HD301D1-R1でRaspberry Piをホームシネマプロジェクターにする
はじめに
以前、HD301D1-R1というレーザープロジェクターモジュールを買いました。Raspberry Piと一体化させて使う製品で、光源がレーザーなので常にピントが合うという特長を持っています。小型で静かなのでとても気に入っています。
ただし、この製品を動かすにはいくつかハードルを乗り越える必要があります。マニュアルに載っていない事象もあり、初心者には少し難しいので、解説記事を書くことにしました。この記事の手順に従えば下記のようなことが可能になります。
本体が見えるようにやや明るい場所で撮影したので映像はいまいちですが、暗い場所なら大画面でも鑑賞に耐える映像が楽しめます。上記の例では著作権侵害にならないように自分で撮影した動画を表示させていますが、Amazon Prime Videoなどの動画も再生できるので、我が家ではホームシネマプロジェクターとして活躍しています。
想定する読者
- Raspberry Pi初心者
- 安価なレーザープロジェクターでホームシネマを楽しみたい人
準備するもの
以下のものが必要になります。事前に準備しましょう。
- HD301D1-R1本体
- Raspberry Pi本体(Raspberry Pi 4を推奨)
- microSDカード
- Raspberry Pi用の電源
- スピーカー(有線もしくはBluetooth)
- mini HDMIケーブル
- モニター
- USBマウスとキーボード
- Raspberry Pi用ケース(後述)
ケースについて
むき出しでは心配なので私はケースに入れています。ただしRaspberry Piの上にHD301D1-R1をスタックする関係上、どうしても高さが高くなってしまい、通常のRaspberry Pi用のケースには入りません。私は下記のケースにスペーサーを追加して高さを調整しています。
組み立てる
HD301D1-R1は組み立てキットなので自分で組み立てる必要があります。同梱された紙のマニュアルや、こちらのPDFを参考にすれば難しくないでしょう。
組み立て後、ケースを取り付けた状態がこちらです。
Raspberry Pi ImagerでmicroSDカードにRaspberry Pi OSを書き込む
まずはこちらからRaspberry Pi Imager
をダウンロードしてインストールしてください。
Raspberry Pi Imager
を起動したらCHOOSE OS
でRASPBERRY PI OS (32-BIT)
を選択してください。次にCHOOSE STORAGE
で書き込み先のmicroSDカードを選択してください。最後にWRITE
をクリックすればmicroSDカードにOSが書き込まれます。
config.txtの編集
microSDカードへのOSの書き込みが完了したら、一度アンマウントして再度microSDカードを接続してください。bootパーティションの中にconfig.txt
があるので、バックアップを取った上で下記のように編集してください。
--- config_org.txt 2021-10-30 11:12:34.000000000 +0900
+++ config.txt 2021-12-22 22:33:33.000000000 +0900
@@ -48,6 +48,18 @@
#dtoverlay=gpio-ir-tx,gpio_pin=18
# Additional overlays and parameters are documented /boot/overlays/README
+dtoverlay=dpi24
+overscan_left=0
+overscan_right=0
+overscan_top=0
+overscan_bottom=0
+framebuffer_width=1280
+framebuffer_height=720
+enable_dpi_lcd=1
+display_default_lcd=1
+dpi_group=2
+dpi_mode=85
+dpi_output_format=0x070027
# Enable audio (loads snd_bcm2835)
dtparam=audio=on
@@ -59,7 +71,7 @@
display_auto_detect=1
# Enable DRM VC4 V3D driver
-dtoverlay=vc4-kms-v3d
+#dtoverlay=vc4-kms-v3d
+dtoverlay=vc4-fkms-v3d
max_framebuffers=2
# Disable compensation for displays with overscan
ここはマニュアルに載っていないハマりどころのひとつです。Raspberry Pi OSは2021年11月8日にコードネームbullseye
にメジャーバージョンアップしました。それに伴いデフォルトのconfig.txt
の内容が変更されたため、マニュアル通りの修正ではプロジェクターが表示されなくなってしまいました。
上述の変更箇所のうち、この部分についてはマニュアルに記載されています。
dtoverlay=dpi24
overscan_left=0
overscan_right=0
overscan_top=0
overscan_bottom=0
