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確率収束・分布収束と各定理の確認

2024/08/20に公開

確率収束と分布収束

確率収束 (Convergence in Probability)

確率変数の列 X1,X2,,XnX_1, X_2, \ldots, X_n が確率収束するとは、任意の ϵ>0\epsilon > 0 に対して次の条件を満たすことを言います:

limnP(XnXϵ)=0 \lim_{n \to \infty} P(|X_n - X| \geq \epsilon) = 0

ここで、XX は収束先の確率変数です。

また、以下のように表します。

limnXnpX \lim_{n \to \infty} X_n \to_p X

分布収束 (Convergence in Distribution)

確率変数の列 X1,X2,,XnX_1, X_2, \ldots, X_n が分布収束するとは、任意の連続点 xx に対して次の条件を満たすことを言います:

FXn(x)FX(x) as n F_{X_n}(x) \to F_X(x) \text{ as } n \to \infty

ここで、FXn(x)F_{X_n}(x)XnX_n の累積分布関数、FX(x)F_X(x)XX の累積分布関数です。

また、以下のように表します。

limnXndX \lim_{n \to \infty} X_n \to_d X

マルコフの不等式 (Markov's Inequality)

マルコフの不等式は、非負の確率変数 X,  E(X)<X,\; E(X) < \infty に対して次のように述べられます。任意の a>0a > 0 に対して:

P(Xa)E(X)a P(X \geq a) \leq \frac{E(X)}{a}

証明

非負の確率変数 XX と任意の a>0a > 0 に対して:

P(Xa)=P(X1{Xa}a) P(X \geq a) = P(X \mathbf{1}_{\{X \geq a\}} \geq a)

ここで、1{Xa}\mathbf{1}_{\{X \geq a\}}XaX \geq a のとき1、それ以外のとき0になる指示関数です。したがって:

P(Xa)E[X1{Xa}]a P(X \geq a) \leq \frac{E[X \mathbf{1}_{\{X \geq a\}}]}{a}

ここで、X1{Xa}XX \mathbf{1}_{\{X \geq a\}} \leq X であるため:

P(Xa)E(X)a P(X \geq a) \leq \frac{E(X)}{a}

この不等式は、確率変数が与えられた値より大きくなる確率が、その確率変数の期待値によって制限されることを示しています

仮定

マルコフの不等式の仮定では、確率変数XXについて以下の仮定をおいていることに注意します。

  • 非負の確率変数である
  • 期待値を持つ: E(X)<E(X) < \infty

チェビシェフの不等式 (Chebyshev's Inequality)

チェビシェフの不等式は、確率変数 XX が平均 μ\mu と分散 σ2\sigma^2 を持つとき、任意の k>0k > 0 に対して以下が成立

P(Xμkσ)1k2 P(|X - \mu| \geq k\sigma) \leq \frac{1}{k^2}

証明

確率変数 XX が平均 μ\mu と分散 σ2\sigma^2 を持つとき:

P(Xμkσ)=P((Xμ)2k2σ2) P(|X - \mu| \geq k\sigma) = P((X - \mu)^2 \geq k^2\sigma^2)

マルコフの不等式を非負の確率変数 (Xμ)2(X - \mu)^2 に適用すると:

P((Xμ)2k2σ2)E[(Xμ)2]k2σ2=σ2k2σ2=1k2 P((X - \mu)^2 \geq k^2\sigma^2) \leq \frac{E[(X - \mu)^2]}{k^2\sigma^2} = \frac{\sigma^2}{k^2\sigma^2} = \frac{1}{k^2}

この不等式は、確率変数がその平均から一定の距離以上離れる確率が、分散によってどのように制限されるかを示しています

仮定

チェビシェフの不等式の仮定では、確率変数XXについて以下の仮定をおいていることに注意します。

  • 期待値を持つ: E(X)<E(X) < \infty
  • 分散を持つ: V(X)<V(X) < \infty

大数の弱法則 (Weak Law of Large Numbers)

