓いと変わらない。いま「なにが難しい」のかを考えて解決する方針として戦略を考えていくことが必要。戦略を立てることによって、追求すべき目標が決まる。
次に、「社会に価値を届ける」といったミッション・パーパスを考えるのは時間の無駄とされている。ミッション・パーパスを立て、戦略を立てないのはリーダがメンバーに対して権力を行使することを避けてメンバーに自己で気づいてほしいという願望でしかないように思える。もちろん、立派なミッション・パーパスがメンバーのモチベーションとなるなら重要であろう。ただし、そういった「モチベーション管理」は目標のスコープであって戦略ではない。みんながやっているという理由でミッション・パーパスを考えるのは時間の無駄。戦略とはみんながやっていることをやることではない。
また、個人的には、ミッション・ステートメントできれいな言葉を飾り感情に訴えかけるよりも、戦略を愚直に実行するほうが性にあっていると感じた。
戦略策定にあたり必要なチェックポイントとしては戦略自体が矛盾していないことが上げられる。本書ではSDGsは戦略として矛盾していて、かつこれを具体的にどう達成するのかが述べられてないという。SDGsの貧困の解決とエネルギー問題はいまのところ相互依存した問題で解決が難しいのだ。こういった具体性がないものは目標ありで戦略ではない。
この本を読んでリーダーはメンバーに直面する課題にどう取り組むのか、論理と論拠と証拠を示して戦略への信頼をしてもらうことが必要だとわかった。また、戦略の策定後に定まる目標、あるいは目標管理による成果はまた別のスキルが必要で明確に理解しておくべきだった。
ただ、最後にコダックのような一企業がエコシステムに対してが立ち向かうのは無理ゲーのような気がしました。
経営陣は、やがてデジタルの時代が来ると知っていたのだ。だが彼らが想像していたのは、デジタル写真が紙にプリントされてアルバムに貼られるか、壁に誇らしく掛けられる光景だった。そこでコダックは、デジタル写真の保存技術と高画質のプリント技術に多額の投資をした。みんなが小さなスマートフォンで自撮りをし、その低画質の写真をデータでやりとりするなどという情景を、2000年の時点で誰が想像できただろう。何百万ドル、いや何十億ドルをデジタル技術に投資するとして、いったいどんな装置、いやシステムに投資すればいいのか。カメラか、プリンタか、CDか。それともPC、いやスクリーンか、写真加工ソフトか。はたまた携帯電話か。コダックは確かに敗北したが、競争相手にやられたわけではない。写真を撮影し共有するエコシステム全体に負けたのである。(p282)
メモ1
本書で紹介されていた繊維素材は全く知らんかったのでメモ
- パイナップルの葉由来のピニャテックス
https://www.nadaya.co.jp/archives/2815 - 菌菌糸由来のバイオ素材 マイコテックス
https://www.nomuraholdings.com/jp/sustainability/sustainable/fabc/data/20220315.pdf
メモ2
また高級避暑地ハンプトンについても知らなったのでメモ
メモ3
本書の本文の中で紹介されたいた戦略本についてメモ
- 『P&G式「勝つために戦う」戦略』
- 『マッキンゼー ホッケースティック戦略: 成長戦略の策定と実行』
Discussion