framebuffer_width=1280
framebuffer_height=720
enable_dpi_lcd=1
display_default_lcd=1
dpi_group=2
dpi_mode=85
dpi_output_format=0x070027
以前のバージョンなら上記の内容をconfig.txtに追加するだけで動いていました。
問題はこちらの箇所です。
dtoverlay=vc4-kms-v3d
この記述があるとHD301D1-R1は動作しないようです。コメントアウトすると動作はするようになりますが、動画の表示がカクカクするようになってしまうので、以前のバージョンと同じように書き換えます。
dtoverlay=vc4-fkms-v3d
違いがわかりにくいですがkms
がfkms
に変わっています。これでプロジェクターが表示され、さらに動画も滑らかに動くようになります。
初期設定
config.txtを書き換えたらmicroSDカードをRaspberry Pi本体に差し込んで起動してください。プロジェクターで細かい文字を読むのは辛いので、HDMIモニターも接続しておきましょう。プロジェクターとモニターの2画面構成になるはずです。
デフォルトの構成ではプロジェクターがメイン画面になって操作しにくいので、デスクトップで右クリック→Desktop Preferences
を選択してデスクトップの設定画面を表示し、HDMI側にタスクバーを移動しましょう。
初回起動時はこのような画面が表示されます。
画面の指示にしたがって進んでいきましょう。下記の設定ができます。
- 国と言語の選択
- パスワード変更
- WiFi設定
- ソフトウェア・アップデートと言語設定
設定が終わったら再起動してください。
以前のバージョンまではRaspberry Pi OSで日本語入力するには少し面倒な設定が必要でしたが、bullseyeからは初期設定と再起動が終わった時点で日本語入力が可能になりました。入力モードの切替はCtrl+スペースでできます。
ちなみに初期設定画面を再度実行したい場合は次のように入力します。一過性のエラーが発生して先に進めない場合は、いったん閉じて時間をおいてから再実行してみましょう。
sudo -i piwiz
あとは必要に応じてBluetooth機器を接続してください。以前は面倒でしたが、現在ではMacやWindowsの設定と同じくらい簡単になっています。
Chromiumのデジタル著作権エラーを解消する
初期設定が終わったらブラウザ(Chromium)を起動してAmazon Prime VideoやNetflixなどにログインし、何か動画を再生させてみてください。次のようなエラーが表示されたはずです。
このエラーはlibwidevinecdm0
というパッケージをインストールすれば解消できます。インストール方法は下記の通りです。
sudo apt update
sudo apt upgrade
sudo apt install libwidevinecdm0
インストールできたらChromiumをいったん終了し、再度起動してください。今度は正常に動画が再生できるはずです。
電源をブチッと切っても壊れないようにする
Raspberry Piは小さいパソコンなので、正しい手順で終了させてから電源を切らないと普通は壊れます。(私は一度も壊したことがないので実感はありませんが・・・。)
オーバーレイファイルシステムを有効にすることで、シャットダウン手順を踏まなくても安全に電源を落とせるようになります。
まずRaspberry Piの設定画面を開き、パフォーマンスタブでオーバーレイファイルシステムの「設定」をクリックしてください。
オーバーレイを「有効」に変更し、OKをクリックします。起動パーティションを「読み込みのみ」にするとさらに安全になりますが、設定が保存されなくなるので不便です。私は下図のように設定しています。
OKをクリックするとオーバーレイの設定が行われます。
オーバーレイの設定完了後にOKをクリックすると再起動するかどうか聞かれるので、再起動しましょう。
これで電源をブチッと切っても壊れなくなったはずです。
まとめ
HD301D1-R1とRaspberry Piを組み合わせてホームシアターを作る手順をご紹介しました。下記のようなメリットがあるのでキャンプなどでも活躍しそうですね。
- 安い
- 軽い
- コンパクト
- ピント調節不要
- OS搭載
- モバイルバッテリーで駆動可能
この記事を書くにあたりbullseyeを初めて触ってみましたが、デフォルト設定が大幅に改善されましたね。何もしなくても日本語環境が構築できてしまうのには感動しました。config.txtの変更箇所を探るのには苦労しましたが、全体的にはずいぶん楽になったと思います。
このプロダクトに関する課題と願望は以下の通りです。良い情報をご存じの方はコメントでお知らせいただけると助かります。
- Chromiumがもう少しサクサク動くようになってほしい
- スマートフォン用アプリと比べると動画再生が始まるまでに時間がかかる(帯域が細くても動くモードがあるはずだが有効になっていないのでは)
- DRMに対応したLinux版のビデオプレーヤーアプリがほしい
- 金属筐体の専用ケースがほしい
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