独立同一に分布(μ,σ)(\mu, \sigma)に従う確率変数 X1,X2,,XnX_1, X_2, \ldots, X_n に対して、標本平均 Xˉ=n1i=1nXi\bar{X} = n^{-1}\sum_{i=1}^{n} X_i が母平均 μ\mu に確率収束する。すなわち、以下が成立する。

Xˉpμ as n \bar{X} \to_p \mu \text{ as } n \to \infty

証明

チェビシェフの不等式を用いると、任意の ϵ>0\epsilon > 0 に対して:

P(Xˉμϵ)Var(Xˉ)ϵ2=σ2/nϵ2=σ2nϵ2 P(|\bar{X} - \mu| \geq \epsilon) \leq \frac{\text{Var}(\bar{X})}{\epsilon^2} = \frac{\sigma^2/n}{\epsilon^2} = \frac{\sigma^2}{n\epsilon^2}

ここで、nn \to \infty のとき右辺が0に収束するため:

limnP(Xˉμϵ)=0 \lim_{n \to \infty} P(|\bar{X} - \mu| \geq \epsilon) = 0

仮定

  • 標本平均が期待値を持つ: E(Xˉ)<E(\bar{X}) < \infty
  • 標本平均が分散を持つ: V(Xˉ)<V(\bar{X}) < \infty

中心極限定理 (Central Limit Theorem)

独立同一に分布(μ,σ)(\mu, \sigma)に従う確率変数 X1,X2,,XnX_1, X_2, \ldots, X_n の標本平均が標準正規分布に分布収束する

P(ni=1n(Xˉμ)σ)x(2π)12exp(y22)  dy as n P\big(\frac{\sqrt{n}\sum_{i=1}^{n} (\bar{X} - \mu)}{\sigma} \big) \to \int_{-\infty}^{x} (2\pi)^{-\frac{1}{2}}\exp(-\frac{y^2}{2}) \; dy \text{ as } n \to \infty

証明

標準化

確率変数 XiX_i を標準化します。

Zi=Xiμσ Z_i = \frac{X_i - \mu}{\sigma}

このとき、 ZiZ_i の平均は0、分散は1です。

標本平均の標準化

標本平均を考えます。

Xˉ=1ni=1nXi \bar{X} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i

これを標準化します。

n(Xˉμ)σ=n(1ni=1nXiμ)σ=1ni=1nXiμσ=1ni=1nZi \frac{\sqrt{n}(\bar{X} - \mu)}{\sigma} = \frac{\sqrt{n}\left( \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} X_i - \mu \right)}{\sigma} = \frac{1}{\sqrt{n}} \sum_{i=1}^{n} \frac{X_i - \mu}{\sigma} = \frac{1}{\sqrt{n}} \sum_{i=1}^{n} Z_i

モーメント母関数の利用

モーメント母関数 MZ(t)M_Z(t) は、確率変数 ZZ のモーメント母関数であり、次のように定義されます。

MZ(t)=E[etZ] M_Z(t) = \mathbb{E}[e^{tZ}]

i.i.d. の場合、標本平均のモーメント母関数は次のようになります。

M1ni=1nZi(t)=(MZ(tn))n M_{\frac{1}{\sqrt{n}} \sum_{i=1}^{n} Z_i}(t) = \left( M_Z\left( \frac{t}{\sqrt{n}} \right) \right)^n

ZZ のモーメント母関数

標準化された確率変数 ZiZ_i は標準正規分布 N(0, 1) に従います。このモーメント母関数は次のようになります。

M_Z(t) = \exp\left( \frac{t^2}{2} \right)

モーメント母関数の極限

これを使用して、標本平均のモーメント母関数を計算します。

M_{\frac{1}{\sqrt{n}} \sum_{i=1}^{n} Z_i}(t) = \left( \exp\left( \frac{(t/\sqrt{n})^2}{2} \right) \right)^n = \exp\left( \frac{t^2}{2n} \cdot n \right) = \exp\left( \frac{t^2}{2} \right)

この結果は標準正規分布 N(0, 1) のモーメント母関数に一致します。

Discussion

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