BIMモデルのオブジェクトに複数の意味を重ね合わせる、という話

3 min読了の目安(約2900字TECH技術記事

建設ITワールドにBIMの興味深い取り組みの記事がありましたので紹介しつつ、後半では持論を展開。

ワンモデル、サテライトモデルで部分最適から全体最適へ
大林組とコマニーの連携で“思いやりのBIM戦略”が実現(オートデスク)

ワンモデルとは、大林組が整備する基本的なBIMモデルだ。意匠・構造・設備が一体化しており、常に最新で正しい情報を保ちながらクラウド上で維持されている。
「モデルのLODは300程度と比較的小さく、パーティションの部分は壁が1枚入っている程度です。専門工事会社に部材の設計と製作を指示できるレベルのLODにあえてとどめています」と大林組デジタル推進室iPDセンター制作第三部部長の田岡登氏は説明する。
大林組では、BIMの取り組みの3本柱として 1、意匠・構造・設備が一体化した「ワンモデル」 2、専門工事会社との連携を実現する「サテライトモデル」 3、モデル品質を監視する「BIMコーディネーター」を掲げる。さらにオートデスクのBIM360 Designを活用したクラウドベースのワークフローを確立し、効果的なBIM活用体制を構築した。

詳細は記事を見てもらうとして、要は大林組さんが全体のBIMモデル 「ワンモデル」 を作り、各建材の詳細モデル 「サテライトモデル」 を専門工事会社(ここではコマニーさん)が作成するという、クラウドを利用してBIMモデルを重ね合わせながら分業する手法の紹介記事になっています。

「BIMモデルで要件を受け渡す」

もちろん、異なる企業が同じクラウド環境で協働作業しているのも新しい取り組みで非常に面白いのですが、この記事で個人的に面白かったのは以下の部分です。

「モデルのLODは300程度と比較的小さく、パーティションの部分は壁が1枚入っている程度です。専門工事会社に部材の設計と製作を指示できるレベルのLODにあえてとどめています

ワンモデルの情報を元にサテライトモデルで専門工事会社がBIMモデルを作成するわけですが、この時に設計の与条件をBIMモデルを使って受け渡しているのが面白いところだと思います。大事なのはワンモデル/サテライトモデルという仕組みではなく、ワンモデル側とサテライトモデル側で同一部材であっても取り扱う情報の水準が異なっているという点です。

同じ部材であっても、必要な情報の解像度は立場によって異なるわけで、BIMモデルを活用するにはそれぞれの立場で必要な情報と共有すべき情報をデザインすることが重要になると言えます。

BIMモデルと同じ基準の要件情報のデータベースを用意する

ここからは上記の話の発展で、BIMモデルを活用するためにBIMモデルの外側の情報を整理しようという話になります。

あまり話題になっているのを見かけないのですが、BIMモデルには大きな問題があります。それはモデルを入力することで意図していない部分の値が一つに定まってしまう(意図した決定事項と意図していない事項の区別がつきにくい)ことです。

建物を設計する際にはこのことが非常に問題になります。建築設計は建物に必要な条件を繰り返し検討しながら案を一つに収束させていく行為だからです。途中の設計案は未確定の部分が多い中で仮に決定された状態の提案になっています。
図面とBIMモデルの大きな違いは、図面の場合は要件の解像度に合わせて図面の解像度を調整しているのに対して、BIMモデルの場合は図面よりも情報の解像度が細かすぎ、各部の情報が強制的にひとつの値に定まってしまうことです。さらにBIMモデルから情報を得ることは視覚情報に頼る人間では難しく、結果として要件を詰めていった際に設計案が要件から外れていることを認識するのが困難になります。そのためBIMモデルを作成してもそこから図面を作成して要件と設計案の調整を行うという、通常の図面と同じ作業が必要になってしまっています。

この問題を解決する方法は非常にシンプルで、BIMモデルでひとつに決定する値と比較可能な要件情報を作成することです。つまり、BIMモデルのデータベースと同じ基準のデータベースを要件から作成し、BIMモデルの情報と要件の情報を比較できるような仕組みを作ればよいのです。そしてこの作業こそ人間よりコンピュータが得意とする分野(DX)になります。

例えば、外壁と耐火構造認定のような関係を考えてみます。
BIMモデル側では利用したい外壁の材料を指定します。例えば仮にALCと決めて具体的な製品を指定しておきます。その外壁情報が製品情報としっかりと紐付いていれば、耐火構造の認定番号もモデル内に登録されているはずです。
一方で与条件の整理を行い外壁に1時間の耐火性能が必要だと分かったのであれば外壁の要件データベースに「1時間以上の耐火性能が必要」という情報を記録します。
このBIMモデルと要件の2つのデータベースの外壁情報を比較することにより、コンピュータが外壁の耐火性能を比較できるようになり、人間の作業がひとつ省力化されます。
仮に設計者がBIMモデルの外壁を変更したとしても、変更した外壁に耐火認定番号情報がある限りはコンピュータが自動で要件をチェックし続けてくれるので、外壁材を変更するたびに耐火性能を設計者が確認する労力が不要になります(データ活用による省力化=DX)。

BIMモデルを活用するにはプロジェクト情報を整理する必要がある

大林組さんとコマニーさんの事例からだいぶ離れてしまいましたが、同じ部材に対してゼネコンと専門工事会社という異なる立場の情報をクラウドを使って重ね合わせるというのは、BIMモデルの活用方法としては非常に先進的な試みだと思いました。
そしてここから更にBIMモデル活用を発展させるためには、BIMのデータベース性に着目しBIMモデル以外のプロジェクト情報をデータベースとして管理することが重要になるんだろうなぁ、と思います。